宇江佐 真理著
「日本橋本石町 やさぐれ長屋」
やはり絶対の安定感のある文章です
間違いがありません
はずれがありません
市井の暮らしぶり
人情
人間の心理
これらの描きかたが秀逸です
この中で
「みそはぎ」
という章があります
やさぐれ長屋の住人の一人おすぎ
おすぎは母親と二人暮らし
その母親が認知症の症状が出始ます
そして奇声を発したり
最後には動けなくなり下の世話もおすぎの肩にかかります
途方にくれるおすぎ
頼りは嫁いだ姉だけ
その姉が、下の処理をしてくれるヘルパーさんを雇ってくれます
その年配のヘルパーさんの手際のよさに感心するおすぎ
このヘルパーさんにおすぎはこう尋ねます
「おっ母さんは自分を不幸だと思っているのかしら」
もはや、おまさは当たり前の感情すら持ち合わせていないと思っていたので、おしけの言葉は意外だった。
「もちろんだよ。
おなごの大事な隠しどころを晒しておむつを換えてもらうんだからね。
それだけは手前エでやりたいと思っていても、身体が言うことを利かない。
あんたのおっ母さんは、さぞ悔しい思いをしているだろう」
「そうね、その通りね」
言いながら、おすぎは不覚にも涙がこぼれた。
・・・
おしけの言葉は大いにおすぎの励みになった。
「くよくよしちゃ駄目だよ。
また、先のことを考えても駄目だ。
いつまで続くのかと考えたら気持ちがおかしくなるからね。
今日一日、無事に済んだらいいことにするんだ。
それと、病人をがんがん叱らず、できるだけ優しい言葉を掛けておくれ。
おっ母さんの喚きも、その内治まるだろう」
私もおしけさんに教えられました
介護はいつまでという期限がわからないから辛いんですね
後3年とか具体的にわかれば3年なら頑張れるって思うけどねえ
今のコロナ禍もそうでうね
一体いつ終息するのかしら何て思うと気持ちは凹みます
とりあえず今日一日無事に過ごせたことに感謝してやり過ごしていくことが肝心かもしれません
それにしても、宇江佐さんにはもっともっと書いて欲しかった!!!