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雑感や書評など

松本清張「砂の器 (上)」

2005-07-07 08:46:07 | 書評
我は砂の器なり


あんまりドラマは見ないんですが、中居正広がやっていた「砂の器」は、なんとなく全部見ました。

最初は、良かったんだけどなぁ。
あまり先を急がない、ゆったりとしたテンポが嫌いではありませんでした。

が、犯人の犯行理由が徐々に明らかになっていく段階で、どうもグダグダになってきて…………。
最終的には、どうもなぁ。ちょっと無理がある過去だった。

松雪泰子の役も、あんまり活かされていたとは思えないし(しかし、松雪泰子の鼻筋は通り過ぎ。整形か? と勘ぐりたくなる)。


それでも、原作が気になっておりました。
そして、今現在、さほど読みたい本もないので、この機会に読んでみることにしました。


で、松本清張「砂の器 (上)」の感想。

シンプルだね。
ミステリーは、あんまり読まない方ですが、それでも今の作品と比べると非常にシンプルなことくらいは分かります。

凝った文体があるわけでもなく、特殊な性格をした人間が登場するわけでもなく、新鮮な設定があるわけでもなく(当時は新鮮だったのかもしれないけど)。

でも、そのシンプルは、安っぽくはないです。
個人的には、作品をサクサク読ませてくれる装置にすらなっております。

「現代人(現代文学)が忘れた大事なものが、ここにはる」
などとエコロジストみたいなことを言うつもりはありませんが、物語は、やっぱ基本が大事なんだなぁ…………。


「和賀さんの音楽って、すごく新しいんでしょう。なんですか、前衛音楽とかって……」
「そうだ、ミュージック・コンクレート(具体音楽)というんだ。今までも、それを先駆的にやった人はいる。和賀は、そこに目をつけてはじめたんだがね。どうせ、奴には、そんなことしかできない。独創というものが全然ないんだよ。他人のものをあとから割りこんで横取りする。こりやあ楽だ」
松本清張「砂の器 (上)」379頁 新潮文庫
これは、関川重雄が情婦に和賀英良に関して語った言葉。
ドラマでの関川重雄(ドラマでは関川雄介になっている。なぜ?)は武田真治で、彼もいい感じでした。原作も虚栄心の強い小心者で、野心家で嫉妬深いという、嫌な味がにじみ出ていて、とても好感度が高いです。

これから下巻で転落の人生を歩んでいくの、今から楽しみです。


砂の器〈上〉

新潮社

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