労働問題中心、ブログで成果主義に関する記事が出てたので便乗して一言述べてみたいと思う。まず第一に、日本の成果主義と欧米の成果主義ではそもそも全然違うという事実がある。日本の成果主義においては導入時の成り行き及び法制度の関係から、成果によって報酬を決定する制度にならなかった。日本の成果主義においては、成果によって年収の上昇速度が変化する制度として導入された。
どう違うかというと、成果によって報酬が決まる場合は成果=報酬である。当然のことながら、同じだけの成果を上げた人には同じだけの報酬を支払うのが当然である。しかし、日本においてはもうすでに昇給してしまっている中高年層の賃金水準を下げることが許されなかったため、成果によって報酬が上下するのではなく上昇率のみが変化する制度にせざるを得なかった。さらに、成果主義が導入される過程で賃金上昇に対して厳しい査定が行われたため若者の賃金上昇率は抑えられることになった。結果、おかしなことに成果主義の結果、最も高賃金でありながら成果を上げてない中高年の年収が高止まりしつつ、成果を上げている若者の収入が抑えられるということが起こった。
さらに、現在の日本においては解雇が出来ず、一度上がってしまった賃金水準を下げることが出来ないので、中高年の高年収は維持され雇用も保護されることになった。また、他の正社員も雇用は保護されることになった。成果主義の目的の第一は成果と報酬を連動させることによって生産性を上げることと同時に、雇用を流動化させることがある。しかし、日本においては雇用の流動化が行われなかったので結果として既得権を持つ階層はその地位に安住し努力しようとせず生産性が向上しなかった。逆に、下層の労働者はそのしわ寄せを受けて所得が低下することになった。
つまり、成果主義として導入された制度が解雇や減俸を認めず、昇給のみを変動することを許す制度であったために、結果として成果に対して最も報酬が多い階層が保護され、成果に対して報酬の少ない階層の収入の低下が起こった。ようするに、成果主義といいつつ、その目的とは逆のことが発生した。そのため、日本における成果主義の失敗は成果主義が失敗したというより、成果主義とはまったく異質な、ほとんど逆とも言える制度が失敗したというべきなのである。