旅日記

旅の記録と紀行文を紹介する事でしょう。
写真は私が撮影したものを使用しています。

今年一番長かった列車の旅 鹿児島

2004-11-13 09:12:14 | 列車の旅
鹿児島から望む桜島 (鹿児島県鹿児島市)

12時53分に西鹿児島にL特急「つばめ5号」で到着。鹿児島市には鹿児島という駅もある。港に近く、かつてはそちらが鹿児島の玄関口であったが、戦後の都市計画により西鹿児島付近が整備され、昭和40年代には全ての優等列車が西鹿児島始発・終着となったという。ブルートレイン・ブームの頃、日本一長い運転区間(東京-下関-小倉-大分-宮崎-西鹿児島)・日本一長い所要時間(24時間超)だった寝台特急「富士」と、同じく寝台特急「はやぶさ」(熊本経由、24時間は超えず)の終着が、この西鹿児島である。早朝に実家の近くの山陽本線を走行する「富士」のサインボードにある「西鹿児島」の文字を目で追っていたものである。いまでは「富士」も「はやぶさ」も鹿児島県には来ない。

すっかり新しくなった駅舎を出ると、市電が街を走っている。これに乗っても良いが、昼食にラーメンを食べたい。平成元年(1989)に初めての鹿児島でラーメンを食べたのが和田屋という店である。天文館にあった記憶がある。そこまで電車通りを歩いて行こうと思う。途中、家電量販店に「歳末セール」とある。まだ歳末ではないと思うが、11月下旬とは思えない暖かさである。「歳末」の文字に似つかわしくない。道ゆく人には半袖の人もいる。1月下旬の Los Angeles, CA も暖かかったので思い出す。LA ではバスには軽く冷房が入っていた。南カリフォルニア恐るべし。しかし、ここ鹿児島には襟巻きをしたのや、毛糸の帽子をかぶったのもいる。ファッションなのだろうが、ご苦労な事である。南九州恐るべし。和田屋ではなくはなまるうどんを見つける。冷たいうどんが美味そうだが、薩摩まで来て讃岐うどんもどうかと思い、先を急いで天文館に着いた。

天文館とは鹿児島の繁華街で、安永8年(1779)に薩摩藩が天文観測所「明時館」を設置した事に由来する。天文館のアーケードを歩き回る。15年前のことなので「和田屋」の場所がわからない。場所を示した地図も持っていない。やむなく、他のラーメン店に入る。カウンターに座ると、食券制の店だったので、席を立ち、自動販売機で食券を購入して再び席に着いた。すかさず店員が急須とプラスチック容器に漬物が入ったものを持ってくる。そうだった。和田屋でも注文するとお茶と漬物が供される。出来あがるまでそれを頂戴する。鹿児島のラーメン店では当たり前なのだろう。よいサービスである。蕎麦屋等、他の飲食店は入った事がないので知らない。このラーメン店は胡瓜の浅漬け等だった。味は格別ではない。急須からいれるお茶は嬉しい。給茶器?の作り置きのお茶よりおいしい。ライス(なぜご飯といわない?)を注文している人もいる。ラーメンライスに漬物はよかろう。ラーメンの味は格別でない。ここではビールを飲まなかった。車中で一盞したから、今飲んでみてもビールの味は格別ではないだろう。

山形屋という百貨店のショーウィンドーに Evergreen Christmas の文字がある。南国にふさわしいではないか。実際、 White Christmas になる街は日本では北の方だけだろう。電車通りに別れを告げ、海の方へ歩く。目の前に桜島が迫ってくる。天気は快晴である。申し分ない。海に面した公園では写真屋がこれから結婚を控えたと思われるカップルを桜島背景で撮影している。鹿児島では定番なのか。この天気なら写真の出来もよかろうと思う。 (つづく)


今年一番長かった列車の旅 「つばめ5号」→西鹿児島

2004-11-12 19:07:29 | 列車の旅
鹿児島本線 西鹿児島駅 (鹿児島県鹿児島市)

製紙工場を大きく迂回して八代10時43分着。博多から154.1キロ、西鹿児島までは163.0キロ。凡そ中間地点だが、ここまで1時間38分で到達しているのに対し、これから2時間10分を要するのだ。その訳はすぐ分かる。これまで筑後平野など快走してきた「つばめ」だが、鹿児島本線は複線から単線となり、左は山、右は海、よく線路を敷設したものだと感心するような箇所を走って行く。海の向こうは天草か。新幹線は新八代~鹿児島中央間を35分で結ぶそうだが、こんな景色は拝めない。この列車に乗りに来て本当によかったと思う。植生が変わったのか九州北部と違って南国的な感じがする。台湾に来たような気がした。ちなみに台湾へは香港への途中、航空機を乗り換えただけで入境しておらず、飛行場しか知らない。

後の席の客は車内販売のワゴンが来た時、飲み物は無料であるにも関わらず、「商売してくださいよ」と言って、金を払ってジュースを頼んでいる。グリーン車内でお行儀を良くしているのも限界である。私はそのワゴンを止め、ヱビスとミックスナッツを購入した。もう鹿児島でのお昼はどうでもよい。ちょっと贅沢なビールをちょっと贅沢な車内で飲む。実に美味い。列車はいよいよ鹿児島県へ。途中で開業前の新幹線と何度か交差する。トンネルが多いようである。この車窓を楽しむ時間は新幹線では持てないようだ。ちなみに今走っている鹿児島本線のうち、八代~川内間は新幹線開業後は廃止となり、第3セクターの肥薩おれんじ鉄道が路線を引き継ぐ。ここは電化されているのだが、同社は気動車を新造しており、川内でホームの向かいに停車しているのを見た。経営は大変厳しそうだ。それにしても景色が良い。東シナ海を見ながら列車は走る。

すっかり寂しくなったグリーン車内であったが、途中駅から一人乗車してきて、3名となった。近距離でも利用する人がいるものだと感心したが、100キロ以下ではグリーン車と普通車指定席との差額は700円。飲み物付きで30分くつろげるのなら、とか考えるあたりが貧乏性である。結局、グリーン車は最大4名(最小2名)の客を乗せ、薩摩鹿児島のターミナル駅、西鹿児島へ12時53分到着した。つばめレディはグリーン車の乗降口から下車する普通車の客にも丁寧に頭を下げて見送っている。好感が持てるが、グリーン車の客3名だけでは手持ち無沙汰であろう。ホームの上には以前なかった新幹線の高架線があった。

改札口へ行くと、なんと自動改札である。これには驚いた。有人の改札で「つばめ5号」の切符を手元に残す為に無効の印をもらう。実際には「乗車記念 使用済」の印であった。駅舎は新幹線ホームの下であり、真新しい。試運転中の車両は見られなかったが、駅は新幹線開業を心待ちにしているかのようである。コインロッカーに荷物を預け、身軽になって駅の外に出てみる。暖かい。天気もよいのだが、11月下旬とは思えない。春のようである。久しぶりの鹿児島であり、駅舎も変わっているので勝手が分からない。とりあえずは天文館を目指して歩き出した。 (つづく)


今年一番長かった列車の旅 博多→「つばめ5号」

2004-11-11 20:10:04 | 列車の旅
L特急「つばめ5号」 (西鹿児島)

9時05分の定刻より遅れて、L特急「つばめ5号」(列車番号5M)は博多を発車した。グリーン車の乗降口で乗客をうやうやしく迎えていた客室乗務員「つばめレディ」が切符の検札かたがた飲み物の注文を取りにくる。JR九州のグリーン車ではサービスとして飲み物が提供される。グリーン車付きの乗務員のいない列車でも車内販売員が飲み物を提供する。サービスであるから代金は要らない。残念であるが酒類はこのサービス外であって代金を支払わねばならない。コーヒーを注文した。私の後ろの席の客は弁当を注文しているようである。今朝は5時半に食べてきたので腹は減っていないが、汽車に乗るとなんだか食べたい気もする。

「つばめ」のグリーン車の座席は「ひかりレールスター」指定席と同等だと思うが、スリッパやフットレストもあり、絨毯敷きで落ち着いた印象である。ただし在来線を一生懸命に高速運転しているのでよく揺れる。やはり新幹線の方が乗り心地は良い。「ひかりレールスター」指定席が普通車としては座席が良すぎるので、これと比べるべきではないのかもしれない。おしぼりとコーヒーを持ってきてくれたが、揺れが気になり、なかなか飲めない。

さらに「つばめレディ」が新聞や雑誌を持ってきてくれる。飲み物のサービスといい、これも航空機と同じか。航空機の場合、常に窓の外を見ている事はないから、それでも良いのだが、鉄道の場合、明るいうちは私は車窓を眺めるのに忙しい。新聞や雑誌なぞ読んでいる場合ではないのだが、せっかくなので週刊誌を手に取り、東海林さだお氏のコラムや磯野貴理子結婚の記事に目を通す。

列車は福岡県から佐賀県、また福岡県そして熊本県へと入った。車窓に有明海が見えてきた。田原坂を通過して行く。そういえば九州では原を「はる」と発音する地名をよく目にする。前原(まえばる)、中原(なかばる)、もう知らない。後の席の弁当を食べた客が車内販売でビールを買っている。お昼にビールを飲もうと思っているので我慢する。熊本に10時20分着。博多と熊本の間は思ったより近い。少ないグリーン車の客が更に少なくなって10時22分に発車。

八代が近づくと辺りを見まわす。九州新幹線を捜しているのだ。今走っている鹿児島本線から複線電化の新線が右へと分かれ、高架線へと上がっていく。その高架線こそ九州新幹線であって、当初スーパー特急(新幹線の路盤だけど在来線が高速走行する方式だったか?)で建設されていたから、新幹線ホームに直接乗り入れるのだ。新幹線と在来線との乗り継ぎで階段や長い通路を歩く必要はない。新幹線と在来線との交差地点に在来線の新八代(仮称)の短いプラットフォームが、その向こうに立派な新幹線の駅舎が見える。来年3月13日の開業が近い事をうかがわせる。結局、新八代(仮称)~鹿児島中央(現西鹿児島)間は標準軌新線で建設され800系新幹線「つばめ」が登場するのだが、中途半端なスーパー特急など作らなくて良かった。

中途半端な新幹線としてスーパー特急のほかにミニ新幹線というのがあるが、これはJR東日本で山形新幹線、秋田新幹線として営業している。新幹線といっても小さい造りの車両が在来線に乗り入れているだけであって、新幹線でもなんでもない。まあ、高速バスが高速道路から一般道に入っても高速バスでいいか、という程度で新幹線というのなら構わない。しかし、北陸新幹線(高崎~長野間)、東北新幹線(盛岡~八戸間)はミニ新幹線の計画を止め、フル規格の標準軌新線での開業となった。九州新幹線もそのクチだろう。おかげで新青森~東京~新大阪~博多~鹿児島中央の新幹線ネットワークも完成が見えてきた。 (つづく)


今年一番長かった列車の旅 徳山→博多

2004-11-10 09:56:48 | 列車の旅
鹿児島本線 博多駅 (福岡市博多区)

次の「ひかり341号」(列車番号341A)を利用しても時間に余裕があるのだが、「こだま543号」にこだわった。それは、使用される車両が「700系ひかりレールスター」のものであること、8両編成のうち8号車以外は自由席となることの2点。新幹線の普通車は2列・3列のシートが標準で、0系や100系はリニューアルした時に2列・2列のシートにして居住性を高めているけれども、「700系ひかりレールスター」は新車の時から指定席となる4~8号車は2列・2列でゆったりしたつくりである。私は新大阪以西でしか運転されていないレールスターに乗るため、東京~広島間の利用であっても新大阪で乗換えをするほどである。それが「こだま」として運転しているのである。そして「ひかり」なら指定席の4~7号車も「こだま」は自由席。同じ自由席特急料金を払って1~3号車の2列・3列の窮屈なシートに座る客は、この事情を知っているのだろうか。グリーン車並のゆったりとしたシートでくつろぐ。この車両が東京まで行けば素晴らしいが、定員の少ないレールスターをJR東海が乗り入れさせるのは難しいだろう。新山口でかなりの客が下車。広島から出張か単身赴任であろうか。伝統ある小郡の駅名を新山口としたのは、どうも納得がゆかない。

山口県内で最も新しい厚狭を発車すると次は新下関。私が営業運転で昭和50年(1975)に初めて新幹線に乗ったのが新岩国からこの新下関までである。試乗では同年2月に広島~岡山間で乗っている。当時と比べて、今の新幹線の方が速いのだが、景色は逆にゆっくりと見える。当時の時速200キロは驚くというより想像も及ばなかった。

通勤客で混んでくる。駅を出ると新関門トンネル。毎日、新幹線で海底トンネルを抜けて通勤しているのだろう。九州へ入って小倉。もう空席はない。8時23分に終着の博多に着いた。あっという間で、九州に来た実感がない。

JR西日本の改札(有人)から途中下車をしたものの博多に用もないので、JR九州の自動改札に途中下車した乗車券、特急券・グリーン券を投入して再入場する。JR九州の自動改札は途中下車した乗車券で再入場できるのだ(JR西日本は不可)。自動改札で途中下車も可能か試せばよかった(JR東海は不可)。ちなみにJR東日本は途中下車も再入場も可能なのでよく利用している。グリーン車に乗るのかと思われたかも知れない。グリーン車か普通車かで迷ったのだが、JR九州のグリーン車のサービスには定評があること、本州内より安い料金設定であることから利用を決めた。何しろ列車に乗るのが目的で、鹿児島に用はない。少し贅沢をする。

ホームに出て列車を待つ。一段高いところに新幹線ホームが見える。九州新幹線は部分開業(新八代-鹿児島中央)となるが、ここ博多にはつながっていない。それでも東京から博多を経て更に南へ向かう新幹線も手に届くところまできた。今日は在来線特急の走りを楽しもう。ダイヤの乱れで少し遅れて入線した列車の客室乗務員「つばめレディ」にうやうやしく迎えられグリーン車内へ乗りこむ。1列・2列のシート。もちろん1人掛けの席で海側である。個室を除くグリーン車の20席のうち4席が客でうまって、L特急「つばめ5号」(列車番号5M)は9時05分の定刻より5分程度の遅れで西鹿児島に向けて発車した。 (つづく)


今年一番長かった列車の旅 岩国→徳山

2004-11-09 21:22:05 | 列車の旅
東海道・山陽新幹線 徳山駅 (山口県周南市)

平成15年11月25日火曜日。夜も明けぬ岩国駅。新松戸-西鹿児島間の往復乗車券を手に鹿児島への旅が始まる。来春、九州新幹線新八代(仮称)~鹿児島中央(現西鹿児島)間が開業するが、これに伴い廃止となる鹿児島本線八代~川内間を特急列車で通ってみようと思う。鹿児島には用はない。列車に乗るだけの旅である。

今から乗る山陽本線普通(列車番号527M)新山口(旧小郡)行は岩国始発で、寝台特急「はやぶさ」(列車番号3)東京発熊本行(寝台特急「さくら」併結)の5時57分の発車の後、6時05分に発車となるが、6時を過ぎても「はやぶさ」「さくら」が来ない。岩国で先行させないと、新山口行が途中駅で特急を先行させ、列車の遅延となることも考えられる。この後の徳山では、乗換え時間が5分しかない。遅れてもらっては困る。車掌に接続するかを尋ねるが、保証は出来ないようだ。結局、特急の姿を見ぬまま定刻に発車。

列車は海沿いを走る。外は夜の闇の中で車窓は楽しめない。下りの一番列車だが、乗客は少ない。柳井あたりから明るくなり、通勤の乗客で徐々に混み合ってきた。徳山に定刻の7時12分着。心配していた乗り換えも問題ない。在来線ホームから階段を上り、新幹線ホームへ。用を足したいが5分では無理である。すぐに入線してきた新幹線「こだま543号」(列車番号543A)の7号車に乗車する。進行方向窓側の席を確保。ほとんどが始発の広島からの客と思われるが、まずまずの乗車率である。さっそく車内で用を足しているうちに、7時17分の発車となった。 (つづく)