
ぼやくでもなく、誰かを責める気も、誰かに訴える気もありません。
しかし間違いなく、大事なものなのにいつの間にか私達が失くしてしまったもの
があります。
夜空に輝く満天の星、天の川、もその内の一つです。
私は高校卒まで東海道沿いの中規模の工業都市で育ちました。
市内には造船関連の工場も多く、それほど自然が一杯というわけでもありません。
それでも、晴れた日の夜などは夜空一杯に広がる星の数々が、ごく普通でした。
天の川などはありふれた自然現象の一部として、わざわざ夜空を見上げて
立ち止まる人もないほどでした。
今思うとちょっと可笑しいのだけれど、我が家では過ごし易い季節になると、
晴れた日の夜は全員が夕食後、屋外にムシロを敷いてゴロゴロ寝転がって
星空を見たものでした。
少年の私はそのうちにウトウトしてきて、星空を見ながら気持ちの良い眠りに
落ちてしまうことが多かったような記憶があります。
あの時見た満天の星空、夜空を覆いつくすかのような巨大な天の川は
一体、どこへ行ってしまったのでしょうか?