陳舜臣著、集英社刊
北方謙三さんの、小説すばるに連載中の「チンギス紀」にすっかりのめり込んでしまい、毎号、読むのを楽しみにしています。
モンゴル帝国の基礎を作り上げたチンギスの物語ですが、劇画を見ているような躍動感と、登場人物の「熱」にすっかり当てられてしまいました。
作中、中国や西域の様々な人々が登場しますが、その中で技術者達が大きな働きをする様が描かれています。
チンギスが、異国の技術を活用していたことがうかがえます。
過日、モンゴル帝国の成立期に活躍した耶律楚材という人物を知りました。
金国の役人で、後にチンギスの臣下となり、帝国へ移行する為の行政機構の形成に貢献があったとのことです。
本作品では、耶律楚材の生い立ちと、後にチンギスに仕えることになった理由を、かなり掘り下げて描いています。
急速に大きくなっていくモンゴル内の権力闘争に、紙面がかなり割かれているので、肝心の楚材の功績は十分に述べられていないように感じました。
また、中心となる物語の流れを、中国の広大な地域と歴史上の事件に関連づけて説明する為に、その関連事項が沢山盛り込まれていて、焦点がぼやけているように感じました。
そのため、冗長に感じられる面がありますが、これは、中国に関する小説の一つの類型なのかもしれません。
一方で、北方さんの作品は、人物を描くことに集中しているので、容易に感情移入でき躍動感が生まれています。
それでも、耶律楚材について知ることにより、中華王朝の栄枯盛衰の裏で、官僚達が果たした役割の一端を推し量る材料が得られたように思います。
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○耶律楚材 ○陳舜臣
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評価は3です。
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