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「王妃の離婚」佐藤賢一

2015年10月02日 21時20分51秒 | 読書(小説/日本)


「王妃の離婚」佐藤賢一

以前から読もうと思って、機会を逸していた作品。
やっと読めた、喜ばしいことだ。

15世紀末、ルイ12世は、王妃ジャンヌに対して、離婚訴訟を起こす。
はたして、これは成立するのか?
というのは、キリスト教では離婚は(本来)してはならない、あり得ないことだから。
しかし、そこは人間のすること、世の中には抜け道はある。

P66
 厳密にいえば、カソリックの教義に離婚というものはない。新約聖書、マタイの福音書19の6に「もはやふたりではなく、ひとりなのです。こういうわけで、人は、神が結び合わせたものを引き離してはなりません」とあるからである。コリント人への手紙、第1の7の10、並びに11にも「妻は夫と別れてはいけません。もし別れたのだったら、結婚せずにいるか、それとも夫と和解するか、どちらかにしなさい。また夫は妻を離別してはいけません」とある。こうした教えを守るべく、カノン法も「婚姻の本質的特性は、単一性及び不解消性である」と明記して、あまねく信徒に離婚を禁じている。
 では、意に添わない相手とも、永遠に別れられないかといえば、そういうわけでもなかった。キリスト教徒は事実上の離婚として、「結婚の無効取消」という手続きに訴えることができた。つまり、はじめからなかったことにする、という理屈である。
(ヘンリ八世は、現王妃と離婚し、アン・ブーリンと結婚したいばかりに、イギリス国教会を作り、ローマ教会から独立した。それほど愛したアン・ブーリンも処刑されて殺されてしまう・・・悪名高い方、である。その後、ご存じのように、エドワード6世→メアリ1世→エリザベス1世と続く。このあたり、英国史でも特に興味深いところ)

【ネット上の紹介】
1498年フランス。時の王ルイ12世が王妃ジャンヌに対して起こした離婚訴訟は、王の思惑通りに進むかと思われた。が、零落した中年弁護士フランソワは裁判のあまりの不正に憤り、ついに窮地の王妃の弁護に立ち上がる。かつてパリ大学法学部にその人ありと謳われた青春を取り戻すために。正義と誇りと、そして愛のために。手に汗握る中世版法廷サスペンス。第121回直木賞受賞の傑作西洋歴史小説。