朱夏

今野敏著、新潮文庫刊
今野さんの作品の四作目です。「隠蔽捜査」もそうですが、今野さんの作品に登場する主人公は、何とも魅力的です。大沢在昌さんなどの作品の主人公も惹き付けますが、今野さんの作品では、自分の生き方への迷いを感じながら難事に対峙する姿に親近感を覚えます。いかにもありそうな日常での主人公の生き方、人生観が陳腐であったとしても、決して否定されるべきものではないものとして扱っています。
その一方で、事件の背景に、現代社会の問題を織り込んで、緻密に作品を組み立てています。娯楽作品として一級品であると思います。
樋口顕シリーズは三作あり、本作はシリーズの二作目とのこと。また楽しみな著作が増えました。
評価は４です。