J文学って、まだ使ってる? つぅーか、誰が使ってたの?
新しいものは、必ず異質なものとして登場するものです。
違和感を伴わない新鮮さは、偽者なのかもしれません。
で、中原昌也「あらゆる場所に花束が……」。
三島賞受賞作品だそうです。
まぁ賞をとってあるから読んでみようと思ったわけじゃないのですが、新しい作家を開拓してみようかと思い、その際、「受賞作品なんだから、適当なレベルには達しているだろう」という目安にはしました。
全体は、こんな感じ。
全体に、露悪的な性、無情な暴力、意味深で意味をなさない語句が羅列しています。
ストーリーは、群像劇になっています。が、一般の群像劇であれば、多くの人間の悲喜こもごもを描こうとしますが、この小説では、たんに多種多様のグロテスクを表現するのに利用されています。
というわけで、ストーリーを重視してしまう傾向のある僕には、つらい小説でした。
簡単に言いますと、物語を憎む作家の実験小説です。
作家自身が、あとがきで、こう述べております。
で、渡部直己の解説では、こんな作者の姿勢を大喜びで褒めております。
要するに、物語(もしかすると小説自体)を憎む作家の小説と、物語(もしかすると小説自体)を憎む評論家の解説が載った本です。
その補完性からは見事な悪臭が立ち上っており、僕にとっては本編の小説以上にグロテスクな印象を受けました。
まぁねぇ。
新奇(異質)なものによって、表現の地平が広げられ、それが物語にフィードバックされて、さらなる豊潤さを生むという構図は理解しているつもりなんですけどねぇ。
どうも、ねぇ。………ついて、いけませんでした。
構造や文体よりも物語重視の人は、後書きや解説から読んで、どういう小説かを理解してから本編を読むことをお勧めします。
もっとも物語重視のタイプは、この手の本は手に触れないように思われますが………。
新しいものは、必ず異質なものとして登場するものです。
違和感を伴わない新鮮さは、偽者なのかもしれません。
で、中原昌也「あらゆる場所に花束が……」。
三島賞受賞作品だそうです。
まぁ賞をとってあるから読んでみようと思ったわけじゃないのですが、新しい作家を開拓してみようかと思い、その際、「受賞作品なんだから、適当なレベルには達しているだろう」という目安にはしました。
全体は、こんな感じ。
宇宙に発射されるべくウォーミングアップしていたロケットが何故か勢い余って、中で待機していた乗組員だけを上空八千メートルに吐き出したような喪失感。いまは、そんな混沌としたヴァーチャルな心象風景だけが信じるに足るのだ。 中原昌也「あらゆる場所に花束が……」41~42頁 新潮文庫 |
ストーリーは、群像劇になっています。が、一般の群像劇であれば、多くの人間の悲喜こもごもを描こうとしますが、この小説では、たんに多種多様のグロテスクを表現するのに利用されています。
というわけで、ストーリーを重視してしまう傾向のある僕には、つらい小説でした。
簡単に言いますと、物語を憎む作家の実験小説です。
作家自身が、あとがきで、こう述べております。
自己表現などという身勝手なものが、人が期待するほど、そんなに有り難いものなんかであるはずがない。しかも有り難いものでなければならない義務だってない。様々な感情が人の顔の種類と同じく微妙な差異で存在しているように、多様な表現が存在して然るべきなのだ。それを許さず安易な感情移入や安手の感情移入とやらだけが小説だの文学だの物語だのといって罷り通る世の中には、心から吐き気がする。怒りを覚える。 中原昌也「あらゆる場所に花束が……」164~165頁 新潮文庫 |
で、渡部直己の解説では、こんな作者の姿勢を大喜びで褒めております。
この本を閉じた後で、いったい何をしたくなるのだろうか。 学校なぞ、いますぐ止めてしまいたい? 無理もない。あれは何にもまして、人生の埓もない「真らしさ」を教え込む場所なのだから。職場の仲間を集め、或いはひとり街路に飛び出し、何かとびきり邪なことを仕掛けてみる? それが、あくまで本作の刺激であるなら、きっと良いことだと思う。すべてがバカバカしくなる? これも中原昌也の作用である限り、いずれ慶事に変わろう。こんな小説を書きたくなる?上手くいけばとても良いことだ。作者自身がそう示しているように、絶望は、他者にまっとうに反復されてこそ、さらに得難い明度を発しようから。こんな作家の存在を一刻も早く忘れ、口直しに、ちゃんと心が温まり、癒される物語に浸りたい? 損なことだ。煎じ詰めれば、それはとても損なことなのだ、というそのたった一行をめぐって長口舌をふるってきた者としては、この種の読者が今後にわたり激減する事態を願うのみであり、事態を促して本「解説」がわずかなりとも寄与しうるとすれば、それこそ望外の悦びであらねばなるまい。 中原昌也「あらゆる場所に花束が……」184頁 新潮文庫 |
要するに、物語(もしかすると小説自体)を憎む作家の小説と、物語(もしかすると小説自体)を憎む評論家の解説が載った本です。
その補完性からは見事な悪臭が立ち上っており、僕にとっては本編の小説以上にグロテスクな印象を受けました。
まぁねぇ。
新奇(異質)なものによって、表現の地平が広げられ、それが物語にフィードバックされて、さらなる豊潤さを生むという構図は理解しているつもりなんですけどねぇ。
どうも、ねぇ。………ついて、いけませんでした。
構造や文体よりも物語重視の人は、後書きや解説から読んで、どういう小説かを理解してから本編を読むことをお勧めします。
もっとも物語重視のタイプは、この手の本は手に触れないように思われますが………。
あらゆる場所に花束が…新潮社このアイテムの詳細を見る |