読書三昧

本は一冊一冊がワンダーランド。良い本との出会いは一期一会。そんな出会いを綴ります。

旅する巨人

2009年04月23日 19時40分22秒 | ■読む
佐野眞一著、文藝春秋刊。
10年以上前、仕事で東京農業大学の教授にお目にかかりました。その先生の恩師が宮本常一氏でした。その後も、折に触れ宮本氏の名前を散見し、宮本氏への関心が高まりました。そんなおり、佐野眞一さんの「旅する巨人─宮本常一と渋沢敬三」が大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した、とのことから、本書を読みました。
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URL => http://ja.wikipedia.org/wiki/佐野眞一
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本書は、宮本氏と、氏のパトロンであった渋沢敬三氏を取り上げ、両氏の生い立ちを丹念に描き、そこから後の来し方を紐解いてゆきます。その生き方の美しさは誠にあっぱれです。本書が取り上げているのは、両氏が共通して抱えていた女性問題などには深入りしておらず、片手落ち、との見方もあるでしょうが、人に秀でた業績に光を当てているとしても、その歩みは孤独で険しい道筋を辿っており、生中なことでは歩き通すことができなかった道で、素直に評価すべきものでしょう。
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URL => http://ja.wikipedia.org/wiki/宮本常一
     http://www.towatown.jp/database/
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本書の最終章「長い道」で、著者は以下のように問うています。
『渋沢敬三が開き、宮本常一が歩いた道は、いまもわれわれの前に広がっているだろうか。そして、われわれは次代が歩く道を準備して、その道を歩いているだろうか。』
更に、後書きで、次のごとく述べています。
『日本人はついこの間まで、経済成長こそ自己拡大と信じて疑わず、ひた走りに走ってきた。だが、バブル経済の崩壊で元も子もなくし、日本人の胸にはいま、虚ろな空洞だけが広がっている。それだけに二人が歩いた日本の村々の急速な解体と、大衆と呼ばれるようになった庶民のたしなみの目をおおいたくなる劣化に思いをいたすとき、いまにも、ふいに胸をえぐられるような思いにとらわれてならない。』
著者が本書で求めた真実が、上記の文章に表れていると思います。
素晴らしい著作でしたが、巻末の主要参考文献一覧を見て圧倒されました。これほどの文献の量が「主要」なのであってすべてではない。しかも、これらを読み解いて、本書を書かれたとは・・・。感動の登場人物であり著作でありました。
評価は5です。

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