現在、東京都美術館において「バルテュス展」が開催されている。バルテュスの作風を
どのように捉えればいいのか定かではないようだが、例えば、上の作品「キャシーの化粧
(La Toilette de Cathy)」(1933年)を見ても分かるように構図がめちゃくちゃ
であり、下の作品、「人形を抱く子ども(Child with Doll)」を描いた同じ「独学者」
であるアンリ・ルソー(Henri Rousseau)同様に「素朴派」と呼んで差支えないと思う
(因みにアンリ・ルソーの「人形を抱く子ども」は現在、森アーツセンターギャラリーで
催されている「こども展」で観ることができる)。
ところで、バルテュスを「ロリータコンプレックス」であると指摘することがまるで禁句の
ようにして語られることが多いように見受けられるのであるが、例えば、バルテュスが
最初の妻のアントワネット・ド・ワットヴィル (Antoinette de Watteville) と
結婚した年は1937年で、バルテュスが29歳で、アントワネットが25歳の時であるが、
バルテュスがアントワネットと出会った年は1924年で、彼女が12歳のころである。
バルテュスが再婚相手の出田節子と出会った年は節子が20歳の1962年であり、
バルテュスは54歳である。間違いなくバルテュスはバリバリのロリコンだったはず
であるが、そのように語られない原因はあたかもロリコンが犯罪者予備軍のように
見なされているからであり、それはロリコンに対する偏見なのである。つまり
20世紀の「クラシカル」な絵画は、ロリコンのバルテュスとホモセクシャルの
フランシス・ベーコン(独学者)の2大「性倒錯者」たちによって支えられていたのであり、
バルテュスの衣鉢を継ぐ者が村上隆であることは言うまでもない。