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小さな幸せ

小さな幸せの見つけ方感じ方の達人をめざして!

52ヘルツのクジラたち

2022-03-25 22:01:57 | 読書

 

 

町田そのこ著

52ヘルツのクジラたち

 

52ヘルツのクジラ。

世界で一番孤独だと言われているクジラ。

その声は広大な海で確かに響いているのに、受け止める仲間はどこにもいない。

誰にも届かない歌声をあげ続けている響いているのに、受け止める仲間はどこにもいない。

 

 

再婚した母からの虐待

再婚するまでは愛してくれていた母

あの愛が欲しくて、どんな虐待にも耐える貴瑚

しかし、虐待はますますひどくなるばかり

挙句は病に倒れた義父の介護まで

そんな底なし沼から救ってくれたアン

 

その大切なアンを傷つけてしまった貴瑚は

大分の海辺の小さな田舎町で一人暮らしを始めます

そこで、自分と同じように虐待を受けている少年と出会います

その少年を、自分を助け出してくれたアンのように救い出す決心をします

 

とても重いテーマだけど、最後まで一気に読みました

本屋大賞に選ばれるのも納得です

 

柚月裕子著の「盤上の向日葵」でも

主人公が小学校時代に父親からのネグレクトと暴力にあっていたのを

元教諭の夫婦に将棋を教えてもらい、陰ながら見守ってもらいました

主人公の52ヘルツの声が届いたんですね

 

盤上の向日葵も52ヘルツのクジラたちも

どちらもお勧めです

 


本所おけら長屋17

2022-02-27 13:47:17 | 読書

 

 

畠山 健二著

「本所 おけら長屋 17」

 

きな臭さくなってきた外国

国内はコロナ

と、気が重くなる話ばかり

 

こんな時は、文句なしにお勧めするのは

おけら長屋

この本を読んでいる時だけは何もかも忘れることができます

 

もう来月には18も出るというのに

やっと17を読むことができました

 

今回は

 

かえだま

はんぶん

げんぺい

みなのこ

 

特に好きだったのは、みなのこ

 

おけら長屋のみんなの亀吉に対する愛情の深さに泣けて泣けて

おけら長屋vs寒天長屋

の騒動までに発展

今回はおかみさんたちまで、銭湯で大立ち回り

 

久蔵とお梅が結ばれる話は何巻だったかしら

あの巻も物凄く良かった・・・

 

亀吉の父親久蔵が全部持っていきました

こんな父親は今どきはいませんね

本当にいいお話でした

 

 

 


すみれ飴

2022-02-25 22:43:50 | 読書

坂井希久子著

「すみれ飴」花暦居酒屋ぜんや

 

ぜんやシリーズ

第2幕がはじまりました

ぜんや女将のお妙さんと武士から町人になった只次郎が主役交代です

 

お妙さんと只次郎が夫婦になり、

親に捨てられたお花を引き取り3人の生活が始まって5年

お花は14歳

俵屋の手代になった熊吉は18歳

このふたりが主人公で話がスタートしました

 

お花は育った環境が劣悪だったので、素直にお妙さんに甘えることができない

ふたりに好かれたい気持ちだけが空回り

熊吉も出世するが居心地の悪さに体調を崩した模様

 

そのふたりを見守るいつもの常連客達

 

しかし、第1章の時のミステリー要素はないのかな?

 

まあ、美味しいものが次々に出てくるのは変わりがないようです

お花ちゃんの特技が活かせて、誰にでも心を開ける愛されキャラに成長していけるか

 

ぜんやの常連客のひとりとして私もゆっくりと見守りたいと思います

 


おいち不思議がたり

2022-02-01 21:24:19 | 読書

あさのあつこ著

「おいち 不思議がたり」

シリーズ1

 

「桜舞う」

おいち不思議がたり シリーズ2

面白くて一気読みです

 

主人公おいちは16歳

シリーズ2では17歳に

 

深川の菖蒲長屋に医者の父と暮らします

その父は人情もあり赤ひげを彷彿とさせる凄腕

 

自分もいつかは父親のような医者になりたいと密かに思います

 

おいちはこの世に思いを残して亡くなった人の姿が見え、声が聞こえます

 

その声に応えるべく、孤軍奮闘します

その手助けをするのが岡っ引きの仙五郎

この仙五郎は、髪結い伊佐治のイメージです

 

医者になりたいと思っても

この時代、女性が16も17にもなって嫁にも行かず

仕事をするということがどんなに大変なことか

世間が許さない

 

しかし、はたから色々言われても何のその

おいちは走ります

 

シリーズ2ではその父のこと

自分の出生のこと

親友のこと

亡くなった母親の姉(伯母)のこと

と、話がすごいスピードで進みます

(朝ドラほどではありませんが)

 

この本、会話文がとっても多いので

その場所で話を聞いているような錯覚さえ覚えます

 

おいちは、薬代の代わりにもらった端切れできんちゃく袋を作ります

それを見た伯母おうたが

見事じゃないか、綺麗だねえ

と誉める

するとおいちは

お針は昔から好きだったの。人を縫うのも好きよ

と返し

こっぴどくおうたに叱られる

このシーンなんか横で聞いていたら噴き出してしまいますね

 

そうそう外科医は器用じゃなくては

 

おいちは思います

ぽかりと開いた傷口を釣り針とよく似た形状の針で縫い合わせていく。

傷口は塞がり、薄い肉の盛り上がりとなって痕が残る。

人の身体とはたいしたものだ。

 

シリーズ2の最後のシーンはハラハラドキドキ

そんなシーンでは

親友と知り合いの医者(本当は兄)が、物置小屋に閉じ込められます

そこには錠前がぶら下がっています

おいちは、二人を助けるために髪にさしていた簪を錠前の穴に差し込みます

 

数年も前のこと、やはり薬代が払えなかった老人(錠前破り)が

薬代の代わりに錠前の開け方をおいちに伝授してくれたのでした

その老人からもおいちは筋がいいと誉められます

薬代の代わりに錠前の開け方!!!

あさのさん、面白すぎです

 

シリーズ1の273ページ

 

患者に手を添える。

ただそれだけのことだ。

治療などといえるものではない。

しかし、これが案外効くことをおいちは経験から知っていた。

痛む場所に、苦しいところに、そっと添えられた掌の温かさは、人の心を励ますものだ。

ああ、この手は温かい。

そう感じただけで人は励まされるものなのだ。

 

 

まだまだシリーズは続いています

おいちの成長を追っかけていこうと思います

 


たそがれ大食堂

2022-01-21 20:10:45 | 読書

 

 

坂井希久子著

「たそがれ大食堂」

 

大手老舗デパートの最上階にある大食堂を再生するお話

 

中目黒にあるビストロで腕をふるっていた女性が送り込まれます

上から目線のこの女性はすぐに職場に波も風も立てまくります

 

しかし、彼女の腕はやっぱり一流

この大食堂を立てなおして、

多くのお客様に来てもらいたいという思いはみんな同じ

最初は反目しあっていたのですが、段々とお互いを認め合い

古くて新しいものを目指し始めます

 

最初にてこ入れしたのが

「オムライス」

今のオムライスの主流はカバータイプ

しかし大食堂では今までのラッピングタイプを残したい

そして、赤いケチャップ

 

ちょっとしたコツで

オムライスがリニューアルします

 

そして、プリンにクリームソーダ

エビフライ

ナポリタン

ちゃんぽん

お子様ランチ

 

みんなの努力が実を結びます

 

女性が頑張るお仕事小説、大好きです

 

しかし、坂井希久子さん、本当に食べ物を書くのがお上手

居酒屋ぜんやシリーズでも毎回毎回美味しそうなお料理が出てきました

 

レシピが欲しい!!!

 

お勧め度、5で~す

 


月下のサクラ

2022-01-17 11:17:01 | 読書

 

 

柚月裕子著

「月下のサクラ」

 

「朽ちないサクラ」の読編

図書館で予約したのが昨年の7月

やっと手元に届きました

 

人気なんです、柚月裕子!

 

まあ、読みやすくて一気読みしました

主人公森口泉は機動分析係を志望しますが

実技試験で失敗

 

しかし、彼女の並外れた記憶力を見抜いた係長黒瀬の強い推薦で無事に配属されます

男社会で女性が頭角を現すのは並大抵なことではない

この大変さは乃南アサさんの

「凍える牙」でも描かれています

 

特別扱いのことを「スぺカン」と言われ、同僚たちからは受け入れてもらえない

でも、そんなことでは、めげない泉

 

新しい職場に着いた早々に大事件が起こります

彼女の能力を最大限に生かし事件解決に挑みます

 

段々と、個性あふれる同僚たちからも認められ協力し合います

この月下のサクラは

他の柚月さんの作品

 

孤狼の血シリーズ

佐方貞人シリーズ

盤上の向日葵

 

等のように読んでいてヒリヒリするような重さはありません

だから一気に読めます

次はどうなる?

それから、それから?

みたいな感じで

 

しかし、柚月さんって、

家族は二の次三の次

仕事一筋で正義に立ち向かう昭和のオヤジを書くのが本当に上手い

 

 

しばらく何も考えなくて、本の中に没頭できます

お勧め度、4.5


火喰鳥

2022-01-14 20:40:27 | 読書

 

 

今村翔吾著

「火喰鳥」

羽州ぼろ鳶組シリーズ1

 

武家火消の松永源吾

別名「火喰鳥」

 

飛ぶ鳥を落とす勢いだった彼

ある火事を機に浪人暮らしとなります

 

そんな彼を出羽新庄藩から、藩の火消組織を立て直して欲しいという話が舞い込みます

妻の深雪の有無を言わせぬ押しによって、源吾はその仕事を引き受けます

 

まずは人材探しから

 

適材適所

源吾の下に、個性あふれる人材が集められていきます

映画の「アルマゲドン」の最初の所に似た感じ

 

人の命を守るため、己の命を懸ける男たちは何ともカッコいい

シリーズ1ではまだ「ぼろ鳶」の知名度は低い

これからシリーズが進むにつれ、江戸一の火消し集団になっていくことでしょう

 

源吾の暗い過去

その影を消すように

深雪が話に加わってくると俄然面白くなります

 

源吾の仲間に深雪

 

登場人物がみんな個性的で魅力的です

 

 

もう、文句なしで面白いです

 

このシリーズ12まで出ています

当分楽しめそうです

 

お勧め度は5(5段階)


手のひらの音符

2022-01-10 11:14:04 | 読書

藤岡陽子著

手のひらの音符

 

 

今年になっての1冊目

 

「テミスの休息」

に続いての藤岡陽子さんの2冊目です

 

途中で余りにもせつなく苦しくなったので

甘いものを食べて、近所を散歩して

エネルギーを充電してから続きを読みました

 

後半はもう涙、涙・・・

最後の数ページは、大切な宝箱を開くように

ゆっくりとティッシュを片手に読みました

 

親ガチャという言葉を昨年はよく耳にしました

どんな親のもとに生まれてくるかで子どもの人生が決まる

生まれてくる子は親を選べない

ということらしい

 

主人公の水樹と信也は同じ団地の同じ棟に住む同級生

水樹と信也のそれぞれの兄弟とも家族ぐるみの付き合い

 

どちらの家も貧しさは変わらない

 

信也の父親は病死

出来のいい兄は事故死

弟は発達障害

 

水樹の父親は地上げ屋に転職し母親以外の女性の下へ

信也の度重なる苦しみにいつも水樹は寄り添う

 

その水樹も早く就職して母親を助けたいと思う

しかし、水樹の才能を伸ばす為に専門学校への進学を強く勧める先生

 

そして、その後、信也と水樹は・・・・

 

水樹の今と、水樹の幼少期の辛かったこと楽しかったことが

交互に語られて話が進んで行きます

 

どの子も真っ直ぐな気持ちを持ち続ける姿に

心が揺さぶられます

 

新年最初にいい本に出会えたと思います

お勧めです


テミスの像

2021-11-29 19:52:24 | 読書

 

 

藤岡陽子著

「テミスの休息」

 

読書ブログでこの本を勧めていました

藤岡陽子さんは初めての作家さん

 

最初、「テニスの休息」

と、思い

テニスの練習をたまには休んで・・・

みたいな話と思い、読み始めました

 

本当に知らないって怖いですね~

 

読み進むうちに、

え、法律事務所?

弁護士?

 

何か変

 

 

表紙を見返すと

「テミスの休息」

テニスじゃな~い

 

じゃあ、テミスって何???

 

文中より

 

涼子は、芳川のデスクの上に置いてあるテミス像に目を向けた。

この事務所を立ち上げた時に北門が贈ってくれたものだが、

テミスとは、もともとギリシャ神話に出てくる正義の女神のことらしい。

片手に天秤、もう一方の手に剣を持ち、法律が公正で厳格なものであることを

示している。

偏見を持たずに裁く、という意味で目隠しされた像もあるようだが、

「何も見えないんじゃあ、退屈だろう」

という理由で、北門は両目を見開いたものを選んできた。

テミスは今日も、ニコリともせず背筋を伸ばしてこちらを見ている。

 

 

27ページ目でやっとテミスのことがわかりました

 

この事務所の芳川弁護士とそこで働くシングルマザー涼子

ここへ色んなもめ事がまいこみます

 

そのなかで

「もう一度、パスを」

は物凄く泣けました

 

この芳川弁護士が

秋の小春日和を背中に感じさせてくれるような人柄

そこがこの本の面白さです

 

最後にここで働く涼子が

 

芳川法律事務所は、依頼人にとって休息の場なのかもしれません。

どんなに強い人でも、闘い続けることはできませんから。

うちのテミス像も時々は、剣や天秤を先生に預けてほっこりしてるんですよ

 

何とも読後感のいい本でした


蝶のゆくへ

2021-11-05 19:44:17 | 読書

 

 

葉室麟著

「蝶のゆくへ」

 

葉室さんは2017年12月に亡くなりました

この本は翌年の2018年8月に出ています

 

私が今まで読んだ葉室さんの本とは雰囲気が違っていました

 

中島みゆきの「糸」っていう歌があります

 

♪縦の糸はあなた

横の糸は私

 

 

 

この本は縦の糸が主人公星りょう

後の相場黒光

新宿中村屋の創業者

 

ここまで書くと、商売の話しかと言うとそうではない

 

アンビシャスガールと言われるほどに

大志を持ち、何者にも何物にも惑うことなく真っ直ぐに人生を歩もうとするりょう

 

そして横の糸は

そのりょうが出会う文人達です

 

りょうは最初はフェリス和英女学校に入学するも

明治女学校こそ自分が学ぶところと学校を移ります

 

そこで最初に遭遇するのが斎藤冬子と北村透谷の恋仲

冬子の療養中透谷は自殺します

その透谷の残した詩に

「蝶のゆくへ」というのがありこれが表題に

 

舞ふてゆくへを問うたもふ、

心のほどぞうれしけれ、

秋の野面をそこはかと、

尋ねて迷ふ蝶が身を。

 

透谷の次に出会うのが島崎藤村

りょうの学校の英語の教師

藤村は教え子輔子に恋をします

 

まだあげ初めし前髪の・・・

ですよ

 

そして次は国木田独歩、有島武郎

 

勝海舟の三男梅太郎の嫁クララ

 

樋口一葉

 

と、まあ出てくる出てくる

そしてどの話も興味深く読ませてくれます

 

明治という時代

 

恋愛に身を焦がす文人たち

凄いエネルギーです

このエネルギーがあるがゆえに名作品が生まれたんでしょうね

 

女性たちの自己主張もどんどんと勢いづいてきたこの時代

 

先日読んだ「白光」にも似た力を感じました

 

 

純文学がお好きな方、一読あれ