原題:『Censor』
監督:プラノ・ベイリー=ボンド
脚本:プラノ・ベイリー=ボンド/アンソニー・フレッチャー
撮影:アニカ・サマーソン
出演:ニアフ・アルガー/マイケル・スマイリー/ニコラス・バーンズ/ビンセント・フランクリン/ソフィア・ラ・ポルタ/リチャード・クローバー
2021年/イギリス
壊れた「センサー」について
時代はマーガレット・サッチャーが首相だった1980年代。主人公は全英映像等級審査機構で審査官として働いているイーニッド・ベインズで同僚たちから厳格な仕事っぷりを論われている。
一方で、イーニッドの妹のニーナは幼い頃に行方不明になっており、両親は法的に死亡したことにしようという話をしており、仕事面では彼女が担当した映画が実際の殺人事件に影響をもたらしたということで非難されることになる。そんな時にイーニッドはベテランのホラー映画監督のフレデリック・ノースの新作の中にニーナに似た少女を見つけるのである。
つまり原題の「センサー」である邦題の「検閲」と、同時に精神分析で「無意識の衝動が意識化することを超自我が抑圧してその実現を許さないようにする」という意味も持つ「潜在意識抑圧力」の両方が崩壊してしまうのであり、それが本作の後半で描かれることになる、現実なのか撮影によるフィクションなのか分からなくなるイーニッドの狂気の振る舞いに通じるのであるが、それは審査官が壊れたことで混乱した「酷い」映像を私たち観客が観させられることにもなるのである。
アイデアは悪くないと思うのだが、90分弱で描くにはストーリーが分かりにくいと個人的には思う。