ソムタムのリーガルマインド涵養の旅

中央大学法学部通信教育課程で学ぶソムタムの日記

親の因果が子に報い

2006-11-16 20:33:18 | 民法
中大通教の仲間であるおはつさんのブログにおいて、代理出産で双子の子供を
授かった高田延彦・向井亜紀夫妻が出生届を受理されなかった件について
触れられています。私も、とっても刺激を受けました。↓
http://hatsumimi.exblog.jp/i15/

私もこのニュースは知っていたし、野澤先生の家族法を受講したので、
自分なりにもいろいろと考えていました。

私の考えは、おはつさんとはちょっと違うかもしれません。

私は、どんな場合であっても、「親の因果が子に報い」という結果は妥当性を欠く
と考えています。何よりも、生まれてきた子供の幸福を最大限に尊重して考える
べきと思うのです。親の行動にたとえ大きな問題があったとしても、
結果として生まれてきた子供には何の罪も責任もないからです。

この双子たちが向井夫婦の子供であることは間違いない事実なのですから、
出生届は受理されるべきでしょう。

しかし。私は単に結果オーライを認めよとは考えていません。
私は、親を許容するか否かという問題と子供の福祉は分離して考えるべきだと
思っているのです。

向井夫婦の行動は、少なくとも今の社会の許容する範囲を逸脱してると考えます。
ご夫婦の事情には同情しますし、本人にしか判らない辛さもあるかもしれません。
しかしながら、社会的に許容される範囲を超える法的な問題が存在するのもまた、
事実だと思います。


人工授精によって誕生する子供について様々な問題があります。
子供を持ちたい妻が夫に黙って他人の精子を用いた人工授精で出産をした場合、
民法上の嫡出推定は及ぶのか、精子を提供した男性が親子関係確認を求めたら?、
さらに保存精子を使った場合、死者の子供が誕生することも可能であるが、
相続はどう考えるのか、といった様々な法律問題が未解決なまま存在してます。
生物学的親子と法律的親子はシンプルに同一に考えてよいわけではありません。

特に、代理出産については、人を道具として用いるものであり、人の尊厳を
重視する観点から極めて大きな問題を包含していると思います。実際、善意の
協力と商売で行う行為、さらには強制されて行う行為は紙一重の差です。
善意だから、合意してるからいいじゃないか、という簡単な問題ではないのです。

社会として母と子のきずなをどう考えるのか、という本質論も存在します。
単に遺伝子上の母であるからという理由だけで、懐胎から出産まで身体の一部と
して子を育んだ代理母との関係も、契約書だけで全て清算できるのでしょうか。

判例法が築き上げてきた、母の認知が無くとも、分娩という事実によって
親子関係が生じるという法理によって、多くの子が救われているのです。
これをあっさりと否定してしまってもいいのでしょうか。

まだまだ、私たちは、問題を解決していないと思うのです。
そんな中、実力行使に出た向井夫婦の行動は許容されるものではないと考えます。

その上で、もう一つの問題は、嫡出子・非嫡出子の区別でしょう。
私は両者の区別は廃止すべきだと考えています。向井夫婦もこの問題がクリア
できれば少しは対応が違うでしょうか。

でもでも、単位を修得したとはいえ、私の家族法の勉強も入口程度。
おはつさんの問題提起に刺激され、考えてみましたけど、
まだまだ勉強が足りないなと思いました。

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20 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
マイペンライ! (ソムタム)
2006-11-21 22:43:47
おはつさん
これまで民法が積み重ねてきた議論からいくと
受理しないという結論の方が安定していると
思いますよ。子供の救済という意義はあるにしても
受理するという法的構成は弱いのです。その点、
駿さんの指摘はすごく正しいと思います。
今の時点で、学部生である私たちが答えを出せなくても、マイペンライ!気にしない、気にしない!

hyomiさん
民法5は、野澤先生も鈴木先生も素晴らしい先生
です。とっても興味深い分野ですから、履修される
ことをオススメしますよ~♪
返信する
Unknown (hyomi)
2006-11-21 10:29:50
タイ料理屋さん、予約お願いします!

わたしは、分からないことが悔しいです!

みなさんの話に寄れるよう、
勉強、追っかけます!
返信する
皆で膝をつき合わせて (おはつ)
2006-11-20 22:49:29
ゼミ、ですね。これはもう、ゼミです。
ここのところ、仕事と、その延長で実家に泊まっていたものですから、こんな白熱した議論が行われているともつゆ知らず、のほほんと、マンガネタなどを携帯からアップし、お恥ずかしい次第です。

そして、私は、まだまだ勉強が足りないなぁと反省しています。

そもそも私は、向井亜紀さんに対してあまりいい感情を持っておらず、それが自分の書き込みにも多いに反映しているように思います。第一にそれが法的思考からかけ離れていて、自分の未熟さが出ているように思います。

理論立てて解釈すること、相手を説得できることがとても重要だと痛感しました。

駿さんとソムタムさんのやりとりを読ませていただいて、それでもやっぱり自分の考えは、「受理すべきではない」なのですね、ただ、それを説明できない。
それが悔しくて・・・

私にとって今回こうやって、皆さんと同じ事例について考えることができたことは大きな勉強になりました。もう一度、よく考えてみます。
返信する
Unknown (ソムタム)
2006-11-19 15:10:06
居酒屋予約しなきゃ!って
タイ料理屋でも、いいっすかね。
返信する
Unknown (suzuka)
2006-11-19 00:46:09
おはつさんとソムタムさんの意見、そして皆さんのコメント、拝見しました。
私自身、自分の意見が漠然としていて、まだまだ意見が述べられるようになるのは先の話かなと、自分の知識不足を痛感しています。
こうやって皆さんの意見をお聞かせいただけること、本当にありがたいです。

続きの居酒屋、参加しまーす(^^)/
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胸を借りました (somtam)
2006-11-18 09:58:10
こちらこそ、感謝です。
自分の考えを批判的に見ることは難しいので、
大変、参考になりました。
もっともっと、勉強を深めたいですね。
これからも、よろしく_(^^;)ゞ
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終焉に際して (駿)
2006-11-18 09:37:02
ここでの議論が、ソムタムさんのブログに遊びに来てくださった方の参考になれば幸いです。法律を学ぶ一人一人がきちんとして理論で主張し、反論できるようになることが、議論では大事なことかと思います。今回の議論で、ソムタムさんとの関係がより強化されたかなと勝手に思っています。ナイスファイトでした。
パチ!パチ!パチ!
返信する
ううむ (ソムタム)
2006-11-18 09:01:40
ブロガー志望さん
はじめまして。コメント頂き感謝です。
さて、子を虐待する親の親権停止の問題ですが、
私は停止すべきと考えます。子供の福祉を最大限に
考えれば、たとえ遺伝上の親であったとしても
そういう親からは切り離すべきでしょう。

それから、信仰上の理由による輸血拒否の問題ですが
自らの信仰心を確立したとは言えない子供に宗教上の立場に立脚する行為を強制する親の行動は支持できません。

最後の非嫡出子の相続問題ですけど、まさに入籍の意味をどう考えるのかということでしょうけど、非嫡で
生まれた子には罪はありません。その子の母親になることが耐えられない場合、離婚することも多いでしょう。その場合、固有財産は自分で確保すればよろしい。もし、婚姻を継続し、家族として行動するのなら、嫡出と非嫡で大きく差別するのはいかがなものかと考えているのですよ。
返信する
形式的要素と実質的要素 (ソムタム)
2006-11-18 08:47:37
駿さん
指摘ありがとうございます。議論に深みがでました。

法の解釈適用について、形式的要素と実質的要素の双方を踏まえて、社会正義を実現する解決策を導き出すことが大切だと習いました。形式的要素を重視すれば法的安定性が保たれますけど、ややもすれば硬直的になりがちです。実質的要素を重視すれば、目の前の被害者の救済は可能となりますが、ご都合主義的との批判も出ます。どちらかと言えば、最高裁は法的安定性を重んじるし、当事者を前にする事実審では実質的要素が重んじられる場合もあります。

さて、駿さんの議論は形式的要素の議論としては、
もちろん真っ当なものです。
でもね、駿さん。向井夫婦の出生届が受理されるべきではないとして、子供たちの扱いはどうすべきなんでしょうか?不受理にして終りということでは、子供たちがあまりに救われないんのでは。アメリカの代理母は、報酬をもらって出産した人です。その人を母として戸籍に記載し、その上で向井夫婦の養子とすることが、子供たちの福祉からみたとき一番いいといえるのでしょうか?
私の立場は、それではいかん、と思うところから出発しているのです。私はクリスチャンなので、もともと向井夫婦の代理出産のニュースを聞いたとき、反対だったのです。その後、家族法を学び、子供の福祉を最優先に考える田村五郎先生の思想に触れ、考えが変わったのです。代理出産には反対だけど、不受理にするだけでは、子供たちが救われないと。

医師による出生証明ですけど、この場合、分娩女性と遺伝上の両親の名前の双方を証明することが可能かと思われます。そうすると、向井夫婦を両親として届け出ることは可能です。後は、解釈運用になろうかと。

判例法理が築いてきた分娩上の母に認知不要とする立場は大切だとする考えは原則論として支持していますが、母となる意思が無く報酬を受け取って代理母となっている人は、この場合は射程外と考えます。
分娩の事実によって親子関係が生じるとの判例法理が発展してきたのは、遺伝上の親と母親が乖離していないことを原則的な前提として子供の福祉を最大限考慮した結果です。子供の明らかに反してまで、その原則を貫こうとすることは、実質的に妥当な解決をもたらさないと思うのですが。

出生届を不受理とした場合、じゃあどうすれば、
既に生まれてきている子供たちの福祉を犠牲にせずに
解決できるのか。
法的安定性か子供の福祉か、そのどちらを選ぶのか、
まさに問われているのです。

そういう問題を繰り返さないためにも、早期の立法的解決を望みます。ここでは、駿さんと意見が完全一致!
なんだか、ゼミみたいで刺激的です。
駿さんと一杯やりたいなあ。続きは居酒屋で!


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お邪魔します (ブロガー(志望))
2006-11-18 08:02:40
お邪魔します。
 お言葉ですが自分には「子供を愛そうとしない、又
は虐待を止めようとしない親がいても、あくまでその
親を説得しなければならず、子供を引き離してはいけ
ない。」というのと同じように思えるのですが。説得
の間も子供は虐待され続けるでしょうし(死んでしま
うかも知れません)、飲酒運転同様どんなに言っても
たとえ厳罰を課しても止めない人間は止めないので
す。「宗教上の理由で子供への治療(輸血等)を拒否
した親の親権を(一時)停止した」はたとえ子供が死
んでもやってはいけなかった事なのでしょうか。自分
は「子供か信仰かで信仰を選んだ以上、親はやめるべ
き」と思うのですが。

>嫡出子・非嫡出子の区別

 妻に対し「夫が自分以外の女性に産ませた子供に対
しても母親になれ。妻固有の(妻が自分の親から受け
継いだ等)財産もその子に相続させろ」という事で
しょうか。なら何のために"入籍"したのでしょう。
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追伸 (駿)
2006-11-17 23:02:43
「早急に法的な整備を行って、こういうこと
が繰り返されないようにすることが王道だと思います。」というソムタンさんの意見はもちろん大賛成です。
返信する
Unknown (駿)
2006-11-17 22:58:24
ソムタムさんは、お子様をお持ちですから、出生届を見たことがありますよね。出生届を提出するには、分娩に立ち会った医師等が書いた出生証明書の添付が必要になることはご存知かと思います。出生証明書には、母の氏名や妊娠の週数等の記載が必要です。ということは、母の氏名には分娩した女性の名前が書かれるわけですよね。では、出生届の届出人は一体だれなのか、嫡出子であれば、届出人の第一順位は父母、非嫡出子であれば、届出人は母です。私は向井夫妻の出生証明書を実際に見たわけではないので、あくまでも推測で書きますが、出生証明書中の母の氏名を「代理母」の名で書かれたら、向井夫妻はそもそも、出生証明書上の母とは無関係である以上、出生届の届出人になることすらできません。
もし、母の氏名を「向井亜紀」と書かれていたら・・、事情を知らなければ受理するでしょうネ。ただし、分娩の事実に反する記載になりますから、それに記載した医師が罰せられるか否かはともかくとして、出生届の受理が取消されるかと思います。もし、代理出産の事情を知っていたら、やっぱり、法務局あてに受理伺いをして、出生届の可否の判断を委ねるしかないでしょうね。
前置きがながくなりましたが、ソムタムさんは、「判例法が築き上げてきた、母の認知が無くとも、分娩という事実によって親子関係が生じるという法理によって、多くの子が救われているのです。」と書かれていながら、この場合は、救うべきというのは、ちょっと主張としてはどうですか?それに、「代理母が母としての主張をした場合、どちらが子の親として認められるべきか、私も未解決の問題だと思います。」とのコメントからすれば、分娩の事実によって親子関係が生じるとするソムタムさんの記述に従うべきではないでしょうか?
返信する
分娩の母の問題 (somtam)
2006-11-17 22:43:48
駿さん
代理母の問題は私の主要論点なのですよ。
分娩の母については、胎児のときからの母と子の
つながりを重んじる立場もありますよね。
胎児のときからのつながりを重んじた方が子の
幸せにつながるという主張をしてる学者もいます。
私もそのことは承知しています。
代理母が母としての主張をした場合、どちらが
子の親として認められるべきか、私も未解決の
問題だと思います。だからこそ、代理出産そのものは
法的に禁止されるべきだと思ってます。
その上で、結果として生まれた子に罪はないし、
とにかく自分たちの子として愛情を持って育てたいと
遺伝学上の親たちは強く主張し、そのことは信用できるし、代理母が育てたいと主張している訳でもない、
今回の事例はそういう出生届なので、それについては受理すべきではないか、と思うのですよ。
私はその方が、この(特定の)子供たちの幸せに
つながると思っています。もう、生まれちゃってるん
だから、救うべきです。
その上で、早急に法的な整備を行って、こういうこと
が繰り返されないようにすることが王道だと思います。
返信する
Unknown (駿)
2006-11-17 22:04:37
ソムタムさん。私は代理母が禁止されるべきか、否かはコメントしていませんよ。あくまでも、向井夫婦に関する出生届を受理すべきでない、と思っているだけです(言葉が足りなかったみたいです。)。ソムタムさんが言うように、売春は犯罪ですから罰せられるべきだし、結果として生まれた子の出生届も受理すべきです。分娩の事実がある以上、否定する理由はどこにもないですから、このことについて、否定しようなどと思ったことがありません。出生届を受理するとなると、分娩していない女性が母になって良いということになるわけですから、この問題は、遺伝子を理由に母とするのか、分娩をしていないから母になれないのかということですよね。遺伝子を理由に母となることが可能であるとした場合、分娩した女性はどのように扱えばよいのか、私はいまだにそこが解決できないのですよ。
父なら遺伝子だけでも問題は解決できると思いますが、母の場合は解決できない問題がそこにあります。いっそのこと、遺伝子の母と分娩した母の両者を認めることができるのなら、それについて否定することはありません。 議論って、素晴らしいですね。
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議論すること (somtam)
2006-11-17 21:44:23
法律の勉強で大切なことは、何度も基本書を読むこと、それから、議論することといいます。
そういう意味で、おはつさん、駿さんと意見の交換
ができることは、何だか、とっても嬉しいです!
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それから養子について (ソムタム)
2006-11-17 21:40:32
ものごころついたころからの養子といっても、いざ
相続のときになって養子縁組手続の瑕疵を主張し、
一方的に離縁しようとする親がいますよね。
民法5で習ったとき、一番胸が痛んだ事例です。
養子縁組手続が要式行為であることから、ずうっと救われませんでしたよね。
最近、最高裁が救う方向で判例出したのはいいことだ
と思ってます。
返信する
本当の親 (ソムタム)
2006-11-17 21:39:14
駿さん
もちろん子供にとって一番大切なのは、親です。
向井夫婦の場合、遺伝子を提供した親は自分の子として愛し、慈しみ、一生涯の絆をつなぐ覚悟があると
思います。だからこそ、出生届は受理すべきとの
基本的立場に立っているのです。
その上で、法的には代理出産を禁止すべきという立場です。法的に代理出産を禁止すべきとうい議論と
結果として生まれた子の出生届を受理する議論とは
別です。例えば、売春は犯罪ですから罰せられる
べきですけど、その結果生まれた子の出生届は否定
されるべきではありません。私の言いたいことはそこがポイントです。
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Unknown (駿)
2006-11-17 21:04:06
ソムタムさんとおはつさんは、既に理論が確立されているのですね。私は、この問題をテレビで見たときから、出生届は受理すべきではない、とする立場です。ただ、この立場から揺らぐことはないのですが、じゃぁ~、どんな理論で出生届を受理すべきという人を説得できるのか、というところまでは確立できていません。
私にとって、この問題は「生まれてきた子」がおきざりにされているような気がしてなりません。出生届を受理されたから、ホントにその子が幸せなのか?ホントに幸せなのは遺伝子を提供した親だけなんじゃないかとも思います。
レベルの違う話ですが、代理母による出生届を救うより、ものごころついたときから長年一緒にいる養父母と養子の関係を救ってあげたほうが、よっぽど幸せになれる人が多いのにと思ってしまいます。

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稚拙でもいいから、議論すること (ソムタム)
2006-11-16 23:37:16
hyomiさん
正直言って、素人の議論なので恥ずかしいのですが
何か書くことで自分の考えも整理できて、
何かしら勉強になるのでは、と思って。
おはつさんの問題提起には刺激されました。
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Unknown (hyomi)
2006-11-16 23:12:41
おはつさんの記事と合わせて読ませて頂きました。
恥ずかしながら、
わたしには答えられません。
今後の課題とします。
それでも、
おはつさんのブログにも書かせて頂きましたが、
おふたりの記事で、
法律を学ぶ者の視点を教えて頂きました。
ありがとうございました。
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