MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『黒蜥蜴』

2023-01-15 00:58:00 | goo映画レビュー

原題:『黒蜥蜴』
監督:深作欣二
脚本:深作欣二/成沢昌茂
撮影:堂脇博
出演:丸山明宏(美輪明宏)/木村功/松岡きっこ/川津祐介/宇佐美淳也/西村晃/三島由紀夫/丹波哲郎
1968年/日本

「真面目さ」を揶揄する「偽物」について

 作品冒頭は緑川夫人(=黒蜥蜴)が経営する秘密クラブ「幻」で明智小五郎が飲んでいる場面である。大胆にも黒蜥蜴は明智の目の前で飲んだくれて酔いつぶれている26歳の音楽家である雨宮潤一を店の奥に誘い出して二人で消えていく。翌日新聞を見て明智は驚く。青年が亡くなったという記事を見つけて、記事に掲載されていた顔写真が明智が昨日見た雨宮だったからである。別の新聞には死体安置所から遺体が消えたという記事が掲載されており、明智がそこに向かうと詳細は分からなかったがおもちゃの蜥蜴が残されていた。
 そんな時、明智のもとに仕事の依頼が来た。在阪の宝石商の岩瀬庄兵衛に脅迫状が届き、娘の早苗の誘拐と時価一億二千万円の「エジプトの星」の強奪が予告されていた。黒蜥蜴は雨宮を山川健作として手下に使い、早苗をトランクに詰めて列車で連れ去るのだが、明智の手配によって誘拐は失敗する。しかしその半月後、再び黒蜥蜴は早苗の誘拐を試み、長椅子の中に早苗を入れて邸宅から連れ出したのである。そして明智も刺されて殺された。
 黒蜥蜴の目的は「美」の収集である。「エジプトの星」は言うまでもないが、黒蜥蜴は美しい人間の剥製もコレクションしている。自分のために決闘して亡くなった青年(三島由紀夫)も剥製として飾っており、早苗も剥製にされそうになるのだが、山川は自分は雨宮だとして早苗を助けようとするのだが、早苗も実は桜山葉子という早苗の替え玉だったのである。裏切った雨宮と早苗を捕まえようとするが、手下の長である松吉は実は明智が成りすましていたのである。
 驚くべき展開だと思う。メインキャストは黒蜥蜴を除けば全員「偽物」なのである。特に雨宮と葉子はお互いに偽物だと知りながら一緒に脱出しようと試みるのである。ここで全く関係ない話をするが、雨宮を演じた川津祐介が主演を演じた『青春残酷物語』(大島渚監督 1960年)という作品がある。川津は大人の社会に敵対する藤井清という青年を演じているのだが、最後に殴り殺されるのである。最後に黒蜥蜴が死ぬことになるのは「偽物」になり切れなかったためで、その「真面目さ」を揶揄するような「偽物」こそが本作のテーマのような気がする。


gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/fujinkoron/life/fujinkoron-7319


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