songbookの自己回顧録

「教えて!goo」で見つめてきた自分自身と、そこで伝えられなかったことを中心につづってきましたが、最近は自由なブログです

ちりとてちん ソナタ論5

2009-07-20 23:28:18 | マスコミ関係
久々にブログに戻ってきました。

この2カ月の間に世の中も大きく動き、世間を動かすニュースは続出。こんな中で、もう2年経とうとしているドラマのことをちまちま書いているというのも、どことなくもどかしいような気もしています。

ところで、このドラマは、年越しできれいに折り返し点を迎えるという構成をとりました。年末最後の回でプロポーズ、年明けは白無垢でスタート。
放映当時はそれほど意識していませんでしたが、終わってから改めて振り返って、「ああ、そういうことだったんだ。」と感心させられるのです。

ドラマ前半は、喜代美という主人公が個人として突っ走る。ソナタでいえばそれぞれのモチーフが提示される。そして後半は、それぞれが絡み合って展開し、終結部に向かっていく。
ドラマでは、結婚を機に、一人ではなくなり、家庭を持った喜代美が、それまでにちりばめられていた多くの話の要素をまとめて、あるところへ帰っていくという構成美。

第16週から、回収が始まります。
最初に回収されたのは、何と、私のごひいき、順ちゃんでした。
第2週目に喜代美を旅立たせる重要なアドバイスを送り(あんたの人生の主役は、あんたや。どおんと人生の真ん中、歩いていったらええねん)、いつでも喜代美の相談役だった順ちゃん。

それが年明けあたりから、ちょっと変化してきます。
へたれで不幸の代名詞のようだった喜代美が、結婚という大きな幸せを手にいれたとき、(もっと言うと白無垢を見たとき)、順子も心からの感動という経験をします。そして、新婚時のごたごたで悩む喜代美に、順子は適切なアドバイスが送れず、明らかにいらいらした、感情的な一面をのぞかせます。

「年季明けたんやろ。ほして結婚したんやろ。何いつまでも高校生みたいなことしとるん。ええやん、あんたは。二人でおんなじ目標持って生きていけるんやでえ。(やや声が震える)こんな幸せなことないやな。」
「…?順ちゃん…?」
「ああ、なんかイライラしてきた。切るで。」

それは、年末から伏線として張ってあった、友春との、隠れた交際によるものでした。喜代美と比べて自分は、人には言いにくい交際をしている。お互いの将来、目標、目指すものが違いすぎる。とても結婚など、口にできる状態ではない。でも好きになってしまった。…。この時の電話対応は、後にも先にも唯一、順ちゃんが喜代美に見せた「ジェラシー」でもあったと思うと、何ともいじらしくて、かわいく思えてしまいます。そして、喜代美と順子の立場が、ある意味、逆になった瞬間でもあります。

例の16週目、喜代美に打ち明けられなくて一人とぼとぼと家路に就こうとする順子の後ろ姿は、このドラマきっての名シーンです。バックの海猫の鳴き声も絶妙で、「背中が泣いている」は、今思い出しても泣けてきます。
で、家族会議で、順子は喜代美に言われます。
「順ちゃんも、人生のど真ん中、歩いていってほしい。順ちゃんも、一生懸命のアホになってよ。」

見事なぐらい、高校生当時の二人の関係を対称的に浮き彫りにしたシーンです。その後の泣き顔まで含め、2週目のモチーフを、ここで展開させ、結んでいるのです。

ちなみに、「人生の主役として生きていく」ということに関しては、まだまだこの後も論が続き、最終週で結びを見ることとなります。そこにも順子の言葉が何かと影響していくのですが、

一応、順子というキャラクターの展開については、この16週目に終結するといってよいと思います。これが、いわゆる「回収」です。

驚くべきことに、この16週目から、それぞれの主な登場人物の回収が次々と始まり、最終週には、あらゆる多くの出来事が、本当に回収されてしまうのです。何度も繰り返しますが、その構成美は芸術としか言いようがありません。

次回、その回収ぶりについて、もう少し。
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