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【ぼちぼちクライミング&読書】

-クライミング&読書覚書rapunzel別館-

「ゴースト」中島京子

2017年11月06日 21時13分15秒 | 読書(小説/日本)


「ゴースト」中島京子

中島京子さんの新刊。
思ったよりおもしろかった。
幽霊をテーマにした短編集。
7編収録されている。
といっても、怖い内容ではない。
どちらかというと、しんみり系。

戦争をテーマにしたのも複数編あって、
読んでいて、浅田次郎さんの「帰郷」を思い出した。
浅田次郎さんのファンの方には申し訳ないが、
本書のほうが面白いと感じた。

【ネット上の紹介】
目をこらすと今も見える鬱蒼とした原宿の館に出没する女の子、二〇世紀を生き抜いたミシン、おじいちゃんの繰り返す謎の言葉、廃墟と化した台湾人留学生寮。温かいユーモアに包まれ、思わず涙があふれる7つの幽霊連作集。


「花のお江戸で粗茶一服」松村栄子

2017年11月05日 21時38分40秒 | 読書(小説/日本)


「花のお江戸で粗茶一服」松村栄子

シリーズ3巻目にして完結編。
このシリーズは、ホントに面白い。
舞台は京都から東京に移動。
遊馬は、家出先の京都から東京に帰ってくる。
ユニークな脇役多数で、群像劇としても楽しめる。
登場人物1人1人に心が配られている。
感心した。

【おまけ】
このシリーズの初巻が出たのが、2004年。
私が読んだのが、遅れて2008年。
その後続編が出たのが、2010年12月。
そして、今回2017年11月の最終刊である。
非常にゆったりしたサイクルで出版された。
(こんなに遅筆・寡作で食べていけるのだろうか?)

もし、このシリーズを読んでいないなら、
最初から読んでみて。
面白さを保証するから。
PS
装丁・装画が柴田ゆうさん、松岡史恵さんのコンビでよかった!
前作・単行本の表紙はひどかった。
カバーを掛けて目に触れないようにしている。



【ネット上の紹介】
弓、剣、茶の「三道」を伝える“坂東巴流”の嫡男・友衛遊馬、二十歳。家出先の京都から帰還するも、家元でさえ副業しなければ家族を養えない貧乏流派ゆえ、働き口を探してこいと言われてしまう。建造が始まったスカイツリーの警備員に収まるが、周囲からは「あそこの跡継ぎはダメだ」と後ろ指を指され、ガールフレンドとの仲も“行き止まり”。冴えない日々の中、曲者ぞろいの茶人武人にやりこめられながら、遊馬は自分の進むべき道をぐるぐると探しつづける。明日が見えないあなたに贈る笑えて泣けて元気になれる物語。


「ヒストリア」池上永一

2017年10月31日 20時07分56秒 | 読書(小説/日本)


「ヒストリア」池上永一

久しぶりに、池上永一作品を読んだが、とても良かった。
629ページで読みごたえもあった。
戦争末期の沖縄から物語は始まる。

ヒロイン・知花煉は、米軍の沖縄上陸作戦で家族をすべて失ってしまう。
九死に一生を得て、戦後をたくましく生きる。
しかし、米軍のお尋ね者となり、ボリビアへと逃亡せざるを得なくなる。
全部で13章あるが、第3章からボリビアが舞台となる。
ボリビアでの描写も詳細を究める。
風景、風俗、音楽、食事、特に飛行機のメカ描写に感心した。
背景となる歴史も重要なポイント。
ボリビア革命が起き、キューバ危機も描かれる。
なんと、チェ・ゲバラも登場。
読んで良かった、今年度トップクラスの作品だ。

P119
「その口ぶりじゃあ、まだ本当の恋を知らないだね」
 私はその言葉にカチンときた。恋と酒は本質的に同じものなのだ。一口の泡盛で酩酊する人もいれば一升瓶をラッパ飲みしても素面の人もいる。きっと私は後者なのだろう。

P198-199
 ボリビア革命はアシエンダ農地解放を断行すると同時に、開拓を行った。サンタクルスから百キロメートル先の北東部が開拓地と位置づけられた。それに伴い大量の移民を募るという。
 (中略)
 ボリビア革命から間もない1954年のことである。

P522
「残念ながら革命以外、世界を変える方法はない。人に正論を吐くなら、レンの意見を聞こうじゃないか。どうすれば貧しい国の人たちを救えるんだ?」
 この男はわたしが口籠もるとでも思っているのか。
「私なら――。五十年かけて人材教育をする。まずは経済の仕組みを学ばせるわ。憲法や法律は豊かになった後、社会に合わせて変えていけばいい」
「権利より生活を取るなんて奴隷根性だ」
「生活を捨てて権利を取るのは死人だけよ」

P535
スペイン語の語感では名前の最後の音がAで終わると女性になり、Oで終わると男性名になる。日本では一般的な「幸子」とか「麗子」とか「美智代」は男性だと思われてしまう。だから娘が生まれたら絶対にAで終わる名前をつけたかった。あとAでも「茉莉花」は絶対ダメだ。[marika]はスペイン語でオカマという意味である。「真理子」はもっと悲惨だ。(強調表現の「オカマ野郎」という侮蔑語になるそうだ)

P616
私はAサインバーにふらりと入った。米軍から公衆衛生で優良店とお墨付きを得た[APPROVED(承認済)]店のことだ。看板のどこかに「A」が図案化されていたり、許可証が入口に貼られている。

【おまけ】
編集者は上・下2巻にするか迷ったのではないか。
結局、厚い1冊となった。
文庫本化されるときは、2冊になるかも。
あるいは、「テンペスト」のように4冊になるか?

【おまけ】
読んでいて、なんとなく、古川日出夫さんの「ベルカ、吠えないのか?」を思い出した。


【ネット上の紹介】
第二次世界大戦の米軍の沖縄上陸作戦で家族すべてを失い、魂(マブイ)を落としてしまった知花煉。一時の成功を収めるも米軍のお尋ね者となり、ボリビアへと逃亡するが、そこも楽園ではなかった。移民たちに与えられた土地は未開拓で、伝染病で息絶える者もいた。沖縄からも忘れ去られてしまう中、数々の試練を乗り越え、自分を取り戻そうとする煉。一方、マブイであるもう一人の煉はチェ・ゲバラに出会い恋に落ちてしまう…。果たして煉の魂の行方は?著者が20年の構想を経て描破した最高傑作!


「うさぎパン」瀧羽麻子

2017年10月26日 21時56分27秒 | 読書(小説/日本)


「うさぎパン」瀧羽麻子

先日読んだ「乗りかかった船」が良かったので、引き続き読んでみた。
それなりに面白かった。
高校生が読んだら、感激するような作品だと思う。
でも、私のようなオヤジが無理して読む作品ではなかった。
2007年の作品なので、それから10年。
すばらしく進化した、ということだ。

【ネット上の紹介】
お嬢様学校育ちの優子は、高校生になって同級生の富田君と大好きなパン屋巡りを始める。継母と暮らす優子と両親が離婚した富田君。二人はお互いへの淡い思い、家族への気持ちを深めていく。そんなある日、優子の前に思いがけない女性が現れ…。書き下ろし短編「はちみつ」も加えた、ささやかだけれど眩い青春の日々の物語。


「女たちの避難所」垣谷美雨

2017年10月24日 21時04分02秒 | 読書(小説/日本)


「女たちの避難所」垣谷美雨

3.11を生き延びた3人の女性を描いている。
地震と津波、その後の避難所生活がリアルに描かれている。

【著者の言葉】P352
 主人公は三人の女性で、それぞれが三月十一日にあの地震と津波に遭遇し、命からがら避難所に辿り着き、仕切りのない体育館での暮らしを余儀なくされます。その過程と暮らしぶりを細かく、生活者の目線で追うことを心がけました。
 モデルにした場所はありますが、あえて宮城県の鷗ヶ浜市という架空の場所を舞台にしました。

P277
 テレビでは連日キズナ、キズナと馬鹿のひとつ覚えみたいに言っているが、周りを見渡せば、離婚した夫婦は少なくなかった。離婚の原因は様々で、夫婦のことは他人にはわからない。聞いた範囲では妻の側から言い出した離婚がほとんどだった。
 三世帯で暮らしていた家族が、新しく土地を買って家を建て直すとき、少し離れた土地に別々に家を建てたというのも最近よく聞く話だ。仮設住宅で別々に住むことの快適さをいったん味わった夫婦は、二度と親世代とは同居したがらないという。

【著者の他のお薦め作品】









以上、どれもハズレなし。

【ネット上の紹介】
九死に一生を得た福子は津波から助けた少年と、乳飲み子を抱えた遠乃は舅や義兄と、息子とはぐれたシングルマザーの渚は一人、避難所へ向かった。だがそこは、“絆”を盾に段ボールの仕切りも使わせない監視社会。男尊女卑が蔓延り、美しい遠乃は好奇の目の中、授乳もままならなかった。やがて虐げられた女たちは静かに怒り、立ち上がる。憤りで読む手が止まらぬ衝撃の震災小説


「乗りかかった船」瀧羽麻子

2017年10月23日 21時02分09秒 | 読書(小説/日本)


「乗りかかった船」瀧羽麻子

お仕事小説だけど、テーマを人事に絞っている。
そこにドラマが生じる。
中堅造船会社を舞台にした連作短編集。
次の7編が収録され、主人公は短篇ごとに異なる。

「海に出る」
「舵を切る」
「錨を上げる」
「櫂を漕ぐ」
「波に挑む」
「港に泊まる」
「船に乗る」

この著者は、以前から知っていたが、恋愛小説がメインなので、
「私の読む作品ではないな…」、と思っていた。
まさか、このようなお仕事小説を書くとは意外だった。
しかも、予想以上にレベルが高い。
かつて、奥田英朗さんが「ガール」を書いたとき、著者は女性なのでは?と思った。
今回は逆パターン。これほどおっさんの心理を描写するとは、オヤジでは?と思ってしまった。
今後、要チェック作家のリストに加えることにする。

P174
 仕事と家庭の両立、という言葉がある。あれは仕事100パーセント、家庭100パーセント、合計200パーセントをひとりの人間がこなすという意味ではないはずだ。そんなことをしたら死んでしまう。70対30、50対50、20対80、ひとによって、また時期によっても、比率は変わるだろう。どれも両立だし、優劣はないと玲子は思う。

【ネット上の紹介】
舞台は創業百年を迎える中堅造船会社。配属、異動、昇進、左遷…。人事の数だけドラマがある!明日、働く元気がもらえる、全七編の連作短編集!


「氷の靴 ガラスの靴」(6)荻原規子

2017年10月07日 22時08分55秒 | 読書(小説/日本)

Sarisari















「氷の靴 ガラスの靴」(6)荻原規子

これで最終回。
本作品は、12月に単行本化されるようだ。
本編だけでは、1冊にするにはページ数が足りないように思う。
もしかしたら、書き下ろしの短編が追加されるかも。
「樹上のゆりかご」のように。
その時は、アンジェリカ目線?

P89
ふと思った。昔話のお姫様たちは、本当に王子様と結婚することを望んだのだろうか。ただ、自分の現状を打開したかっただけではないだろうか。


「出会いなおし」森絵都

2017年09月13日 19時21分36秒 | 読書(小説/日本)


「出会いなおし」森絵都

森絵都さんの新刊。
前回の「みかづき」が良かったので、読んでみた。
でも、今回はイマイチ。
短編集だけでど、途中で挫折。
読む気力が失せてしまった。

第2話「カブとセロリの塩昆布サラダ」で嫌になった。
クレイマーの主婦の話。
まるで、普通の主婦のように描いているが、
私の感覚では、病的なクレイマーである。
518円の惣菜に、カブの代わりに大根が入っていたのを激怒。
カブの入った惣菜を自宅まで持ってこい、と。
結局、百貨店の惣菜担当者と責任者が惣菜を持って駆けつけて謝罪。
近づきたくタイプだ。

【おまけ】
クレームを付けたが、今回はともかく、過去の作品は素晴らしい。
私の森絵都作品第1位は、ダントツで「永遠の出口」。
永遠の出口 
第2位は、先日読んだ「みかづき」。

みかづき
3位は「DIVE!!」。
 DIVE!!〈1〉前宙返り3回半抱え型 
4位は「カラフル」。
カラフル

【ネット上の紹介】
年を重ねるということは、おなじ相手に、何回も、出会いなおすということだ。出会い、別れ、再会、また別れ―。人は会うたびに知らない顔を見せ、立体的になる。人生の特別な瞬間を凝縮した、名手による珠玉の六編。


「後悔病棟」垣谷美雨

2017年09月12日 19時05分39秒 | 読書(小説/日本)


「後悔病棟」垣谷美雨

2014年刊行「if サヨナラが言えない理由」を改題、加筆、文庫版化された作品。
総合病院の病棟が舞台。
末期癌の患者たちと医師・早坂ルミ子の物語。
患者たちは余命僅かと知ると、やり残したこと、後悔の念に苛まれる。
あの時に、こうしていたら、ああしていたら、と。
となると、同著者の「リセット」を思い出す。
本書も、人生やり直し小説「リセット」別バージョン。
私は、この手の作品が好きなので、それなりに楽しめた。

【関連作品】


【ネット上の紹介】
田川病院に勤務する医師の早坂ルミ子は末期のがん患者を診ているが、患者の気持ちがわからないのが悩みの種。ある日、ルミ子は病院の中庭で不思議な聴診器を拾う。その聴診器を胸に当てると、患者の“心の声”が聞こえてくるのだ。「もし高校時代に戻れたら、芸能界デビューしたい」―母に反対されて夢を諦めた小都子が目を閉じて願うと、“もうひとつの人生”へ通じる扉が現れる。念願の女優になった小都子だが…。聴診器の力で“あの日”へ戻った患者達の人生は、どんな結末を迎えるのか。夢、家族、結婚、友情。共感の嵐を呼んだヒューマンドラマ。

「RDG 氷の靴 ガラスの靴」第5回

2017年09月07日 20時52分55秒 | 読書(小説/日本)

Sarisari















「RDG 氷の靴 ガラスの靴」第5回

連載第5回目。
一気に山場を迎えた。
ということは、次回でオワリ?
次回はエピローグ?

高柳のセリフ
「どこが悪霊と違う?きみたちにも制御できない霊的存在じゃないか。霊と悪霊の区分は制御の可不可で決まるんだ。他にいったい何がある」


「月の満ち欠け」佐藤正午

2017年09月04日 19時29分04秒 | 読書(小説/日本)


「月の満ち欠け」佐藤正午

第157回直木賞受賞作品。
面白かった。
転生がテーマ。
重要なハードルが二つある。
いかに本当らしく表現するか、そして、感動を与えるか。
つまり、「語り」の難しさ。
巧みなストーリーテリングに感服した。

「(前略)人間の祖先は、樹木のような死を選び取ってしまったんだね。でも、あたしに選択権があるなら、月のように死ぬほうを選ぶよ」
「月が満ちて欠けるように」
「そう。月の満ち欠けのように、生と死を繰り返す。(後略)」

PS
複雑な人物関係なので、メモを取りながら読んだ。

【ネット上の紹介】
あたしは、月のように死んで、生まれ変わる――目の前にいる、この七歳の娘が、いまは亡き我が子だというのか? 三人の男と一人の少女の、三十余年におよぶ人生、その過ぎし日々が交錯し、幾重にも織り込まれてゆく。この数奇なる愛の軌跡よ! 新たな代表作の誕生は、円熟の境に達した畢竟の書き下ろし。さまよえる魂の物語は戦慄と落涙、衝撃のラストへ。


「海鳴り」藤沢周平

2017年08月24日 19時54分30秒 | 読書(小説/日本)


「海鳴り」藤沢周平

藤沢周平作品は暗く湿っぽい印象があるが、本作品はその極みか?
藤沢周平作品が好きな人はたまらないでしょうね。
それに、「蝉しぐれ」でも感じたが、男に都合が良すぎる恋愛模様。
これも男のロマンと感じるか、鼻につくかは、人による。
色々言ったけど、上下2冊を一気読みさせる筆力はさすが。

そのころ、新兵衛の胸にある不思議な感覚が生まれた。ある時期を境にして、自分が老いの方に身を置いてしまったような感覚である。これまで考えもしなかった、老いとその先にある死が、いやに明瞭に見えた。そして、疲れを知らずに働いたつい二、三年前までのことは、奇妙なほど遠くに思われたのである。

テーマは老いらくの恋と不倫。
高齢者必読?


【ネット上の紹介】
はじめて白髪を見つけたのは、いくつの時だったろう。四十の坂を越え、老いを意識し始めた紙商・小野屋新兵衛は、漠然とした焦りから逃れるように身を粉にして働き、商いを広げていく。だが妻とは心通じず、跡取り息子は放蕩、家は闇のように冷えていた。やがて薄幸の人妻おこうに、果たせぬ想いを寄せていく。世話物の名品。


「BUTTER」柚木麻子

2017年08月11日 19時23分42秒 | 読書(小説/日本)


「BUTTER」柚木麻子

評判も良く、売れている人気作品。
でも、私は面白いと感じなかった。
木嶋佳苗事件を基にして書かれている。
私は、この事件に興味を持っていて、次の2冊を読んでいる。

「毒婦たち 東電OLと木嶋佳苗のあいだ」上野千鶴子/信田さよ子/北原みのり
「毒婦。 木嶋佳苗100日裁判傍聴記」北原みのり

だから、期待した。
柚木麻子さんが、この事件をどう料理するのだろう?、と。
桐野夏生さんが「グロテスク」を書かれたのを想定したのだ。
期待値が高すぎたのが、がっかりした原因か?

【おまけ】
「王妃の帰還」なんか、とても面白かったのに、どうしたんだろう?


【関連作品】


「RDG 氷の靴 ガラスの靴」第4回

2017年08月07日 19時40分59秒 | 読書(小説/日本)

Sarisari
「RDG 氷の靴 ガラスの靴」第4回

連載第4回目。
スケート教室で、真響がペアダンスを踊ることに。
ペアの相手は?

深行のセリフ
P235
「思い出せよ、おれたちはすでにこの世の別の層を見ている。そういう人間じゃなければ、鈴原のそばにはいられないんだ。おまえの従兄弟には、あのはざまの世界が理解できるのか?」

克巳が理屈で真響を攻略しようとしたが、深行が引き戻すシーン。


「結婚帝国」上野千鶴子/信田さよ子

2017年07月30日 09時33分54秒 | 読書(小説/日本)


「結婚帝国」上野千鶴子/信田さよ子

P15
上野:結婚したからといって人生がリセットされるわけではないし、しないからといってお先まっくらなわけでもない。家族がセキュリティグッズになることもあるが、最大のリスクになることもある。

P30
上野:(前略)社会学には「相対的剥奪」という概念があります。リラティブ・デプリべーション(relative deprivation)です。つまり、みじめさに「絶対」はないということです。

P72
信田:「本当のわたし」とかね。踏みつぶしてやりたい言葉ですね。

P113
上野:わたしは結婚契約をこんなふうに定義しているんですよ。「自分の身体の性的使用権を、特定の唯一の異性に、生涯にわたって、排他的に譲渡する契約のこと」。

P123
上野:レイプには交通事故と思って「やりすごす」やり方があるのかもしれませんが、インセスト(親近姦)は信頼を利用した権力の乱用だから、もっと深刻でしょう。

P131
上野:妻を殴るのは、男の自意識の中では、自傷行為の延長。実際、わたしの知り合いの夫がそう言ったと聞いたことがある。「君を殴るのとき、僕の心が泣いているんだぁ」って。だけど、「痛いのはあんたじゃないだろ」。

P146
上野:女の場合は、男を所有できなくても、子どもは所有できるでしょ。だから子どもに向かうんでしょ。子どもは所有できると思っている。

P177
上野:「かわいいおばあちゃんになりたいって言う人がいますが、今までかわいくなかったわたしが、これから先、かわいくなれるわけがない」。

2004年、信田さよ子さんと上野千鶴子さんの対談。
10年以上前の対談だけど、古さを感じない。
つまり、世の中はさほど、変わっていない?

【ネット上の紹介】
結婚は、本当に女の岐れ道なのか―?結婚しても、しなくても、女女格差に家族問題、セックス、DV、老いた親の介護まで、難問は非情に降りかかる。もはや既婚/非婚のキーワードだけでは括れない「女」と「結婚」の現実を、“オンナの味方”二大巨頭が徹底的に語りあう!文庫版のための追加対談収録。
第1章 性規範と性行動のギャップを生きる三十代
第2章 「かけがえのなさ」の解体と純愛願望
第3章 「愛はなくてもセックスできる」は常識なのに
第4章 男の「愛」とセクシュアリティ
第5章 去勢しないかぎり、暴力は続くのか
第6章 結婚難民よ、どこへ行く
第7章 「カウンセラー無用論」を俎上にのせる
第8章 人は、社会的存在でなければならないのか
文庫版のための特別対談(上野千鶴子×信田さよ子)