金井美恵子の『新・目白雑録 もっと、小さいこと』(平凡社 2016.4.15)の中でいわゆる「DJポリス」に関する考察がある。
「ところで『DJ』というのは、ディスク・ジョッキーのことだから、ペラペラと余分な(たいていの場合、おセンチでお節介だったり煽情的だったり)お喋りをしたり、リスナーからのリクエストや、そう程度が高いとは言えない意見を開陳したリスナーの『おたより』を読みあげたりする一方、レコードをかけるのだが、もちろん『DJ』と呼ばれた『ポリス』は機動隊の灰色の指揮車の上でレコードをかけはしなかった。新大久保にヘイトスピーチに出かける右翼の街宣車は、それでもミュージックが好きらしく軍歌や国歌を大音量で流している。口あたりの良く喋るお巡りさんのようではないから、誰もDJと間違ったりはしない。」(p.13)
「DJとは、たしかにリスナーへの一種の交通整理に似ていなくもあるまい。」(p.14)とも指摘しているように、確かにDJとはもともとラジオで活躍するディスク・ジョッキーを指す言葉ではあるが、「DJポリス」のDJは映画『WE ARE YOUR FRIENDS(ウィー・アー・ ユア・フレンズ)』(マックス・ジョセフ監督 2015年)でも見られるようにロックフェスなどの野外ライヴで観客の様子を見ながら自ら選曲した楽曲やリミックスによって独自に作製したEDM(エレクトロ・ダンス・ミュージック)をPCで再生させて聴衆を上手く煽る者を指しているはずで、中にはカルヴィン・ハリス(Calvin Harris)やデヴィッド・ゲッタ(David Guetta)やロケットマン(ROCKETMAN)など世界的にヒットしているDJもおり、もちろん70歳近い作家にそのような事情など知る由もないだろうから、編集者などが指摘してあげればいいとは思う。「しかし、ほとんどの場合自分のやり方(というか書き方)を通すことになる」(p.198)のであるならば致し方ない。
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