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【ぼちぼちクライミング&読書】

-クライミング&読書覚書rapunzel別館-

「沸点桜」北原真理

2018年04月09日 20時08分53秒 | 読書(小説/日本)

「沸点桜」北原真理

馳星周バイオレンスを桐野夏生が描いたような作品。
面白さのツボは、性格も年齢も異なる女性2人が逃亡し過去を隠し生活する、って設定だ。
これだけで、十分おもしろい。
ミステリとしては多少ムリやり感があるが、作品に勢いがある。
一気に読ませるベクトルである。
感心した。

P43
「あれ、何て山なの」
「唐沢岳、右から三ツ岳、水晶岳、槍ヶ岳、穂高」
(これらを眺める場所ってどこだろう?水晶岳、って野口五郎岳の陰になって見えないのでは?)

【蛇足】
ミステリって作者も読者も「意外性」にこだわるように思う。
別に、ムリに「意外性」を作らなくてもいいのでは?
十分おもしろいんだから。

【ネット上の紹介】
新宿歌舞伎町でセキュリティをするコウは、生きるためなら手段を選ばないしたたかな女。元情夫のシンプの指示で、風俗店“天使と薔薇”から逃亡した淫乱で狡猾な美少女ユコを連れ戻しに成城の豪邸へと向かう。そこには敵対する角筈の殺し屋たちが待っていた。窮地を躱したコウはユコを連れ、幼いころに暮らした海辺の団地に潜伏する。束の間の平穏、団地の住民たちとの交流、闇の世界から抜け出し、別人に生まれ変わった危ない女とやっかいな女の奇妙な共同生活。幼いころから虐待され、悲惨な人生を歩んできた二人に、安息の日々は続くのか―。第21回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。

「 江の生涯を歩く」桐野作人

2018年03月30日 23時22分30秒 | 読書(小説/日本)
 
 


「 江の生涯を歩く」桐野作人

信長→秀吉→家康、と生き抜いた方なので、
そのゆかりの地をたどると、戦国時代から徳川の時代の重要な足跡をたどることになる。
重要な史跡が写真と地図で紹介されている。

玉造の玉造稲荷神社
P98
文禄二年(1593)、秀頼が誕生したとき、淀殿の胎盤を埋めたのがこの地だったと伝わる。
(中略)
小さな祠で、「秀頼公供養」と刻まれた脊柱が立っている。(子どもの夜泣きに霊験あらたかだそうだ)

太融寺について
P196
境内には明治期に東成郡鴫野村から移された伝・淀殿の供養塔がある。
(昔、地下鉄谷町線が出来るまで、大阪市バスを利用して梅田に出た。バスのアナウンスで「太融寺~」、と。淀殿のファンの方は押さえておくべきお寺)
淀殿というと悪女のイメージがあるが、それは後の徳川政権のイメージ操作の影響もある。
大坂城落城の際、於茶々は出来る限りの者を逃がしている。
以下、「茶々と家康」(秋山香乃)より。
このとき於茶々に助けられた者たちはみな、豊臣のいなくなった徳川の世で、毎年集まっては死ぬまで於茶々の供養を行った。謀反人への供養は命がけだったにもかかわらず、それは一世代だけに留まらなかった。ずっとその後も子孫へと受け継がれ、幾百年と於茶々の冥福を祈り続けることになるのである。

*お江についての本なのに、淀殿の事ばかり書いてしまったが、他意はない。



高野山には、織田信長、明智光秀、石田三成、伊達政宗、上杉謙信、武田信玄、そうそうたる顔ぶれの戦国武将の墓がある。

【ネット上の紹介】
戦国の世に生まれ、織田、豊臣、徳川家の興亡を見守ってきた浅井家の三女・江。実父と兄、母と養父、そして姉までが自害するという悲劇に見舞われながらも、江はしたたかに、しなやかに生き延びて、江戸の二代将軍・徳川秀忠の御台所として輝かしい生涯を送った。しかしながら、江に関する史料は非常に少なく、その生涯には謎が多い。本書は、著者が江ゆかりの地を一つひとつ訪ね歩き、史跡を紹介しながら波瀾に満ちたその生涯を描き出す。

第1章 浅井家の江―北近江・浅井家ゆかりの地を歩く(プロローグ―浅井家の成り立ち
小谷城―江誕生の地なのか ほか)
第2章 織田時代の江―尾張・岐阜・伊勢・越前を歩く(プロローグ―織田家の庇護の下へ
岐阜・伊勢から尾張へ―織田信長の庇護の下で ほか)
第3章 豊臣時代の江―京都・大坂・伏見・大野・丹波亀山を歩く(プロローグ―江の三度の結婚
織田から豊臣へ―時代の移り変わりを歩く ほか)
第4章 徳川時代の江―江戸を歩く(プロローグ―秀忠の御台所として
江戸城を歩く ほか)
第5章 江ゆかりの人々の墓碑を訪ねて(徳勝寺
大徳寺総見院 ほか)


「お迎えに上がりました。」竹林七草

2018年03月27日 20時12分03秒 | 読書(小説/日本)

「お迎えに上がりました。」竹林七草


失業中の朝霧夕霞。
ふと立ち寄った公園の掲示板で、国土交通省の貼紙を見つける。
それは、「幽冥推進課・臨時職員募集」であった。
開発の妨げになる地縛霊を説得し、穏便に立ち退いていただく、と。
こうして朝霧夕霞の活躍が始まる。

なんで高速道路のインターってのは、どこもかしこもこの手のホテルが並んでいるのか?
それは、国策だ、と。
かつて、道祖神はどこでも見かけたが、これは男女和合の姿をした神だ、と。
P201
「道というのは人と国にとってなくてはならぬ交通の要だが、同時に悪い風とともに穢れを運び込むのもまた道なのだ。故に毛細血管のごとくこの国の隅々まで高速道路が張り巡らされる計画をみたとき、インター付近にかのホテル群を誘致してみてはどうかと提案したのが、幽冥推進課の前身たる『幽冥課』なのだ。かつてはどこの村境にも置かれていた道祖神を生きた人間の営みで代用することで、都心で生じた穢れが日本全土を汚染することを防ごうという呪的装置なのだ」

P204-205
一級河川とは、国土交通大臣が指定したもの。対して二級河川とは、各都道府県知事が指定した河川のことを指している。

真面目なトリビアも交えながら物語は進行する。
軽い息抜きとして楽しめる。

【ネット上の紹介】
入社式当日に会社が倒産し、路頭に迷った朝霧夕霞。失意の中立ち寄った公園の掲示板で、国土交通省の臨時職員募集の貼紙を見つけ、藁をも掴む気持ちで応募する。不可思議な試験を経て採用が決まったが、そこは「幽冥推進課」。国土開発の妨げになる地縛霊などを立ち退かせる不思議な部署で、同僚は全員妖怪。しかし好待遇に心惹かれた夕霞は、働くことを決意し…。あやかしお仕事小説、開幕!

「RDGシリーズ」再読

2018年03月18日 20時31分48秒 | 読書(小説/日本)


「RDGレッドデータガール 氷の靴 ガラスの靴」に収録されている「九月の転校生 相良深行・中三の秋」「相良くんは忙しい 相良深行・高一の秋」を読み返した。
すると、「RDGシリーズ」を再読したくなった。
…結局、誘惑に勝てず、水曜くらいから日曜までかけてずっと読み返していた。(①はとばして②から⑥まで)


3.11では携帯電話にまつわる霊体験が少なからず見聞されているそうだ。
本シリーズでも、電波、波動が重要キーワード。
超常現象と最新ガジェット…意外と親和性があるようだ。
読んでいて改めてそう感じた。

【おまけ】
年に1回ぐらいの割合で再読しているので何回読んだか分からない。
あとがきを読んで、「勾玉シリーズ」を再読したくなったが、こちらの誘惑はなんとかしりぞけた。
カラスとの関連があるので、「風神秘抄」も再読したいところだが、図書館で借りている本も山積みなので、頭を切り換えざるを得ない。
 


「これは経費で落ちません!」(3)青木祐子

2018年03月12日 21時13分06秒 | 読書(小説/日本)


「これは経費で落ちません!」(3)青木祐子

シリーズ3作目。
このシリーズがえらいのは、ヒロインはもちろん各登場人物が描き分けられていること。
それに、どの人物もオフィスにいそうなこと。
あるあるネタ満載か?
経理を描けば、会社が見えてくる?

P189
――制服というのは何歳ごろから似合わなくなるものなのだろうか、とちらりと思った。

P192
ファックスはいまや遺物としてスミソニアン博物館にあるという。日常的に使うと言うと、外資系の会社で驚かれるらしい。

【ネット上の紹介】
森若沙名子、28歳。経理一筋6年目。仕事とプライベートはきっちり分けたいと思っている。そんな沙名子に、広報課の室田千晶が相談があると言ってきた。千晶は化粧品会社から転職してきた契約社員で、好感が持てるいい子だ。千晶が来てからは、ショールームも飾り付けられ来客も増えた。しかし彼女は、社内で浮いている。一部女子社員からは嫌われてさえいて…?


「ひよっこ社労士のヒナコ」水生大海

2018年02月16日 20時17分40秒 | 読書(小説/日本)


「ひよっこ社労士のヒナコ」水生大海

新米社労士を主人公としたお仕事小説。
おもしろく感じた。脇役+ヒロインにもう少し魅力があればさらによし。

P56
今、すごーく忙しい。この間も話をした算定基礎届の仕事、あれは四月から六月の賃金で作るから、六月の給与が確定してからはじめるわけ。(算定基礎から、月額変更へと続く。昇級月はたいていズレるから遡及が必要。遡及→確認→当月の給与に差額を反映する、そして査定、賞与、月変…この一連の流れが大変なのであって、算定基礎届そのものは、給与ソフトを使うと、さほどでもないと思うけど)

P139
どれだけその仕事をやりたいのか、やりがいがあるか、自分にとっての優先順位はなにか。改めて仕事と向き合い、考えて決めていくしかないと。

【おまけ】
お仕事小説が好きだ。
印象に残る作品を挙げてみた。




集英社文庫<br> マスカレード・ホテル 


【ネット上の紹介】
パワハラ、産休育休、残業代、裁量労働制、労災、解雇、ブラックバイト…。新米社労士の朝倉雛子(26歳、恋人なし)が、6つの事件を解決。


「明治乙女物語」滝沢志郎

2018年01月23日 21時10分06秒 | 読書(小説/日本)


「明治乙女物語」滝沢志郎

2017年度松本清張賞受賞作品。
時代考証、ストーリー、キャラクター、いずれも思った以上によかった。
エンディングまで一気に読めて楽しめた。
明治21年から22年、御茶ノ水・高等師範学校女子部、横浜、鹿鳴館が主な舞台。
幕末同様、テロと暗殺がはびこっている。
高等師範学校女子部に通う夏と咲たちは爆弾テロを阻止できるか?

P12
「みねちゃん、相変わらず編み物がお上手ですことね」
「うふふ、ありがとう、キンちゃん」
 高等師範学科一年の小澤キンである。学科と級は違うが、みねと同年齢であった。後に「女学生言葉」「てよだわ言葉」などと呼ばれる奇妙な言葉遣いは、この頃から流行り始めた。

P87
「もしかして、部屋で読んでいたスタディ何とかという本?」
「“A Study in Scarlet"よ」
前年に英国で出版された、コナン・ドイルという医師兼作家の小説である。後年、『緋色の研究』の題で邦訳されるが、名探偵シャーロック・ホームズが初めて登場した作品として知られる。

P108
そして森(有礼)は、後世に残る言葉を発した。
「富国強兵の根本は教育にあり。教育の根本は女子教育にあり。国家の行く末は、女子教育の成否にかかるものと心得よ」

【ネット上の紹介】
明治中期、高等師範学校女子部に通う夏と咲たちは、鹿鳴館の舞踏会に招待を受ける。そこには暴徒の魔の手が忍び寄っていた……。


「神の子」薬丸岳

2018年01月09日 20時22分25秒 | 読書(小説/日本)


「神の子」薬丸岳

IQ161以上の町田博史が主人公。
戸籍もなく、虐待されて育つ。
その後「殺人」で少年院へ。
さらに脱獄…。
一体どのような人生を歩むのか?
上巻559ページ、下巻557ページで、読みごたえあり。

【おまけ】
読んでいて、中村文則さんの「掏摸」「王国」を思い出した。
こちらは、本作品ほど分厚くないので、未読なら先に読んでみては?
「掏摸」中村文則
「王国」中村文則


【ネット上の紹介】
少年院入所時の知能検査でIQ161以上を記録した町田博史。戸籍すら持たぬ数奇な境遇の中、他人を顧みず、己の頭脳だけを頼りに生きてきた。そして、収容された少年たちと決行した脱走事件の結末は、予想だにしなかった日々を彼にもたらすこととなる―。一方、闇社会に潜み、自らの手を汚さずに犯罪を重ねる男・室井は、不穏な思惑の下、町田を執拗に追い求めていた。


「RDGレッドデータガール 氷の靴 ガラスの靴」荻原規子

2017年12月31日 15時19分02秒 | 読書(小説/日本)
 
 


「RDGレッドデータガール 氷の靴 ガラスの靴」荻原規子

今日は大晦日。
今年最後の紹介は「RDG」で締めくくりたい。
5年ぶりの新刊。
次の4編が収録されている。

影絵芝居 相良深行・中三の初夏
九月の転校生 相良深行・中三の秋
相良くんは忙しい 相良深行・高一の秋
氷の靴 ガラスの靴 宗田真響・高一の冬

短編+中編、ってのが珍しい。
短篇3作、中編1作が収録されているが、このような構成の作品は初めて。
いかに荻原規子作品が長篇ばかりなのか、って思う。
「氷の靴 ガラスの靴」は、ウエブ上で読了済みだけど、
一気に読み返し、とても楽しめた。
短篇では、「九月の転校生」が、特によかった。
高等部になったら、泉水子が転校してくる。
その前に、深行が学園情勢を探っている。
(そんなことをするキャラだったの?と驚く)
既に、それほど泉水子に入れ込んでいたのか、と。
でも、そんなそぶりはおくびにも出さない。
さらに本作では、深行が真響や高柳に初めて出会うシーンがあり、とても重要。
こんなやり取りがあったのか、と感慨深い。

いくつか印象に残った文章を紹介する。

P20
ふと、どうして泉水子は、美沙のような高飛車な女子にならないのだろうと考える。
あれほど大事にされていたら、女王様でもよさそうなものを、みそっかすになって隅でしょんぼりすごしているのは、どういうわけだろう。

P55
「相良くん――だっけ?高柳にかまわないほうがいいよ。そして、高柳がきらいな、この私にもかまわないほうがいい。もしも無事に高等部に進学したいならね。三年二学期転校してくるからには、そのつもりがあるんでしょう?」
「忠告ありがとう。肝に銘じるよ」
(中略)
(あいつら、何かある……)

P242
(オーロラ姫だのシンデレラ姫だの、今回のスケート教室では、妙に昔話のお姫様ばかり引き合いに出されたな……)
 ふと思った。昔話のお姫様たちは、本当に王子様と結婚することを望んだのだろうか。ただ、自分の現状を打開したかっただけではないだろうか。


ちなみに、「シンデレラ 中野京子特別授業 読書の学校」によると、次のように書かれている。
(学術的な解釈では、こうなのか…)
P55
――昔話における「王族」は、特になんらかの説明がない限り、完璧さの象徴です。人は誰しも心の中に各々の王国を持っており、不遇から脱して上昇すること、ないし精神的成長を遂げることが、王や女王になる、ないし王子や王女と結婚する、という形で表現されているのです。


【ネット上の紹介】
宗田真響の視点で描く、「最終巻」その後の物語。冬休み明け、泉水子と深行の関係が強まったことを知った真響は「チーム姫神」として不安を抱く。折しも大がかりなスケート教室が開催されるが、そこに現れたのは真響の従兄弟克巳だった。彼は、自分こそ真響に最もふさわしい相手だと宣言、彼女に手を差し伸べるのだが…!?(他短編三本収録)


「アップルソング」小手鞠るい

2017年12月18日 19時57分12秒 | 読書(小説/日本)


「アップルソング」小手鞠るい

茉莉江は、赤ん坊の時、焼け跡から助け出される。
その後、日本は終戦を迎え、母親に連れられ渡米する。
様々な困難と直面しながら、報道写真家となっていく。
その時々の世相が描かれる…ベトナム戦争、安保闘争、あさま山荘事件、日航ジャンボ機墜落、そして9.11テロ。

P114
「マリーちゃん。人間を支えているのは、なんだと思う?教えてあげましょうか、それはね、夢と信念よ」

P249
行き場がない。逃げ場もない。閉ざされた空間で、涙をだらだら流しながら、それでも茉莉江は、ついさっき仕舞ったばかりのカメラを取り出そうとした。「記録しておかなくては」という意志に突き動かされていた。

P412
人類がやっていることは、環境破壊と殺し合いだけど。彼女は、チェチェンで、己の限界をこえるようなものを見てしまい、精神の均衡を保てなくなっていたのかもしれない。

【蛇足】
構成に懲りすぎのように感じた。
もっと普通に物語を展開したほうがいいんじゃない?
ややこしくしくするメリットは?
内容がいいだけに、その点残念に感じた。

【ネット上の紹介】
終戦直前、焼け跡から助け出された赤ん坊。長じて彼女はアメリカに渡り、人間の愚行と光をその手で切り取っていく―著者の新境地にして最高傑作。


「おらおらでひとりいぐも」若竹千佐子

2017年11月30日 21時15分36秒 | 読書(小説/日本)


「おらおらでひとりいぐも」若竹千佐子

第54回文藝賞受賞作。
1人暮らしの婆さん・桃子さんのモノローグ。
男性のほうが短命なので、女性が最後に残る確率は高い。
子どもと同居しないなら(嫁が拒否するなら)、独りで生きることになる。
「老いの境地」が描かれる。

P100
(前略)老いるというのは結局のところ、負けを承知の戦のようなものではないのか、普段はきっちり栓をして微塵も表に出さない疑念までもがやすやすと浮上して、それがついつい桃子さんの心を暗くしていた。

さて、この手の作品には先例がある。
「魂萌え」である。
但し、こちらは59歳で夫に死なれた女性。
「おらおらでひとりいぐも」の桃子さんは74歳。
この差は大きい。

私は、「魂萌え」のほうが、ずっとおもしろく感じた。
(作品のタイプが異なるので、比べること自体が間違っているけれど)
次に、「魂萌え」の印象に残る言葉を記す。
P362
若い頃は、歳を取ったら穏やかになると思っていたが、六十歳を目の前にした自分の心は若い頃以上に繊細だし、時々、暴力的といってもいいような衝動が湧き起こる。感情の量が若い頃よりも大きくなった気がする。

P299
独りでいるということは、穏やかで平らかな気持ちが長く続くことなのだ。人に期待せず、従って煩わされず、自分の気持ちだけに向き合って過ぎていく日常。
「魂萌え!」桐野夏生

【ネット上の紹介】
74歳、ひとり暮らしの桃子さん。夫に死なれ、子どもとは疎遠。新たな「老いの境地」を描いた感動作!圧倒的自由!賑やかな孤独!63歳・史上最年長受賞、渾身のデビュー作!第54回文藝賞受賞作


「粗茶一服」シリーズ、松村栄子

2017年11月21日 21時00分49秒 | 読書(小説/日本)



「雨にもまけず粗茶一服」松村栄子
「風にもまけず粗茶一服」松村栄子
「花のお江戸で粗茶一服」松村栄子

シリーズ通して再読した。
しっかりプロットを考えて初巻から作られているのが分かる。
あ~おもしろかった。
また、そのうち読み返そう。


「鬼平犯科帳」(18)池波正太郎

2017年11月11日 21時07分09秒 | 読書(小説/日本)


「鬼平犯科帳」(18)池波正太郎

次の6編が収録されている。

「俄か雨」
「馴馬の三蔵」
「蛇苺」
「一寸の虫」
「おれの弟」
「草雲雀」

P7-P8
「あっという間に、一年が……」
「そのことよ。若いころは夏の暑さなど歯牙にもかけなんだものだが、近頃はどうにもたまらぬ。また夏かとおもうと、うんざりとして、いまから気が萎えてしまうわ。年歳をとると寒さのほうが好きになるらしい」(夏より冬のほうがまし、と私も思う。更に言うと、一年中秋だったら嬉しい。春はダメ…花粉症だから)

【ネット上の紹介】
目黒不動まで見廻りに出た平蔵は、門前の桐屋で妻・久栄の好物である黒飴を求め、少々のんびり過ごす。帰り道、驟雨にたまらず、近くの百姓家に入ると、そこに、同心・細川峯太郎が女連れで飛び込んできた(「俄か雨」)。同心たちも一筋縄ではいかない。ほかに「馴馬の三蔵」「蛇苺」「一寸の虫」「おれの弟」「草雲雀」の全六篇を収録。


「唄う都は雨のち晴れ」池上永一

2017年11月09日 20時21分55秒 | 読書(小説/日本)


「唄う都は雨のち晴れ」池上永一

「テンペスト」外伝にして「トロイメライ」続編。
あれっ?!と思ったかもしれないが、表紙の絵は五十嵐大介さんだ。

P177
「孫親雲上、私を見逃してくださるのですか?」
 黒マンサージが話していた相手は孫寧温だった。
「あなたが私の正体を黙ってくれている代わりに、私はあなたのすることに目を瞑ります。ただそれだけのこと……」(孫寧温登場!これって用事もないのに歌舞伎に義経が登場するようなもの?)

P194
当時の琉球の風水師は生活環境学者に近い。しかし後世、ユタや易者が占いに風水を取り込み、開運を追求しすぎるあまり迷信的な振る舞いになっていくことになる。

【ネット上の紹介】
19世紀、『テンペスト』と同じ時代の琉球王朝。新米岡っ引きとして少しずつ大人への階段をのぼる武太。水不足の村の窮状、盗みを働いた貴婦人、謎の風水師の秘密……今回も6つの難事件が立ちはだかる!


「明日町こんぺいとう商店街 招きうさぎと七軒の物語」

2017年11月07日 20時03分19秒 | 読書(小説/日本)


「明日町こんぺいとう商店街 招きうさぎと七軒の物語」大島真寿美/大山淳子/彩瀬まる千早茜/松村栄子/吉川トリコ

架空の商店街を舞台にしたアンソロジー。
なぜ、本書を読もうと思ったかというと、「粗茶一服」のスピンオフが掲載されているから。

P185
「お嬢さん、どこで弓引いているんだい」
(中略)
「〈坂東巴流〉の道場です」
 やっぱりな。方角的にそうなんじゃないかと思ったんだ。
「あ、ご存じですか!東京でも知りはらへんひとのほうが多いみたいですけど」
「まあ、そうかもしれない」
「あたし、内弟子です。って、まだ、なったばっかりやけど。今は道場から大学に通てるんです」
 さっきまで怯えてたのが、急にうちとけてきて、ニコッと笑った。佐保ちゃんというらしい。

この「粗茶一般」シリーズは完結してしまったので、続編はない。淋しいかぎりだ。
でも、このようなスピンオフでいいから、今後も出て欲しい。
切に願う。

【ネット上の紹介】
この路地を曲がれば、そこはもう、すこし不思議な世界の入口―。ひとつの架空の商店街を舞台に、七人の人気作家がお店を開店し、短編を紡ぐほっこりおいしいアンソロジー。商店街のマスコット「招きうさぎ」がなつかしくあたたかな物語へと誘います。