goo blog サービス終了のお知らせ 

【ぼちぼちクライミング&読書】

-クライミング&読書覚書rapunzel別館-

「戦争まで 歴史を決めた交渉と日本の失敗」加藤陽子

2016年12月05日 20時56分51秒 | 読書(昭和史/平成史)


「戦争まで 歴史を決めた交渉と日本の失敗」加藤陽子

「それでも、日本人は「戦争」を選んだ」の姉妹編。
日本近代史3つの転換点を取りあげている。
①満州事変とリットン報告書
②日独伊三国同盟
③日米交渉
日本が大きく世界と議論し、対峙した問題である。
この時、日本はどう考え、行動したか?
現代の問題とも絡めながら、絶妙に読み手を引っ張っていく。
教科書の副読本にすべし、と強く思う。

シリア難民について
P20
この規模の人々が海を渡ったことは前にもあったな、という類推が頭の中に浮かびます。ああそうだ、19世紀半ばにアイルランドで起きた「ポテト飢饉」と、その結果生じた、アメリカ合衆国とカナダへの移民だった、と連想が続いていきます。

戦後70年について
P44
中国にとって2015年は、日清戦争敗北の120周年に当たるわけです。阿片戦争から始まる一連の国辱の歴史にあって、大きな画期となったのが日清戦争でしょう。

P50
日本にとって戦後とは、戦前を振り返りつつ考えるための時間そのものだったのではないか、そのような感慨が浮かびます。

P67
白村江の戦いは、7世紀に起きた、もう一つの日中戦争といえそうです。

P217
日米ガイドラインが防衛する場所とは…
1978年/日本本土(ソ連を太平洋方面に出さない)
1997年/周辺事態(日本の安全、極東における平和に寄与)
2015年/無制限(アジア太平洋地域、これを越えた地域の安全と平和)

P371
霞ヶ関の外務省に唯一銅像が建っているのは、陸奥のものなのだそうです。

P388
戦前期の首相は、国務大臣を更迭する権限を持ちませんでした。(中略)
近衛は内閣を代替わりさせて、ようやく松岡外相の排除に成功しました。

P410-411
日米交渉の神話の一つ…
「駐米日本大使館員の怠慢によって、日本のアメリカへの宣戦布告の通告が遅れた」
これはウソである、と。えっ、そうなの?!
井口武夫さんの「開戦神話」に書いてあるそうだ。

教育の重要性について
P421
この話になると私も頭に血が上りますが、戦前期においては、女子という、人口のおおよそ半分を占める人間に、男子と同じ教育を授けてこなかった。

【参考リンク】
アジア歴史資料センター
NHK 戦争証言アーカイブス - NHKオンライン
日本ニュース
証言
教えて!にちぎん :日本銀行 Bank of Japan
総理大臣談話等
終戦70年 インターネット特別展公文書に見る終戦 -復員・引揚の記録-
公文書に見る日米交渉 開戦への経緯
インターネット特別展・特集
歴代内閣 | 首相官邸ホームページ

【参考リンク】2

 「それでも、日本人は「戦争」を選んだ」加藤陽子

【おまけ】
入荷してすぐ予約を入れたが、既に30人待ち。
気になるので、他の図書館の予約待ち状況を調べてみた。(2016.11.17調査)
茨木市(蔵書数5冊)---予約数32件
吹田市(蔵書数2冊)---予約数27件
高槻市(蔵書数4冊)---予約数17件
摂津市(蔵書数2冊)---予約数0件
同じ本でも、各市の状況が分かって興味深い。

茨木市のレベルが高いように思われるが、
私の読みたい本で入荷していないものがいくつもある。
例えば・・・
「暗闇に耐える思想 松下竜一講演録」
戦争が遺したもの 鶴見俊輔に戦後世代が聞く」
家族の悩みにおこたえしましょう」信田さよ子

【ネット上の紹介】
かつて日本は、世界から「どちらを選ぶか」と三度、問われた。より良き道を選べなかったのはなぜか。日本近現代史の最前線。
[目次]
1章 国家が歴史を書くとき、歴史が生まれるとき(「歴史のものさし」で世の中をはかってみる
現代の史料を、過去のデータと照らし合わせて読む
歴史が書かれるとき
歴史の始まりとは)
2章 「選択」するとき、そこでなにが起きているのか―リットン報告書を読む(日本が「世界の道」を提示されるとき
選択肢のかたちはどのようにつくられるか
日本が選ぶとき、為政者はなにを考えていたのか)
3章 軍事同盟とはなにか―二〇日間で結ばれた三国軍事同盟(軍事同盟とはなにか
なぜ、ドイツも日本も急いだのか
「バスに乗り遅れる」から結んだのではない)
4章 日本人が戦争に賭けたのはなぜか―日米交渉の厚み(戦争前夜、敵国同士が交渉の席に着く意味は
史料に残る痕跡
日本はなぜアメリカの制裁を予測できなかったのか
国民は、その道のみを教えられ続けてきた
絶望したから開戦したのではない)
終章 講義の終わりに―敗戦と憲法(講義の終わりに)