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塩野七生「ローマ人の物語 (19)」

2005-09-20 08:47:33 | 書評
努力が報われないタイプ


塩野七生「ローマ人の物語 (19)」を読み終わりました。


これまでの感想。
塩野七生「ローマ人の物語 (17)」まぁ面白いんだけどさ
塩野七生「ローマ人の物語 (18)」男の夢


内容としては、暴君カリグラが殺されて、その後を継いだクラウディウス治世の話。

肉体的に政治向きではなかったクラウディウスは、もともとは誰からも期待されておらず、歴史研究に没頭するしかない人間だったのですが、カリグラの刺殺という事件によって、タナボタで皇帝の地位に就きました。

以後は、まずまずの善政だったのですが、キャラが地味なせいか人気は出ず。

そして、ローマ皇帝であったにもかかわらず、彼の著作は、すべて消失しております。
そのことを述べた、くだり。
ローマ皇帝の手になる歴史叙述という、史的価値ならば一級史料になったにちがいないこれらの著作は、すべてが消滅してしまって断片すらも残っていない。その原因を学者たちは、クラウディウスの残した演説や碑文等の文体から推察して、よく調べ知識も豊富だが、歴史叙述を文学作品に昇華させるに不可欠なヒラメキとスゴ昧に欠けていたからではないか、と言う。〝学者の著作〟であったから後世に遣らなかったのだと、学者たちが評しているのだから、この評価は信用置けそうである。
塩野七生「ローマ人の物語 (19)」30頁 新潮文庫
確かに、純粋な学術書は、けっこう読み通すのがきつかったりするからなぁ。

その点、本書は、面白く読めるんだけれども、さて「歴史叙述を文学作品に昇華させるに不可欠なヒラメキとスゴ昧」があるかどうかは、……………「読んだ人による」と言ったところか。


ローマ人の物語 (19)

新潮社

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