株式投資において手数料の低いインデックス投信による長期投資をいつも進めている山崎元氏、株式市場の市場平均に対する勝ち負けはゼロサムゲームだから運用は平均でいいことにして手数料の安さで資産を出来る限り増やそうというアドバイスは的確だ。山崎氏のような良心的な投資アドバイスをする人が増えるといいなと思う。ところで、今日は読売新聞の山崎氏のコラムで気になったところがあったので取り上げる。
まず、「広く分散された株式ポートフォリオに投資していた場合には、一九二六年から二〇〇五年までの期間を通じて年平均一〇.五%という高いリターンを上げることができたのである」と説明し、次に、投資期間が1年間の場合「典型的な株式ポートフォリオのリターンは、ある年には五二%を超えたかと思えば、ある年には二六%以上ものマイナスになっていたりする」と述べる。
そして、「もし二五年間株式を持ち続けられるなら話は全然違ってくる。どの二五年間をとるかによって多少の違いはあるかも知れないが、その差は大きくない」「もし一九五〇年以降、株式投資にとって最悪だった二五年をとったとしても、年平均リターンは(筆者注:平均リターンの一〇.五%よりも)三%ポイント低かっただけである」と続く。さらに、「この平均値からの年々の実際得られるリターンのぶれは投資期間に比例して小さくなり、二五年になると、上に六.七%、下に二.六%にせばまるのだ」という。
以上のデータから、リスクは投資期間に依存し、「投資対象を保有し続けられる期間が長ければ長いほど、ポートフォリオに占める株式の割合を高めるべきなのだ」とマルキールは説明する。読者はこの説明に、説得されるだろうか。
マルキールのデータを使って、簡単な計算をやってみよう。投資の元本を100として、株式に投資した場合、1年後の運用資産額の最大額は過去最高のリターンが52.62%なので152.62であり、最少額はマイナス26.47%という年があって73.53になる。その差は79.09だ。
次に、25年の保有期間の場合を計算すると、最大の場合の年率リターンは17.24%で、最低の場合は7.94%だ。1.1724の25乗と1.0794の25乗を計算すると、最高額は5332、最低額は675だ(端数は四捨五入)。両者の差は4657にもなる。複利の計算の実感が湧かないかも知れないが、表計算ソフトなどを使って確認してみて欲しい。ちなみに、10.5%で25年間資産を増やし続けると100の資産が1214になる。元本の675%は十分満足すべき結果だが、投資した結果の資産額のバラツキが時間と共に拡大していることは明らかだ。
上にあるように、一年の場合は73.53から152.62、25年間の場合は675から5332と期間が長くなるとリターンが最大の場合と最小の場合との差が拡大する。それも、差の資産量が拡大するだけでなく、資産差の倍率も約2倍から約8倍へと拡大している。したがって、投資した資産自体のリスクは期間と共に拡大すると考えていいだろう。
そして、マンキールが「投資対象を保有し続けられる期間が長ければ長いほど、ポートフォリオに占める株式の割合を高めるべきなのだ」と主張している部分だがこれは債券投資と比べた場合の株式投資のリスクについて言っているのではないだろうか。投資期間が長くなれば長くなるほど、株式投資の平均利回りが債権投資の利回りを下回るリスクが低下するということではないだろうか。
上にあるように、投資期間が長期化するとリターンの利率の平均値からのブレが縮小し狭い範囲に収まるようになる。そうすると、そうすると債権投資の利回りを下回る確率は基本的に低下するだろう。長期債権の利率は基本的に短期債権よりも高いので総合的なリスクを含めたリターンのメリットは断定的には言えないかもしれないが、長期債権と短期債権の利回りの差がそこまで大きくなく、株式投資のリスクプレミアムが5パーセントほどであることを考えると、長期投資において株式投資の債券投資に対するリスクは大きく低下し、リスクプレミアムを含めた評価においても株式投資のメリットが増していくのではないだろうか。だから、マンキールがいうように、「投資対象を保有し続けられる期間が長ければ長いほど、ポートフォリオに占める株式の割合を高めるべきなのだ」ということが成り立つのではないだろうか。
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