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「セックスと超高齢社会」坂爪真吾

2022年04月27日 07時37分05秒 | 読書(風俗/社会/貧困)


「セックスと超高齢社会」坂爪真吾

高齢者の性がテーマ。

P5
2014年4月7日、東京都目黒区で夫(当時79歳)の介護を続けていた妻(71歳)が、自宅で夫の頭や顔を数回殴り、急性硬膜下血腫で死亡させる事件が起こった。
妻の犯行の動機は、過去の夫の不倫に対する怒りが込み上げたこと、その怒りが介護の不安と重なったことだという。夫は事件の前年から、不倫を時効と思ったのか、36年前に若い女性を好きになって一緒に旅行に行ったことなどを妻に話していたという。(不倫に時効はありません!夫は肝に銘じるべき・・・楽になろうとして告白せず、墓場までもっていきなさい!)

万葉集・・・沙弥満誓の歌
P25
ぬば玉の黒髪変り白けても痛き恋には逢う時もあり
(年を取って黒髪が白髪に変わっても、ひどい恋に苛まれることがある)

シニア婚活で結ばれた2人
P50
二人ともすでに60代後半のため、若い頃のような性生活は送れなくなっている。それでも月に1回は裸で抱き合って眠ることを習慣にしている。

P51
60~70代前後の男性は老後の世話や介護をしてくれる年下の女性を求めて婚活市場に乗り出す人が多い。冗談や笑い話では全くなく、高齢男性の中には1人で掃除も洗濯も自炊も着替えも何もできない、生活能力の完全に欠如した赤子同然の人が山のように存在している。

シニア婚活
P55
65歳を過ぎると結婚・再婚は99%不可能になるという冷徹な事実は、業者にとっては「不都合な真実」なのだろう。

P63
セックスのない人が性生活を停止した年齢は、全体平均で男性52.9歳、女性50.6歳。

P64
一方で、70代になっても全体の2~3割の夫婦はセックスをしている。「年に数回」と回答したのは、70代男性で13%、70代女性で10%。「月に1回以上」は70代男性で18%、70代女性で9%に上る。

P65
一般には、勃起不全になった段階で性生活を諦める高齢男性が多いというイメージがあるが、現実は必ずしもそうではない。40~60代の中高年女性が働く熟女専門風俗店の経営者から聞いた話では、勃起不全になったとしても、女性の温もりやコミュニケーションを求めて通ってくる高齢男性は少なくないそうだ。

高齢者ストーカーの問題
P79
加齢に比例して、他者や社会から否定される機会は増える。頑張ったところで報われないことも増える。そうした否定や挫折による孤独をうまく自分の中で受け入れられないと、人はストーカーになってしまう。
(中略)
彼ら・彼女らが本来やるべきことは、目の前の相手に勝手な幻想を投影して付きまとうことではなく、対人関係の基本を学びなおすことだ。今後は若年世代だけではなく、高齢者に対する恋愛教育、性教育が必要になっていくのかもしれない。

P136
女性向けAVに出演している男優(通称、エロメン)のサイン会やイベントには、少なくない数の中高年の女性たちが参加しているという。サイン会では来場者1人1人に対して、男優がサインや握手だけでなく、名前を呼びながらハグをしてくれる。それが目当てで遠方から参加する女性も多いそうだ。

客層高齢化の進むソープランドで・・・
P100
80代になっても毎週通っている男性もいれば、年金受給日に自転車を漕いで通ってくる男性、遠路新潟や長野から新幹線で通ってくる男性もいるという。事前に服用したED治療薬の効果で常時勃起状態になった股間を隠すように来店する男性もいる一方で、加齢によって勃起できなくなったため、挿入せずに正常位で腰を振るだけの「エアセックス」をする男性や、割り箸をコンドームの中に入れて挿入感だけでも味わおうとする男性もいるそうだ。

P143~P183、『介護現場での性的支援・最前線』・・・「よく調べているな」、「奥が深い」と感じた。介護職員に対する入所者のセクハラはよく聞く。「エロじじいに、おっぱい触られた」、とか。でも、問題はそれだけではない。色々あるなぁ、と。今後、『政府の指針』は、必要と思う。見ないふりは良くない。介護サービスの一環で、『射精介助』1回に付き『何点の補助』といった具体的な支援が必要かも。ちなみに、社団法人『ホワイトハンズ』では、重度身障者に対する射精介助は、30分2,800円。

【ネット上の紹介】
身高齢者約600万人のうち、初婚・再婚するのは0.001%。また配偶者がいたとしても、75歳になれば男性の2割、女性の6割は離別・死別を経験する。その時、私たちは残された自らの「性」とどう向き合えばいいのか。シニア婚活の実態、介護現場の問題行動、高齢者向け性産業など…、長寿大国と言われつつもほとんど光が当たってこなかった「超高齢時代の性」の問題に個人・社会の両面から挑んだ一冊。
第1章 「現在」と「過去」から考える(「死ぬまでセックス」という幻想
高齢者の性の社会史)
第2章 老後の性をめぐる「理想」と「現実」(「老後における理想の性生活」とは?
データから見る高齢者の性のリアル
「ありもしない救済」からの卒業)
第3章 「セーフティネット」は存在するか?(肉食系高齢者のストイックな生活
「高齢者専門風俗店」の実像に迫る
移り変わるアダルトビデオの世界
現実と虚構の狭間で輝く官能小説
女性高齢者の性から考える「第三の道」)
第4章 介護現場での性的支援・最前線(希望としてのユマニチュード
QOLを守るための性的支援とは?
介護現場でのセクハラの実態
「人間らしさ」をあきらめないために)
第5章 老後の性をデザインする(老後の性を満ち足りたものにする条件とは?
等身体のロールモデルをつくり出せ
性的に「成仏」するために)

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