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MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『傷物語〈III 冷血篇〉』

2017-02-14 00:09:54 | goo映画レビュー

原題:『傷物語〈III 冷血篇〉』
監督:尾石達也
脚本:東冨耶子/新房昭之/木澤行人/中本宗応
出演:神谷浩史/櫻井孝宏/江原正士/入野自由/大塚芳忠/坂本真綾/堀江由衣
2017年/日本

「反東京オリンピック」の物語について

 最初に驚かされるのは画のタッチで、かつての「タツノコプロ」的な緩い筆致でありながら、そこにマティスやリキテンスタインやウォーホルのタッチが加えられていくところが凝っている。
 ところで何故今「タツノコプロ」的なものを敢えて持ち出してきたのか勘案するならば、立ち並ぶマンションやクライマックスの舞台となる国立競技場にかざされる無数の日本国旗が大いに関係するであろう。旧国立競技場は1964年に開催された東京オリンピックの競技会場として建設されたもので、その時のオリンピック時の日本選手団が入場した際の実際のテレビ放送の実況のナレーションが流れ、その中で主人公の阿良々木暦と吸血鬼のキスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードが死闘を演じることになる。
 当然のことながら観ている私たちはどちらが勝つのか見守ることになるのだが、物語は思わぬ展開に見舞われる。どちらかが生き残るためにはどちらかが死ななければならないという窮極の選択を迫られる中、暦は忍野メメのアドバイスを受けて、キスショットは限りなく人間に近い吸血鬼として、暦自身は限りなく吸血鬼に近い人間として2人とも「敗者」として生きることにし、その秘密は誰にも語り継がれることにはならないことになる。思い返してみるならば、ドラマツルギー(=作劇法)もエピソード(=逸話)も「死んでいる」今、ストーリーを語る意義はなくなっているのである。本作は2020年に行われる予定になっている東京オリンピックに対する「反東京オリンピック」の物語である。


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