原題:『Buena Vista Social Club: Adios』
監督:ルーシー・ウォーカー
出演:オマーラ・ポルトゥオンド/バルバリート・トーレス/エリアデス・オチョア/イブライム・フェレール
2017年/アメリカ・イギリス・キューバ
「良い話」では終わらない現実の厳しさについて
「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」とはアメリカのギタリストのライ・クーダーのプロデュースで集められたベテランのキューバミュージシャンたちによって結成されたバンドで、1997年にリリースされたアルバムが世界的に大ヒットした後、ライ・クーダ―の友人だった映画監督のヴィム・ヴェンダースによって撮られた彼らのドキュメンタリー映画『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』が1999年に公開されると映画も大ヒットした。
本作はそこから18年後に至るまでの彼らの「その後」が描かれている。当時活躍していたミュージシャンの多くは亡くなっていることはやむを得ないとしても、問題なのはそこではない。彼らの活躍が最終的にアメリカ合衆国とキューバの対立関係を緩和し、2015年7月に国交が回復し、2016年3月のオバマ大統領のキューバ訪問につながったと、監督としては「良い話」で終わらせたかったのであろうが、オバマの後を継いだトランプ大統領は2017年6月になってキューバとの関係を反故にしてしまったのである。本作の上映は2017年5月26日で、多少延期してでもトランプ政権に関するメンバーたちの心情を描いて欲しかった気がしないでもないのだが、主要メンバーを失った上に、「音楽外交」の無力さを表現するのは非情ではあるだろう。