車輪を再発見する人のブログ

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見えざる手

2008年11月30日 | 経済学
今日は市場ってどんなんだろうって話。市場経済や市場競争の議論でよく言われることに、競争を促進したりすると、弱肉強食の社会になって格差が発生するという、主張がよくあるよね。

でも、経済学の市場や競争の本来の議論からしたら、実は市場や競争は平等をもたらす物かもって言ったら驚くだろうか。しかし、元々は規制が市場の機能を損ねているために価格が高くなりすぎたり、物が不足したりするから、規制を撤廃して市場の機能、つまりアダムスミスの「見えざる手」に任せたほうがいいんじゃないかってのが始まりなんだよね。

たとえば、とある国でで穀物の輸出入を禁止していたとする。そうしたら、国内で穀物が不足したら当然価格が高騰するだろう。でも、貿易が自由にできたらどうだろ、他の国から穀物が輸入されることによって価格が低下するだろう。逆に、国内で穀物ができ過ぎた時は輸出できないと価格が大きく下がるよね。今でも豊作貧乏って言葉が使われることがあるけどでき過ぎて困ることもあるんだ。でもそのとき、輸出できたら価格の低下が抑えられるよね。

こういう風に、市場が開かれていると価格の低い場所から高い場所に、商品が移動して価格の変動が抑えられるんだ。消費者にとっても必要な商品が手に入るようになって助かる。市場には、このような需要と供給のミスマッチを修正する機能がある。

これは、商品の輸出入以外のことについても言えて、労働の移動や、どのような産業に進出するか、何を生産するかとか、価格が高いところ、儲かりそうなとことに人は移動するよね。そうすれば、人手不足で人件費が上がってきてる産業は助かるし、雇ってもらった人も賃金が高くてうれしいだろう。供給不足で値段が高止まりしてた商品が値下がりするかもしれないし、ほしいのに手ごろな値段で売ってなかったお洒落なデザインのバッグを見つけて得をするかもしれない。生産したほうも、売れたら大喜びだよね。

こうなったら、元からいた人たちは賃金が下がって、利益も減ることになるから不満かもしれないけど、市場経済ってのはこうやって儲かるところ供給が不足しているところに、新規参入が発生することによって価格や賃金が安定化するって機能があるんだ。

だから、規制によって流通を統制するよりも、市場に任せて需要と供給によって決めるほうが、供給不足なものは新規参入が起こるだろうし、供給過剰だと撤退が起こるだろうから、この市場の機能によって自然と適切な価格(アダムスミスの言う自然価格)と労働や資本他の資源の分配が達成されることを期待したほうが良いんじゃないだろうかってのが、市場経済が支持される理由なんだね。

したがって、市場の最初の重要な役割は価格を安定化させること、消費者が求めている商品を低価格で供給すること、労働者の産業間の自然な移動の力によって産業間の賃金格差を縮めること、によって、経済を安定化させることなんだね。これは、消費者にとっても労働者にとってもいいことだし、この過程で市場ってのは格差を拡大するというより、むしろ格差を縮小する方向に働くはずのものなんだね。だから、ちゃんとした自由な市場の力で高い生産性と平等な社会を築くことが可能じゃないかと私は考えている。

次は、なぜ市場と格差の話が出てきたのかを述べる予定。ではまたね。

生産性論争

2008年11月29日 | 経済学
最初の記事がこれというのも何なんですが説明しときたいので。

池田氏山形氏との生産性に関する論争ですが、池田氏は賃金は労働の限界生産性によって決まると主張し、山形氏は絶対的な生産性ではなく平均的な生産性が賃金水準を決めるとしている。この議論に分裂氏workhorse氏小飼氏等が参加してきていますが、説明のピントが少しずれているのでわからない人も多いと思う。

結論から言うと山形ブログの「経済学者3人にきいてみました。」が一番簡潔な説明なのだが、これでは理解できない人もいると思うので説明しよう。

ポイント1 生産性

山形氏の平均生産性と池田氏の限界生産性で対立しているわけだが、細かいことを言えば限界生産性と生産性の違いなど色々あるのだが、ここで一番重要なのは山形氏の平均生産性・絶対生産性は生産量なのに対して、池田氏の限界生産性は生産される量ではなく価値を表しているということだ。

限界生産性の価値というのは、生産しているものの価格に限界生産量を書けたものである。つまり、限界生産量(これは絶対的な生産性に大きく影響を受ける)だけでなく、何を生産しているかにも大きく影響されるし、生産しているものの価格の変化にも影響を受けるんだ。表現を変えれば、生産しているものの交換価値が重要なんだ。

ポイント2 生産物の価格

生産性が上昇すると、実はそれによって価格も影響を受けるんだ。生産性があがれば、低コストで生産できるようになるから利潤が増える。そうしたら、利潤を求めて新規参入や増産が起こるだろう。結果として価格が低下する。当然、限界生産性も低下する。だから、絶対的な生産性があがったとしても、必ずしも限界生産性が急上昇する訳ではないんだ。

これに、労働の需給も絡んでくる。当然、賃金の高い産業に移動が起こる。だから、社会全体の賃金は労働の移動に伴って平準化することになる。そして、人手が減った産業の製品は供給不足になり値上がりする。こうやって、生産物の価格と賃金が変化することによって市場はある産業における生産性の上昇に対処するんだ。

結論

個々の賃金は限界生産性の価値によって決まるが、限界生産性の価値自体が生産物の価格の影響を受けるため、生産物の価格が限界生産性の価値を国内で一定化する方向で、動くためにその国の賃金水準は平均的な生産性の影響を強く受ける。決して、絶対的な生産性自体によって賃金が決まるのではない。

3人の経済学者が相対価格とか言ってるのは生産される財の価格が変化するってことなのね。

だから結論としては、生産性が高いから賃金が高いって訳ではないんだ。生産性も要因の一つかもしれないがそれ以外の要素もあるわけだ。逆に言うと、そこが大きな問題なんだ。

小飼氏は消費性って言葉でそれを表現しようとしてるけど、賃金が高いのは生産性が高いんじゃなくて作ってる財の価格が高いだけってことがあるんだ。テレビ局の社員ならどんなくだらない番組を作ってても、作ってる財の価格が高いから賃金が高くなるんだ。

これは、日本の製造業の賃金が他の産業より低いってことにも関係してくることだ。財の価格が限界生産性に影響するために生産性が高くても、競争が激しく価格が下がり続けるから賃金が相対的に低いんだ。逆に、生産性の低い保護されている産業が高賃金になっているんだ。

だから、日本が抱えている一番の問題は池田氏はノンワーキングリッチという言葉で表現しているけど、生産性の低い人たちが保護されて高賃金であることなんだ。そして、生産性が低くても生産性の財の価格が高くありすれば高賃金になるために努力が間違った方向に向けられていることなんだ。そして守られている者とそれ以外との格差が拡がっていることなんだ。

だから、逆に今の日本の問題は格差が存在するために経済が停滞しているともいえるんだ。本来なら、生産性の低い・高賃金の産業には次々と新規参入が起こって賃金が低下すると同時に生産性が上がらないといけないんだ。でも、強いものは保護されているために競争が起こらないんだ。結果として、強い格差が発生すると同時に生産性が停滞している。

今日はこの辺で。