すんけい ぶろぐ

雑感や書評など

ウォン・カーウァイ「2046」

2005-12-04 08:45:13 | 映画評
ウォン・カーウァイはホモだっけ?


「2046」を見ました。

ストーリーは、1960年代の香港を舞台に、売れない作家の恋愛遍歴と、その作家の作り出した世界「2046」が交互に語られるというもの。

ざっくりと話してしまうと、失ってしまった愛を忘れられない男の悲哀がメインです。
が、どうも、なぁ。同性からすると、ちょっと臭いなぁ。異性の方が、違和感なく見られるのかも。


で、日本ではキムタク様が出ているというので話題になったけど、いざ公開されてしまうと、そんなに盛り上がらなかったのでは?
ウォン・カーウァイのファンなら満足かもしれないけど、「わぁーい、今、テレビでよく宣伝している映画だ~」程度の気持ちで見に行くと、「うぅ~ん、眠い…」という状態になったのでは?

1960年代の香港となっていますが、それを想起させるような場面は少なく、「2046」の世界も、ハリウッドのようなド派手なCG満載というわけでもなく。
基本的には、ウォン・カーウァイっぽい美しい映像を見ながら、ウォン・カーウァイっぽいフニョフニョしたオシャレっぽいストーリーを堪能するという映画です。

まぁ好きな人は、好きでしょうね。


2046

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石黒昇「銀河英雄伝説外伝 白銀の谷」

2005-12-03 08:40:05 | 映画評
登場人物の若さまで妬ましい……………


「銀河英雄伝説」を漠然と見直すブームが去年の夏ごろにあって、ボォーっとアニメを見ていました。
が、ブームは途中で終わって、何本かは放置状態。

で、昨日。
せっかくの休日なのだが、特にすることもないので、見落としていた「銀河英雄伝説外伝 白銀の谷」を、久しぶりに見ました。


うん、まぁ、さほどの感想はないなぁ。
強いて探すと、ラインハルト強過ぎ。

「主人公だから仕方ないじゃん」
………その通りですけどね。


しかし、原作を読んでいたときは中高生で、あんまり違和感はなかったのだが、こうして年を取ると、ラインハルトたちの若さは異常だなぁ。

ラインハルトとヤンの二度目の会見が実現する直前に、例によってイゼルローンで会議が開かれるんですよね。そこで「この帝国からの会見の提案は、もしかすると謀略なんじゃないか?」という意見が出て、それに対してユリアンが、
「僭越ですが、僕が提督の代理としてカイザーラインハルトのもとに赴きます。そして細部まで条件やら提案やらを聞いてきて、改めて提督が会談の場にいらっしゃれば、よろしいでしょう」
って言うんですが……………。

当時は何も思いませんでしたが、こうして見てみると、ユリアン、ホントに「僭越」だな。宇宙の99%を支配している皇帝との会見に、どういう自信でもって自分が「代理」として的確だと思ったのだろうか? せめてキャゼヌルあたりを代理に勧めるべきだろうに。


「物語ですから仕方ないじゃん」
………その通りですけどね。

年をとると、ひがみっぽくなるね……………。


他の「銀英伝」の感想。
清水恵蔵「銀河英雄伝説外伝 -黄金の翼-」まぁ、こんなもんだろうなぁ


銀河英雄伝説外伝 白銀の谷

ハピネット・ピクチャーズ

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パティ・ジェンキンス「モンスター」

2005-12-01 09:02:01 | 映画評
「Dolls」の菅野美穂の演技も素晴らしかったが……………


ある共通の知人の女性について語っていたときのこと。
「娘さんが、高校に受かってね。ちゃんと通っているようだし、良かった良かった」
 高校が受かったのは良かったけど、学校に通っているのは、そんなに褒めることか? と思い、質問すると、案の定、中学ではいじめを受けていた、とのこと。
「そうなんだぁ。いろいろと大変だねぇ」
と言いつつも、いじめの対象となり易いタイプっているから、高校でいじめられなくても、仲間内に入れないで、やっぱり疎外されているんじゃないかぁ…………などと余計なことを考えたり。

が、聞いてみると、知人の娘さんに隙があっていじめられていたというよりも、その中学が荒れていて(和が母校)、生徒の管理ができていなかったことが主たる原因らしい。
特に、他の中学からたらい回しにされてきた女生徒の一人がリーダーになって、何人もの生徒を不登校に追いやったらしく、知人の娘さんというのも、その被害者らしい。

先生たちも問題は知っていたようではあるが、どうにも対処しない、というか、対処できない。

そのリーダー格の女生徒の父親というのが、ヤクザ関係者。女生徒を注意しようものなら、学校に怒鳴りこんでくる始末。

結局は、先生の力量不足ということになるのだろうが、自分が、その女生徒の担任であったすると、毅然と仕事ができる自信はないなぁ。大事にならないようにと祈りながら、息を殺して、その女生徒の卒業を待っているんじゃないなぁ…………。


話を聞き終えて、
「なるほど、かわいそうにねぇ」
と口にしましたが、そのとき「かわいそう」の対象になったのは、このいじめに関わった全ての人間に対して。

いじめを受けていた当人はもちろんのこと、それを見逃すしかなかった先生も、また大人の「悲しみ」が漂ってくる話です。
でも、一番の「かわいそう」な人は、そのいじめを行っていたリーダーでしょう(取り巻きの人間は、リーダーが不在になれば雲散霧消して、適当に世間に迎合して生きていくでしょう……………)。

どの中学でも持て余したという経歴からして、高校に入れたとは思えない。もちろん就職などもできないでしょう。
親が健在なうちは、その経済力と威勢を背景にして生きていられるでしょうが、一生庇護に頼るわけにはいかない。
まぁ器量がずば抜けていれば、それなりに生きる手立てを見つけることもできるかもしれませんが、加齢に抗し得るほどの美貌など、そうそう恵まれるものではない。

若いうちは学校に真面目に通う同世代を小馬鹿にし遊んで暮らし、二十歳を過ぎてからは街の強面として肩で風を切って歩いていることもできるかもしれませんが、さて、三十、四十となれば、地域の鼻つまみ者として、ただただ白い目で見られる人生が待っている。

怒鳴りこんでくる親を背景にして学校を支配して悦に入っているような人間であれば、とても親(の思想・生き方)から自立するような時期が来るとも思えない。
小さな暴力で世界を生きていると、いつまで経っても勘違いして生きていくであろう、その子のことを頭に浮かべると、彼女のいじめという行為を肯定するわけではありませんが、「かわいそうだなぁ」という思いを禁じえません。


まぁ、そんなことを思い出させてくれた、パティ・ジェンキンス「モンスター」。(前置きが長すぎ………)

シャーリーズ・セロンが、全米初の女性連続殺人犯アイリーン・ウォーノスを演じた映画。

シャーリーズ・セロンの特殊メイクもすごいが、それ以上に、狂気と悲しみの宿った目が素晴らしい。
「あぁこれが演技なんだな」
と圧倒されました。

売春婦として世間から蔑まれていきているアイリーンと、同性愛者ということで世界から疎外されているセルビーという二人の孤独な女性の出会いから、殺人、逮捕、裁判が、シャーリーズ・セロンの演技によって絶えることのない緊張感を伴って語られます。

「殺さなくては生きてはいけない」という一人の売春婦の悲しい人生を通して、人の「生きること」の悲しさを見事に描き切っている映画でした。


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