大竹文雄ブログよりスピード競争をする漁師という記事だ。
問題 あなたが漁師だったとしよう。一定の労働時間で、最大の所得を得るにはどのように働くべきだろうか。
(1) 毎日決まった時間に漁に出て、決まった時間漁をする。
(2) 魚が多く取れそうな天候の日に長時間漁をして、そうでない日は他のことをする。
(3) 魚が少ない日に集中的に漁をする。
(4) 誰よりも早く漁をして魚がいなくなるまでがんばる・・・(1)と(2)を比較して、同じ総労働時間なら(2)の方が漁獲量が高くなる・・・。(3)は、魚がいない日に集中的に働くというのは、(2)とは全く反対の戦略で、明らかに漁獲量は最低になるはずだ。しかし、所得が最低になるかどうかはわからない。なぜなら、漁獲量が多い日は魚の値段が下がるという効果もあるからだ。魚が取れない日は、一匹あたりの魚の値段が上がる。不漁の時は、時間当たりの漁獲高が減るかもしれないが、一匹当たりの値段が高いときに魚をとると時間当たりの所得は高くなるかもしれない。実は、上の4つの選択肢には、正しい戦略が書かれていない。時間当たりの所得が高い日に長時間漁をすることが、所得最大化行動なのだ。・・・
(4)の戦略は、どのように考えるべきだろうか。・・・なぜ、日本の漁師はこのような行動をとるのだろうか。それは、漁業では獲れるだけ魚を獲ってもいいのではなく、漁業資源を守るための規制が存在するからだ。具体的には、魚種ごとにTAC(総漁獲可能量)が決められて資源管理が行われている。日本の沿岸漁業では、オリンピック方式という資源管理が行われている。オリンピック方式では、漁期と漁獲量の上限が決められているだけである。漁民は、漁期がはじまると一斉に漁をはじめ、漁獲枠が一杯になると漁期が終わるのである。正に、オリンピックと同様、漁獲競争をして、一番早く一番多くとったものが最大の所得を得られる仕組みだ。ゆっくりしていては、魚をとらないうちに漁期が終わってしまう。みんなが一斉に魚を獲ると値段が下がることがわかっていても、漁師は誰よりも早く漁場にいくことを目指し、漁期の最初に集中して取るのである。そのために、船の本体がぼろぼろなのに、スピード狂のように高性能エンジンを積み、GPSを装備するのだ。スピードさえ落とせば、原油の値段が上がっても十分に、漁をすることができるという。
かなり爆笑な内容だが、いわゆる共有地の悲劇というやつだ。そもそも漁業は、海という誰もが利用できる場所で、誰の所有物でもない海産物を取ってきた。そうすると、未来のことや他の人のことを考えずに取れるだけ取ることがその人の利益となる。結果として、現在世界中で漁獲量が減り、海の資源の減少が問題になっている。
その対策として、魚資源の管理が行われいる訳だが、そのやり方が悪くて管理されている中で漁獲競争が行われ共有地の悲劇が発生してしまっているというのが記事の内容だ。これをなくすには大竹文雄氏も指摘しているように数量割り当て等を行えばいいのだが、そのように変更する改革が行えずにこうなっているらしい。信じがたいような話だ。