竜の末裔 第１話

プロローグ
　今から500年前、まだこの世界にいわゆる“魔法”が存在していた時代・・・
強大な力を持つ双頭の竜を旗印に掲げる“魔法”と、それを拒む“科学”が争った。
　俗に言う『竜戦争』である。
　8年間続いたこの戦争は世界を二分するほどに大きなものとなり、全ての魔力の源といわれた“竜の玉”を奪い合った。
　竜の玉を持つものが世界を支配するといわれていたためである。
　この戦争の中、魔法軍に人々から“竜神”と称されるほどの力を持ち、敵味方双方から恐れられていた一人の隻眼の男がいた。
　彼は竜にも勝るほどの強さ、猛々しさを備えていた。そのただ一つの瞳は全てを燃やし尽くすように輝き、まさしく竜のそれのようであった。
　長引く戦争の中、あるとき彼は戦争の目的であった“竜の玉”とともに忽然と姿を消した。
　魔力の源を失った魔法軍に、もはや立ち向かう術はなく、竜戦争はあっけなく終わりを迎えた。
　竜の玉の紛失により、魔法はこの世から消え去り、誰にでも使える“万能の魔法”である“科学”の時代が到来した。
　それから500年・・・