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観客席で思ったこと ~200文字限定のスポーツコラム~
 



全日本柔道選手権大会(日本武道館)

4月29日(みどりの日)の恒例イベント、体重制限を設けず日本一の柔道家を決める大会。
ここ数年は、井上康生中心の大会だった。しかし、今大会は、ケガで井上が不参加。他の出場選手の顔ぶれはあまり変わらなかったが、井上の名前がないだけでちょっと盛り上がりに欠けた。そのためか、会場の日本武道館もかなり空席が目だった。そんななか、結局王者の座を射止めたたのは、やはり五輪(アテネ・100kg超級)王者の鈴木桂治だった。
1回戦は、エンジンがかからなかったのか、優勢勝ちだったが、続く2回戦、3回戦、準決勝はきっちり1本勝ちを奪った。その試合ぶりは、あわてず、さわがず、一瞬のすきを逃さないものだった。決勝は、ベテラン村元の圧力に押され、旗判定(2対1)となったが、4週間前の体重別選手権をケガで回避していたことを考えると、十分王者らしい戦いを見せてくれたといえよう。
井上なきこの大会。鈴木のほかに注目されたのは、棟田の復活、高井の躍進。そして、アテネ五輪66kg級王者内柴が、体重が2倍近くもある猛者にどこまで戦えるか。
棟田、高井は、決勝に進出した村元にいいところなく敗れた。
内柴は、普段は90kg級で戦う飛塚に1分強で軽く投げ飛ばされた。内柴と飛塚が組んだ姿は、まるで大人と子ども。ぼくのまわりは、内柴が所属する旭化成の応援団の席だったが、その身内からも思わず笑いが漏れるほどの光景だった。格闘技において「柔よく剛を制す」は真理かもしれないが、「小よく大を制す」というわけではない。
五輪3連覇の野村も、それがわかっているから、この大会には出ない。世界王者が簡単に投げ飛ばされてはいけない、というのが野村の信念なのだ。しかし、その野村に唯一勝ち越している内柴は、大男への挑戦を選んだ。
しぶとく王者の威厳を示した鈴木桂治と、王者の肩書きを投げ打って挑戦した内柴正人。
みどころは十分にあった大会だった。

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