SMILEY SMILE

たましいを、
下げないように…

くじら、ねこ  4

2004-07-30 18:07:02 | くじらねこ
「ひつじくん、ひつじくん、ねこちゃんが、寝ちゃったよ。まったく、

酒と音楽の力は絶大だね。ねこちゃんも、さあ、そんな簡単に寝ないで

おくれよ、不眠症じゃなかったんかい。どうしてこんなにも素直なんだ

ろう。勧められるままに飲んで、ひつじくんのピアノにKOされて。そ

んなんじゃ、世の中生きづらいぜ。

・・・だから、来るんだろうね、ここに、この店に。

そして馬鹿まじめに一杯のコーヒーを淹れる姿を遠目にぼんやり眺め

たり、目まぐるしい指の動きが、一転、ひとつの音を精一杯のやさしさ

で弾く、その瞬間に出会ってぞっとするほどココロ動かされたりする

んだ、ね、聞いているかい、ねこちゃん」

「起きているよ、起きているさ、聴いているよ、聞えているさ。すご

い、すごいよ、ひつじくん、ウットリしちゃう、それでいて、なんて悲

しいんだろうね、何だろうか、これが酔いというものなのかしら、いつ

にもまして、素晴らしく聞こえる、なんでだろう、なんでだろう、にゃ

あ、くじらさんよぉ、えぇ?」

ねこさんは、化け猫の眼でお隣のくじらさんを見つめます、がどうや

ら、焦点が合わないようでしきりにまばたきをなさっております。酒精

とは、げに恐るべきかな、素面ではいつもすましたお顔でたいへん気

取り屋のねこさんに野生丸出しの鋭い目つきをさせる、しかもくじらさ

ん相手に。ねこさんの野生はくじらさんを、お魚、と見たのでしょう

か、いや、酒精によって野生が狂わされたのでしょう。そして、こ精と

精というものは神経質で不眠症気味のねこさんをこんなにも容易く眠り

の世界に誘う魔力を持っているのです。そんなねこさんは、というと、

酒精に翻弄されて、現実と狂気と無意識の三界の狭間で揺れ惑って

いるのでございます。

「やや、これは、ちょっと飲ませすぎたかな、眼がいっちゃってるじゃ

ないの、黙って寝てもらっていたほうがまだ、よかった。あー、ねこち

ゃん、いいかい、お酒の飲み方というのはね、ビールはまあ、ぐびぐび

やらないといけないけど、アルコールの強いものはね、ミルクじゃない

のだからね、ゆっくりと味わって飲むんですよ、ただ渇きを癒すために

飲むんじゃないんだね、心の渇きを癒す、ナンテ、カッコつけて言うと

そんな感じだね・・・」

くじらさんもねこさんの豹変ぶりに、さすがにぎょっとしたようで、態

度を軟化して諭すようにお酒の飲み方を講釈されましたが、ねこさんは

もはや別世界のお方、呆然と目を開けたまま俯いて、なにやら意味不

明のことをつぶやいたかと思うと、片肘をついてお眠りになってしまわ

れました。

「寝ちゃった・・・、完全に寝ちゃったよ、ねこちゃん、こねこちゃ

ん、仕方ない、もう寝かせておいていいよね・・・」

ねこさんの酒癖の悪さを察知したくじらさんは、すっかり気弱になっ

て、これ以上ねこさんを刺激することをやめにしたようで御座います。

ひつじさんの「月光」はいつのまにか、BILL EVANSの

「PeacePiece」に

そしてそれは、やがて、

「Gymnopedie」に。

ねこさんの邪魔にならないのように音は控えめで。

時間が、ゆっくりと流れます。

                             (続)           

くじら、ねこ  3

2004-07-30 16:18:52 | くじらねこ
「あれが、いいな・・・、あれ・・・」

ねこさんが、ようやく(眼はまだ虚ろではありましたが)やや正気を取

り戻し、つぶやくように、

「そう・・・、Someday My Prince Will Come」

と仰いました。私はねこさんを元気づけるように、

「いつか王子様が、なんて、信じて待つことが出来る方はすくないです

ね、たいへん尊いことだと思います。とても強い方であると思います。

ひょっとしたら、自棄っぱち、なのかも知れません。でも、信じないの

はお易いこと、しかも大抵は、何も信じない!というものでもなく、た

だのポオズで信じない振りをしているだけなのですから。

そうですね・・・、ねこさん、夢を見たいのでしょう。夢見心地が、あ

の狭間で揺られている感覚が恋しいのでしょう」

そっと、ディサローノアマレットを38cc忍ばせたアイスミルクを差し

出します。ねこさんはお鼻をくん、くん、とおさせになってから、苦笑

いのような気弱な笑みを浮かべて、一口、二口三口、あれあれ飲み干

してしまわれました。天晴、見事な飲みっぷり、とはいえほとんどお酒

を召しあがらないねこさんでいらっしゃいますから、少々心配ではござ

いますが、まあ、こんな日があってもよいでしょう。

「なんだい、ねこちゃん、結構いけるじゃないの。じゃあ、今度はヴァ

イツェンをお呉れ。勿論、ねこちゃんのも、ね。

そうそう、今度出張でね、ドイツに行くんだ、どうだろうね、あっちの

ビールは。やっぱりうまいんだろうね。ほら、飲みなよ、よく眠れる

ぜ。そうだ、ねこちゃんには、ワインを買ってくるよ。

シュバルツ・ツェラー・カッツってね、黒猫のワインがあるんだ、リー

スリングは、飲みやすいからね、つい飲みすぎるんだな、これが。

あっちにしかないようなの、見繕ってくるよ。ねこちゃんは、変なとこ

ろで神経質だから、いけない、酒も飲まないときてる。ここに来るとき

くらい気を緩めていいんでないの」

ねこさんは、聞いているのかいないのか、ヴァイツェンもくぴくぴ、と

お飲みになってしまわれました。自分が、何を飲んでらしゃるのか、ご

存知なのでしょうか。

「ねこちゃん、今日は、おごるよ。じゃんじゃん飲ってくれ。ええと、

リープフラウミルヒをもらおうかな。聖母の乳・・・丁度いいや、ぐっ

すり寝かせてくれるぜ。ドイツさんには、いつもお世話になってるから

な、いい雨降らせなきゃならないねぇ」

くじらさんは、だいぶ御陽気に、次第に饒舌になってまいりました。

そうそう、くじらさんのご職業は、雨を降らすこと、なので御座いま

す。アメダスに映し出されるあの雨の降っている地域の水色はくじらさ

んの影であるともいえるのです。くじらさんは飛べるのですね。とは言

っても、実際わたくしどもには、見ることは出来ません。なんでも5歳

くらいまでは見えるらしいのです。残念ながら、わたくしは、記憶が残

っておりません、悲しいことです。

くじらさんは、梅雨どきには日本に戻るのですが、それ意外は巨体を買

われて東南アジアの方に長期滞在することが多いそうなので、今回の

ドイツ行きはうれしくて仕様がないようでございます。太平洋生まれの

くじらさんは欧州には、特別の思い入れが、まだ見ぬものへの憧憬が

あるのでしょう。子供のように目をしばたかせていらしゃいます。

さりげなく、聞えてくるのは、「ピアノソナタ14番月光」

グレングールドのような自由な解釈、眠りを誘うような緩いテンポ、く

じらさんの憧れはふくらみ、ねこさんは空になったワイングラス片手に

うつらうつら。
                             (続)






さて、と

2004-07-30 14:50:50 | 
リラックス、・・・リラックス。
なんて自分に言い聞かせてる時点で、何だか危ういよな。
気の小さい僕は、いつもドキドキしている、汗が出てくる、手にも額 にも光る。お腹が痛くなってきた。うー。
どうしよう・・・。
ああ、でも仕方ないな。なるようになれ、なるようになる、きっと。
時間よ、過ぎてしまえ。なんとか、やり過ごすんだ。


こんな子でした。
今は、だいぶ図太くなって、鈍感になりました。
時間も大切に思うようにもなりました。
明日とも知れぬ、命・・・。

さてと、ちょっと今から、頑張ってみます。