出版屋の仕事

知識も経験もコネもないのに出版社になった。おまけに、すべての業務をたった一人でこなす私。汗と涙と苦笑いの細腕苦労記。

日々勉強

2008年12月12日 | 出版の雑談
年明けに出す新刊のデータ入稿を昨日完了。水曜日の朝にはほとんど作業は終わっていて、いよいよ年末というか休みモードに入る。昨年末にバタバタと出したせいもあるが、今年はなんと新刊がたったの1点だった。当然、ちょっときつかった。

きついと言えば、某団体の忘年会に行ったんだが、全体の雰囲気は明るいものの、個別に話すとみなさん大変だと言う。でも、話を聞いていると、よくわからなくなる。

なぜ、うちと似たような一人出版社形態の版元で、採算分岐点が1500冊なのか。別に本体価格がめちゃくちゃ低いわけでもなし、事務所が豪華なわけでもなし。うちはもっと低いです。

逆に、なぜ、東京の真ん中に会社があって社員も10人近くいるような版元で、初版1千から3千部で(重版は難しいという話を信じるとして)やっていけるのか。売れ続ける既刊が多くあることも考えられるが。どうも、そのへんの感覚がうちはずれているような気がする。あっちとこっちの間とでも言おうか。

その他、忘年会で学んだことをリストアップしておくことにする。

●著者選びには、講演を聴きにいくのがいいという話

その版元さんは別に講演を重視してる感じではなかったが、なるほどと納得。著作を読んでも、実はライターの助けがあったり以前書いたものの使い回しだったりするが、講演は限られた時間内にどれだけ自分の情報を上手に伝えるか本人も真剣なので、底が浅いとすぐわかる。何か1冊書いてもらおうというとき、当たり外れがないそうな。著者の言う「以前出した本は何冊売れた」という話が真実だったとしても、じゃあ自社で出す本も同じように売れるかはわからない。けれど、以前本を出したときではなくて、今の聴講者の数とその反応を直に見られるわけで、そういう利点もある。

●文庫化は2%という話

これはあくまでも教えてくれた人の話だが、今後のために何も知らないよりはいいだろう。問題は、編集に対してどういう対価を求めるかということらしい。相手は何もしないでコンテンツを持っていくんだからという考え方らしい。本当は単行本だってコピー商売(ひとつの仕事で、売れれば売れるほど儲かるという意味)だが、私はどうもそういう感覚が薄い。今まで、制作物に対していくらという商売ばかりで、コピー商売は出版業が初めてだ。それも、初版の採算とか、重版するときもその分の採算という考え方をしてしまう。

●文庫化は「本を殺す」こともあると、著者を説得するという話

単行本は初版の部数が少なくて重版も千部単位でできるけど、文庫となるとそうはいかない。何万という数から始まるし、重版もそういう単位。売れればいいが、最近はすぐ死んでしまう文庫も多いらしい。文庫を出したことによって単行本が売れなくなり、その文庫もあまり売れないということになると、すぐ「死に本」になってしまう。単行本を出す版元には思い入れがあって、よほどのことがない限り少しずつでも売っていく意思があるが、文庫になることによって、この「少しずつでも」が駄目になると最悪という話。で、「あっちからも印税が…」とホクホクする著者に釘を刺しておけということらしい。

他にも忘年会でいろいろ学んだんだが、それとは別に最近学んだこともリストしておく。

●地方小は、なんか複雑だ

本にも書いたが、以前、小出版の相手をしてくれるところと思い込んで、トーニッパンがあるのに口座開設申し込みをしたことがある。もちろん断られた。最近、図書館からの注文を直送希望ということで連絡をもらい、こっちは仮伝票処理のつもりで直送した。よく太洋社に持っていくんだが、それと同じ処理である。仮伝票にハンコをもらうだけ。地方小も取次という認識だったので同じようにしたら、そうでもないらしい。まず地方小からは「掛け率はいくらか」という質問が来て悩んでしまったし、トーハンからは「地方小は書店扱いなのでそうする」と連絡が来た。うーん、書いていても別に問題があるようには思えないが、「取次じゃなくて書店」というのは知らなかった。いや、ホントにうちは何も問題ないんだけど、例の忘年会で「取次は地方小」という人が多くて、出版流通の複雑さを感じた。

●著者の言いたいことと違うのなんか、当たり前という話

作者と編集のバトルみたいなことを大仰に語っている本も読んだが、私は何をバトルするのかわからないのである。もちろん原稿には赤がいっぱい入るが、バトルしてるという感覚がない。これまで自分が言いたいことを著者が代弁してくれている本ばかり出してきた結果と思う。『日本でいちばん…」を書いたとき、編集者に「書かれていることはあなたの意見だから、僕がどうこう言う筋合いはない。ただ、読者の立場で疑問に思うことを赤入れした」と言われた。当時、言いたいことはわかったが、きっと自分にはできないだろうと思った。常に、「出したい本=私も主張したいこと」という出版をしていくだろうと思ったのだ。が、今度の新刊は違って、編集で悩むことが多かったと話したら、そんなこと当たり前と言われた。それが、「僕がどうこう言う筋合い…」って話なんだろうか。よくわからない。

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なんか雑談ばかりですが、素性がばれたせいで、最近やってる仕事について書きづらいんですよ。固有名詞出さなくてもばれるというか。そうなると、無責任なブログみたいだし。。。 でも、来年もなるべく仕事の話をしていきたいと思います。よいお年を。

3 コメント

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Unknown (nakoto)
2008-12-13 07:20:06
お返事有難う御座います

自身の体験談からの質問を前回させていただきました

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Unknown (makoto)
2008-12-13 07:31:23
ある 風俗求人サイトで 風俗求人雑誌もそこは発行してます

サイトに 大手コンビニ 書店 複数所在地を掲載しており  本当か? とおもい 実際電話しました

置いてない旨回答ばかりで 1件の大手コンビニで 女店員が 売ってる旨回答しました

そのコンビニで
売るには 大手取次との取引関係必須で フリーペーパーとしておくなら

各店舗オーナーと個別交渉で可と本部に確認済みです

売ってるなら 書店注文できるだろうと思い女性名で メールで聞くと 書店注文不可能と 雑誌社からの回答でした

なぜそんな現象がおこるのでしょうか

仮に地方取次経由で売っていても 書店注文できると思うんですが


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makotoさん (タミオ)
2009-01-06 19:23:04
うーん、いろいろ考えられるんですけど、所詮想像になっちゃいますね。前にも書いたのですが、コンビニルートやフリーペーパーのことは、てんでわからないのです、すみません。

可能性として、「サイト上の情報が正しくない」、「メールでの問い合わせには、一般論しか答えない(例外的に売っている店舗があっても、そうとは言わない)」ってのもあるかもしれませんが・・・。

makotoさんのお立場がよくわからないので、どこにきくのが一番なのかも答えづらいです。
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