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観客席で思ったこと ~200文字限定のスポーツコラム~
 



Jリーグオールスター戦&中田ヒデ引退特番(TV朝日)

Jリーグオールスターサッカーのテレビ中継の冒頭に映った、小野や小笠原の緊張感に欠けた笑顔に違和感をもった。ドイツW杯でふがいない姿をさらした代表選手たちにとって、リスタートの意気込みを示す場だと思っていたからだ。瞬間、これは中田ヒデという存在から解放された笑顔ではないかとも思った。考えすぎだろうか。

7月15日土曜日、午後5時という中途半端な時間にJリーグオールスターサッカーは始まった。この開始時間は、会場となった鹿島へのアクセスも考慮されてはいただろうが、視聴率を期待できないテレビ番組をどこかに収容しなくてはならなかったためと思われる。結果、「急遽」放送が決まったとされる「中田英寿引退特別番組」の前座のようになった。せめて、日本サッカーの明るい未来を暗示させてくれるような試合を期待したが、実際には、試合の中身は、前座にも足らないものになった。日本サッカーには、中田ヒデという緊張感が、まだ必要なのだろうか。次期代表監督とみられるオシムは、この試合をどう見ていたのか。

午後7時の、いわゆるゴールデンタイムに放送された引退特別番組で、まるで評論家のようにドイツ大会の日本代表について語る中田ヒデにも違和感をもった。公式サイトで引退を発表する1週間前に、ひとつのテレビ局を相手に、引退への思いを語り、日本代表を分析し、批評しているのだ。その内容は、オールスターサッカーよりは含蓄に富むものだった。しかし、正直なところ、こういうかたちで語られてしまう他の代表選手はきついだろうな、と思った。そして、これまでの中田ヒデのメディアPR戦略にのっとってはいるものの、あまりに計画的で商業的ではないか。サッカー選手としての実力は認めるが、どこかうさんくささを感じてしまう所以でもある。

中田ヒデは日本時間の7月3日、夜9時、突然、公式サイトで引退を発表した。ドイツでは同日の午後3時。ぼくは、知り合いのカメラマンとデュッセルドルフの街中でビールを飲んでいた。そのカメラマンの携帯電話にメールが入った。しかし、中田ヒデの引退と聞いても、ぼくも、彼も、まったく驚くことはなかった。日本代表では、その存在感は際立っていたが、自らが所属するチームで満足に試合に出られない状態が続いていたわけである。ぼくらは、いい引き際だという印象で一致した。そして、そのカメラマンは、ぽつりと、こう言った。

「取材する記者やカメラマンで、中田ヒデの引退を惜しむやつはいないんじゃないかな。きっと、ほとんどは、ほっとしてますよ」

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