【ぼちぼちクライミング&読書】

-クライミング&読書覚書rapunzel別館-

「さいごの色街飛田」井上理津子

2012年07月23日 21時55分38秒 | 読書(風俗/社会/貧困)

「さいごの色街飛田」井上理津子

2012年7月10日、朝日新聞・文化欄で井上理津子さんと本作品が大きく取りあげられていた。
12年にわたる取材で大手メディアが報じない社会の隙間を切り取った、と。

「飛田は、すごく雰囲気のある場所やで」、と聞いたことがある。
以前読んだ「血と骨」でも重要ポイント。
気になるテーマなので、読んでみた。

P94
飛田遊郭の営業形態は「居稼(てらし)」だった。
「居稼」は、妓楼に自分の部屋を与えられ、そこで客を取る形態のこと。芸者のように、置屋でスタンバイし、お呼びがかかって座敷に出向く形態「送り」に対して、こう呼ばれた。座敷には、往来に面して太い格子が巡らされ、本来、娼妓はその格子の中で、外向きに並ぶ。東京の「張り見世」と同じ、この形態のことも、大阪では「居稼」と呼んだ。客は外から覗き込んで、娼妓の品定めをする。娼妓がお客に顔を「照らす」を、当て字にしたもので、「稼ぐ」者が「居る」と書くとは、なんともストレートだ。

P106
滋賀県八日市市新地遊郭では、娼妓になる儀式として、女性を、死者の湯灌に見立てた「人間最後の別れ風呂」に入れ、その後、土間に蹴落とし、全裸で、麦飯に味噌汁をかけた「ネコメシ」を手を使わずに食べさせた。人間界から「畜生界」に入ると自覚させたのだという。「男根神」と書いて「おことさん」と呼ぶ木の棒を強制的に性器に入れる「入根の儀式」というのも行われたという。

P299
「この商売をして、よかったと思うことは一つもない」と、料亭経営者のマツノさんは言った。「現状満足度はゼロ%や」と、女の子を経ておばちゃんになったタエコさんも言った。それでも、みんな、生きていくために飛田にいる。

本書を読んで、飛田に行ってみたいと思う読者がいたとしたら、「おやめください」と申し上げたい。客として、お金を落としに行くならいい。そうでなく、物見にならば、行ってほしくない。そこで生きざるを得ない人たちが、ある意味、一所懸命に暮らしている町だから、邪魔をしてはいけない。

PS
私も、この本を読んで飛田に行ってみようかな、と思ったけど、上記の文章を読んで断念。

PS2
読む価値のある作品と思う。
一読をお勧めする。

【ネット上の紹介】
遊廓の名残りをとどめる、大阪・飛田。社会のあらゆる矛盾をのみ込む貪欲で多面的なこの街に、人はなぜ引き寄せられるのか!取材拒否の街に挑んだ12年、衝撃のノンフィクション。
[目次]
第1章 飛田に行きましたか;
第2章 飛田を歩く;
第3章 飛田のはじまり;
第4章 住めば天国、出たら地獄―戦後の飛田;
第5章 飛田に生きる;第6章 飛田で働く人たち

この記事についてブログを書く
« 「怪談」柳広司 | トップ | 「秘密は日記に隠すもの」永... »

読書(風俗/社会/貧困)」カテゴリの最新記事