すんけい ぶろぐ

雑感や書評など

信田さよ子「依存症」

2005-01-19 19:27:27 | 書評
愛だな、愛


「オレ、いつでもタバコ止められるよ? 金がないときは吸わないし」
と言って、禁煙したことがない男性が身近にいないでしょうか(または、いませんでしたか)?
あの、はたから見ると全く根拠のない自信は、どこから発生するのでしょう?

依存症は、本人だけの問題だろうか。たとえばアルコールを飲んでいる本人が悪いのなら、本人を何とか騙して病院に閉じ込めればいい。
 だが、その人が酒をやめれば、すべて終わりなのだろうか? ハッピーエンドなのだろうか? 実はそんなシンプルな「解決」はありえないのだ。依存症は人間関係の中で生まれ、カップルの中で繁茂していく問題なのである。必ずだれかもう一人の人を巻きこんで、その人に支えられて生き長らえるのだ(信田さよ子「依存症」52頁 文春新書)

この本、「依存症」というタイトルですが、扱っているのは「アルコール依存症」のことばかりです。ちょっと看板に偽りありだぁ。まぁ、「アルコール依存症」を例にして、依存症の本質や問題点を書いているとも言えないこともないのですが。
「アルコール依存症」というタイトルでは読者が限定されて売れないから、「依存症」という広範囲に適用できるものにしたような気配が………。

文章全体は妙に自伝的で、自分の歩んできた道について、ちょっと文学チックに回想することが多いです。新書には、こういうのは、要らないんじゃないかなぁ~。

しかし、(病的な)依存というものが、得てして関係性から生まれるという話は、興味深く読めました。
ギャンブルで借金をして、「もう二度とギャンブルには手を出しません」と誓約して、親に尻拭いをしてもらっても、またギャンブルをしてしまう。悪いのは、ギャンブルが止められない馬鹿息子のように思えるけど、見ようによっては、尻拭いをしてします親が、この息子の依存症を補完してしまっているわけだ。
言い換えれば、ギャンブルに依存しているようで、それを介して他者(親と子)に、相互で依存している。

他にも、一時期流行した「アダルト・チルドレン」という言葉の解説なんかも、ためになりました。なんとなく、「未成熟の大人」というイメージを抱いていたのですが、正確には「現在の自分の生きづらさが親との関係に起因すると認めた人」(同書130頁)だそうです。


何かに頼って生きることは人の性でしょうが、そのことを客観的に見つめたいのなら、一助になる本ではないでしょうか?


依存症

文芸春秋

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