MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『狩人の夜』

2015-05-22 00:06:18 | goo映画レビュー

原題:『The Night of the Hunter』
監督:チャールズ・ロートン
脚本:ジェームズ・エイジー
撮影:スタンリー・コルテス
出演:ロバート・ミッチャム/ビリー・チャピン/サリー・ジェーン・ブルース/リリアン・ギッシュ
1955年/アメリカ

『狩人の夜』が描いてしまった信者の「闇」について

 リリアン・ギッシュが演じるレイチェル・クーパーはバイブルを子供たちに読み聞かせるクリスチャンではあるが、彼女は決して「原理主義者」ではなく、例えば、思春期のルビーの気持ちを察することが出来るし、作品冒頭でジョン・ハーパーが店に飾られていた時計を欲しそうに見つめていたことを知っていたかのようにジョンに懐中時計をプレゼントする。クーパーは聖書の言葉よりも、彼女が聖書を読もうとした時に外に出てしまい、最初に実の父親のベンが警察に捕えられた光景と同じ光景を見るように連続女性殺人鬼のハリー・パウエルが警察に捕まった際に、それまで頑なに守っていた父親との誓いを破ってでも隠し持っていたお金を差し出して止めるように求めるジョンの純粋な魂の方を信じているのである。
 ところでどうもタイトルが気になるのであるが、冒頭で流れるウォルター・シューマン作の賛美歌は以下のようなものである。

Dream little one, dream
(夢を見ろ、幼き者よ、夢を見ろ)
Dream my little one, dream
(夢を見ろ、我が子よ、夢を見ろ)
Though the hunter in the night
(闇の中で狩人は)
Fills your childish heart with fright
(君の幼い心を恐怖で満たすけれど)
Fear is only a dream
(畏敬の念は夢だけなのだから)
So dream little one, dream
(夢を見ろ、幼き者よ、夢を見ろ)

 本来ならばタイトルは「夜の狩人(the hunter in the night)」とされるべきなのであるが、「狩人の夜」となっているのは、問題としたいのは「狩人」ではなく「闇」の方だからであろう。もう一つ気になることは「畏敬の念は夢だけ(Fear is only a dream)」というフレーズで、まるで信心とは現実には存在しないような言い分である。連続女性殺人鬼が牧師(preacher)を名乗っているところも、あるいはこの25人の女性を殺害した女性嫌悪者(misogyny)が逮捕された後にスプーン夫妻たちが群衆をなしてパウエルを集団リンチに処そうとするところなど、キリスト教信者にとっては見たくない自分たちの「闇」の光景が映されている本作が興行的に失敗するのは仕方がないのかもしれない。


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