今野敏著、幻冬舎刊
樋口顕シリーズシリーズの第3巻目です。今野さんの作品の特徴は人物造形が深いことです。単に事件を追うのではなく、事件の動機や関係する人達の人生の背景までも織り込んで作品を紡ぎ出しています。例えば、主人公は、周囲の人から評価される協調性を短所として認識しており、劣等感さえ抱いています。しかし、自らの性向を変えることなく、組織の論理と何とか折り合いを付けて、ようよう自分の居場所を確保しています。この思いは、誰しもが抱くことがあるのではないでしょうか。
さて、本作はある警察官が、縁ある男にはめられて捜査情報を教えてしまうことから始まります。そこから事件が展開しますが、単なる謎解きに終わることなく、警察の体質や家族関係など、重層的に社会の有り様を描いています。そして、生きて行くことに何がしかの苦しさや悩みが付きまとうこと、そうでありながら生きる意味を探し求めて日々を重ねていることを、暖かい視線で見つめている作者のメッセージを感じます。「まぁ辛いこともあるけど、人生はそんなに悪くない」
今野さんの作品は、決して重くはないけれど、じんわりと心の中染みます。
評価は5です。
樋口顕シリーズシリーズの第3巻目です。今野さんの作品の特徴は人物造形が深いことです。単に事件を追うのではなく、事件の動機や関係する人達の人生の背景までも織り込んで作品を紡ぎ出しています。例えば、主人公は、周囲の人から評価される協調性を短所として認識しており、劣等感さえ抱いています。しかし、自らの性向を変えることなく、組織の論理と何とか折り合いを付けて、ようよう自分の居場所を確保しています。この思いは、誰しもが抱くことがあるのではないでしょうか。
さて、本作はある警察官が、縁ある男にはめられて捜査情報を教えてしまうことから始まります。そこから事件が展開しますが、単なる謎解きに終わることなく、警察の体質や家族関係など、重層的に社会の有り様を描いています。そして、生きて行くことに何がしかの苦しさや悩みが付きまとうこと、そうでありながら生きる意味を探し求めて日々を重ねていることを、暖かい視線で見つめている作者のメッセージを感じます。「まぁ辛いこともあるけど、人生はそんなに悪くない」
今野さんの作品は、決して重くはないけれど、じんわりと心の中染みます。
評価は5です。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます