ソムタムのリーガルマインド涵養の旅

中央大学法学部通信教育課程で学ぶソムタムの日記

たまには民法の勉強だって

2006-11-29 22:15:26 | 民法
今日は、刑法各論の勉強は横領罪と背任罪の区別に限ってちょっとだけ。
そして、余った時間は、超久しぶりに民法の勉強をしました。

ちょっと反省なんですけど、1年目は民法1、民法2、民法3まで履修したものの
民法4(債権各論)は余裕がなくなってしまい、2年目に持ち越したのです。
ところが2年目も、これまで別の科目ばっかりやっていたため、民法のコツが
すっかり忘却の彼方へと、、、。

民法5(家族法)やら、労働法やらを履修しているときも、民法を復習する必要
は感じつつ、ちょびっとの勉強でごまかしていました。

そして今、債権各論の1月試験対策だと意気込んだものの、債権どころか、
表見代理の基本代理権の議論すら、いや本当のこと言うと錯誤の基本すら、
ショック☆<( ̄□ ̄;)>☆を受けるほど、脳細胞から消去されているという事実に
Σ(T▽T;) !  

とにかく債権総論と各論の記憶を呼び戻さなくては!

ということで、こういうとき読み直すのが、私の場合、
慶應の池田真朗先生の名著「スタートライン債権法」。

これ、本当にお勧めです。判りやすくて、無駄が無い。
これ一冊で債権総論と債権各論をカバーしちゃってるし、初心者でも
基本から理解できて、試験レベルなら対応可能な力がつくよう工夫されてます。

そして、何よりも行間には池田先生の学生(通教生含む)に対する愛情が
感じられます。

よおし、これから数日はこの本で民法の学習にもがんばろう。
っていうか、債権各論あと2通のレポ残ってた(現実)_(^^;)ゞ

1月試験に向けて(レポも)がんばるぞ。

あるいは全く勉強しない週末など

2006-11-27 22:04:27 | その他
今週末の土日は、全く勉強しませんでした。
あえて言えば、ジムで走っているとき只木先生の刑法各論の授業録音を
いつも一緒のipodで聞いたくらい。

それで何をしていたかというと、読書と映画鑑賞です。
読書はhyomiさんから伝染した「ローマ人の物語」であり、
映画は、大好きな画家フェルメールをテーマにした
「真珠の耳飾の少女」のDVDを借りにいったついでに借りた
「ミリオンダラーベイビー」でした。

特に、ミリオンダラーベイビーは、本当に衝撃を受けました。
人によっては救いの無い絶望の映画だと思われるかもしれません。
尊厳死の問題も突きつけられます。
しかし私には、見終わった後、じわ~とこみ上げる感慨があり、
それは、この映画は究極の愛の在り方を問うている映画なんじゃないか
というものです。

確かに悲劇的な結末ですけど、それでも私は主人公は最後の最後に
お互いに本物の愛に包まれたんだ、と思うのです。
ネタばれ的なことは書きませんけど、まだ見たことの無い方には
お勧めです。決して、シンプルなハッピーエンド映画ではありませんが、
きっと、深い余韻を感じることでしょう。

ローマ人の物語の方は、西洋法制史を履修しているので、ホント楽しめます。

この2日間、全く勉強しませんでしたけど、たまにはそんな週末もいいかな?
なんて、思ったのでした。


言葉にできない

2006-11-24 22:47:58 | その他
通教の勉強に疲れたとき、
仕事に疲れたとき、
人間関係に疲れたとき、
レポや試験が不合格だったとき、
人生に疲れたとき、

是非、この動画をご覧下さい。YouTubeで見つけたんですけど、
久しぶりに私の笑いのツボにはまりました。

http://www.youtube.com/watch?v=LIhbap3FlGc

こういう気楽なのを見て、ハハハと笑えば、あら不思議、
さて、勉強でもするかな、って気になるんですよね。

バルタン星人の時計 ()o\o()

2006-11-23 19:36:35 | 刑法
刑法総論は只木先生の短スクを受講しました。
そして今、刑法各論も只木先生のオンデマンド授業を受けています。

私は刑法なんて嫌いでしたけど、只木先生の授業を受けてから、すっかり
刑法好きになりました。

只木先生は、刑法学者としては罪数論の第1人者の一人ですし、
教師としては、その弱者保護や犯罪者更正(特に少年)に向けた熱い情熱が
感じられます。中大の法学部、法科大学院、さらには早稲田でも教鞭を
とる殺人的なスケジュールの中でも、通教で教えるのが好きだからと、
スクーリングを担当されるところも、とても好感が持てる先生です。

そして、只木先生は教え方も上手だなと思います。

例えば、詐欺罪。詐欺罪は、騙し騙され財物処分行為で成立しますけど、
人を欺く行為は具体的事態のもとで通常人をして錯誤に陥れる可能性のある
行為でなくてはならないと教科書的には説明されます。この程度は、不能犯との
区別を画する上で問題となりまして、少なくとも、そういうことはあり得るという
程度の可能性は必要とされます。
が、、そう言われてもピンと来ないのが、私たち一般人です。

只木先生は軽快に説明されます。先生の時計(短スク受講した人は知ってますよね。
先生がドイツで買ってるカシオの時計です)を指差して、ある人がこの時計を
売ろうとして、「お兄さん、お兄さん、これローレックスの時計なんだけど、
1個5千円でどう?」と売ると何罪ですか?と聞かれます。そう、騙される人も
いるかもしれないので詐欺罪を認めて良いでしょう。
一方で、「お兄さん、お兄さん、これバルタン星人がはめていた時計で世界で
3個しかないやつ」とか、「これ、小野妹子が隋から持ち帰った時計なんだ」
と言って売ると何罪ですか?と聞かれます。そう詐欺罪は成立しません。

この例え、結構アタマに残るンですけど、これだけでも、騙し、騙され、
財物交付、で一般人を錯誤に陥れる可能性のある行為をすれば詐欺罪!って
教科書なんか読んだとき、すんなり入ってくるし、どこか覚えてる。

その他にも、「不作為と聞けば、すぐに特定の相手にしか成立しない」と
連想することとか、「錯誤の問題と聞けば、すぐに、それが違法性の錯誤か、
事実の錯誤か、処罰阻却事由の錯誤か検討」し、故意の阻却問題と絡めて
考えて犯罪成立の可否を論じる思考方法とか、学生がつまずきやすいポイントに
差し掛かると、すかさず判り易く考え方のコツを覚えやすく教えて下さって、
試験答案の構成方法まで解説して下さいます。

そんなノウハウだけではなくて、教室は常に先生とのやり取りで緊張感と
活気に溢れ、語られる最先端の問題を通じて、我たちも学問の醍醐味に触れる。
私の文章力の関係で、上手く伝わりませんが、ホント、すごい先生だなと。

教え上手な人は予備校にも沢山おられるでしょうけれど、尊敬できる学者であり、
かつ教え上手。只木先生は本当に素晴らしい先生だと思います。

せっかく、中大通教に学ぶ皆さん、機会があれば、是非只木先生を受講して
見てください。満足いただけない場合は、返金いたします(ウソ)。

Welcome back 刑法各論第2課題!

2006-11-21 23:26:56 | 刑法
刑法各論第2課題が、約3週間の旅を経て戻ってまいりました。

帰宅して郵便ポストを見ると、怪しげな黄色いブツが!!!
こ、これは! 急いで郵便受けから取り出したら、スミッチョに引っかかって
一部がビリっと。許せ、レポートよ、今はそれどころではないのだ。

とりあえずスキマから評価欄を覗く(当然でしょ?)。
うううむ。良く見えないけど、とりあえず「1」では無さそうだ。

良かった(大安心)~ヽ(゜▽゜*)乂(*゜▽゜)ノ バンザーイ♪

ということで、家に入っておもむろに開封する。
そしたら、評価は「5」で合格。
バンザーイ!! ★\( ̄▽ ̄ )/クル\(   )/クル\(  ̄▽ ̄)/★バンザーイ!!

刑法各論のレポは苦労したのでひたすらに嬉しいです。

思いますに、第2課題のポイントは、まず住居侵入罪について記述すること、
それから本題の窃盗罪につき、本権説、占有説(各派含む)のどちらを
とるべきか、きちんと議論すること、そして住居侵入と窃盗を認める場合には
きちんと罪数の処理をすること、この3つだと思います。

私は、「理由のある平穏な占有説」を採りましたがオッケーでした。でも、
インストの先生からはその部分に、「占有に理由があるかどうかということを
現代社会で容易に判断できるでしょうか」という指摘を頂きました。

なお、この課題を書くにあたって一番参考にしたのは、ジュリスト948号に
掲載された最高裁の香城調査官(当時)による判例解説です。とても、参考に
なりましたので、この課題に挑戦される方にはオススメです。

それから、刑法各論オンデマンドの受講報告書もオッケーでした。
ブログに書いたことなんかを基礎にして、弱者保護をいかにして図るかという
視点から書きました。特に、弱者による自己決定は、強者の恣意を受け容れる消極的な自由に過ぎないとの只木先生の言葉を思い出しながら書きました。

そうしたら、インストの先生から
「再提出の必要はありません。犯罪者の社会復帰や「弱者」保護までを見越して刑法の議論をすることは、只木教授の根本思想であり、重要な指摘だと思われますので、今後も片隅に置きつつ、学習を続けられることを祈念いたします。」
とのコメントを頂きました。

とても嬉しく思いました。こういうヤリトリがあると、もっと勉強しよ~♪
って気持ちになります。中大通教のこういう温かみのあるところ、気に入ってます。

オンデマ受講報告書を提出

2006-11-19 20:47:34 | 刑法
気がつけば11月も後半。いや、もうすっかり、{{(+ω+)}}寒ううぅ~

只木先生による本当に素晴らしい授業が展開されている刑法各論の
オンデマンド授業も残り1コマだけとなりました。
ホント、この授業は受講して良かったなあ。。(´▽`)

おっと、しかしオンデマンド授業は忘れちゃいけない掟があります。

掟その1:全部のコンテンツを視聴済にすること
掟その2:全てのチェックポイントを回答済にすること
掟その3:受講報告書を提出すること

これをちゃんとやらないと、受講終了とならず1月の試験が受けられません。
さらに、レポ2通免除も得られないので、タイヘンダァ!! ヾ(゜ロ゜*)ツ

ということで、とりあえず受講報告書をせっせと書きました。
ただ書いているのもつまらないので、iTunesを起動してネットラジオを聴きつつ。
最近、はまりまくりのpodcastですが、iTunesでネットラジオも聴けます。
芸術の秋ということで、hyomiさんに刺激されて私もクラシックの番組を。

いきなり、モーツアルトの”Sonata in F, K.376”から始まって、いい感じ。
”Horn Concerto #2 in E flat major kv417”へと続き、脳内にはなんとか波が
生じているのでしょうけど、報告書の進み方は今ひとつ。

途中で、フルートの曲に変わり、ふとタイトル表示窓を見てみると、
何だかよくわからないイタリア語?が続いた後に、
Fluto Chitarra Larghetto Cantabile と、、。

んん、カンタービレ? のだめカンタービレ?!

そうか、歌うように!
受講報告書も歌うようにスラスラと書ければいいんだけどな!

まあ何とか書き上げて提出しました。
歌うように、というよりは唸るように書きましたが、、。

親の因果が子に報い

2006-11-16 20:33:18 | 民法
中大通教の仲間であるおはつさんのブログにおいて、代理出産で双子の子供を
授かった高田延彦・向井亜紀夫妻が出生届を受理されなかった件について
触れられています。私も、とっても刺激を受けました。↓
http://hatsumimi.exblog.jp/i15/

私もこのニュースは知っていたし、野澤先生の家族法を受講したので、
自分なりにもいろいろと考えていました。

私の考えは、おはつさんとはちょっと違うかもしれません。

私は、どんな場合であっても、「親の因果が子に報い」という結果は妥当性を欠く
と考えています。何よりも、生まれてきた子供の幸福を最大限に尊重して考える
べきと思うのです。親の行動にたとえ大きな問題があったとしても、
結果として生まれてきた子供には何の罪も責任もないからです。

この双子たちが向井夫婦の子供であることは間違いない事実なのですから、
出生届は受理されるべきでしょう。

しかし。私は単に結果オーライを認めよとは考えていません。
私は、親を許容するか否かという問題と子供の福祉は分離して考えるべきだと
思っているのです。

向井夫婦の行動は、少なくとも今の社会の許容する範囲を逸脱してると考えます。
ご夫婦の事情には同情しますし、本人にしか判らない辛さもあるかもしれません。
しかしながら、社会的に許容される範囲を超える法的な問題が存在するのもまた、
事実だと思います。


人工授精によって誕生する子供について様々な問題があります。
子供を持ちたい妻が夫に黙って他人の精子を用いた人工授精で出産をした場合、
民法上の嫡出推定は及ぶのか、精子を提供した男性が親子関係確認を求めたら?、
さらに保存精子を使った場合、死者の子供が誕生することも可能であるが、
相続はどう考えるのか、といった様々な法律問題が未解決なまま存在してます。
生物学的親子と法律的親子はシンプルに同一に考えてよいわけではありません。

特に、代理出産については、人を道具として用いるものであり、人の尊厳を
重視する観点から極めて大きな問題を包含していると思います。実際、善意の
協力と商売で行う行為、さらには強制されて行う行為は紙一重の差です。
善意だから、合意してるからいいじゃないか、という簡単な問題ではないのです。

社会として母と子のきずなをどう考えるのか、という本質論も存在します。
単に遺伝子上の母であるからという理由だけで、懐胎から出産まで身体の一部と
して子を育んだ代理母との関係も、契約書だけで全て清算できるのでしょうか。

判例法が築き上げてきた、母の認知が無くとも、分娩という事実によって
親子関係が生じるという法理によって、多くの子が救われているのです。
これをあっさりと否定してしまってもいいのでしょうか。

まだまだ、私たちは、問題を解決していないと思うのです。
そんな中、実力行使に出た向井夫婦の行動は許容されるものではないと考えます。

その上で、もう一つの問題は、嫡出子・非嫡出子の区別でしょう。
私は両者の区別は廃止すべきだと考えています。向井夫婦もこの問題がクリア
できれば少しは対応が違うでしょうか。

でもでも、単位を修得したとはいえ、私の家族法の勉強も入口程度。
おはつさんの問題提起に刺激され、考えてみましたけど、
まだまだ勉強が足りないなと思いました。

とにかく出そう!

2006-11-13 23:14:57 | 刑法
刑法各論第3課題。とても難しい課題で、悩みに悩んでいたら、

ついに、額にシワが!!ガビーン(◎-◎;)!!

もう、悩まないで、とにかくまとめてみることにしました。
一気に書き上げて、推敲することおよそ10回。
最初はどうしても3,000字くらいになってしまったのを
何とか2,500字に圧縮。

肝心の犯人隠避教唆罪については、結局、行為無価値で書くことに
決定。ただし、結果無価値も取り入れた二元論的な行為無価値としての
特色が出るように書きました。だって、この件に関しては何と言っても
前田説がいう防御権の濫用を判例だって使ってるし。
ただ、団藤・大塚説の適法行為の期待可能性だけだと、やっぱり親族特例
を使うとき、一旦高まった期待可能性が親族だからちょい下がるみたいな
説明とならざるを得ないので、できるだけスムースになるよう書いたけど、、。

ま、悩むときは、一人で悩まず、とにかくレポートを出してみることが大事!
不合格でも、指導を読めば、何かヒントが得られるはず!
と、心だけは前向きに、刑法各論第3課題を仕上げたのでありました。

明日の朝、投函するぞ。
レポートよ。元気で多摩までの旅、行って来るんだぞ~♪

でも、どんなに自信が無いレポートでも、シール貼って、切手貼ると
心のどこかに、もしかして合格するんじゃ?なんて気持ちが出てくるのは
私だけ?

刑法各論第3課題に挑戦

2006-11-12 14:44:39 | 刑法
刑法各論第3課題に挑戦していますが、これ、結構難しいです。
これ仕上げれば4課題全部提出だけはしたことになるんですけど苦闘中。

設問としては平成9年の司法試験問題のうち、目撃した妻の偽証罪部分を
取り除いた感じですね。

ざっと見ると、乙は殺人犯人の身代わりとして出頭したんだから犯人隠避罪だし、
甲は身代わりになってねと頼んだンだから、その教唆が成立する、と。
そんでもって、乙は甲の父親だから、刑は任意免除の特例もあるよ、と。

でもでも、、。

そもそも犯人隠避罪は正犯者である甲には成立しない罪であるところ、
それを乙に教唆した場合に、自分がやっても罪にならないものを他人に
やってもらったからって罪になるのか。教唆って何?ってことで、
改めて、刑法総論の共犯理論の復習が必要になります。

その上で、教唆犯の成立を認めるにせよ、否定するにせよ、
共犯理論も踏まえた検討をする必要がありますが、
結論から言えば、最近の刑法学では、この問題は共犯論よりも
期待可能性の理論を用いるか、刑事訴訟法上の防御権濫用論を用いるか、
さらに言えば、大塚説でいくか、前田説でいくかの決断を迫られることに、、。

ううむ。自分的には前田説のほうが馴染むンですけど、行為無価値中心の中大。
中大のレポートで前田説で書いて、インストの先生にすんなり受け入れて
もらえるんだろうかが問題、、。悩む、、、。
期待可能性だけでいくと、期待可能性が下がるから刑を免除する親族への教唆のとで舌噛みそうだし、、。

さらに、親族が刑を任意免除される規定を本人まで準用させるか否か、、。

そして包丁の件はどうする。証拠隠滅まで視野に入れるかどうか。

あああああ。判りませんン。混乱してきました。

ということで、とりあえず、ジムで泳いできます。

そんなわけで、ジムから帰ってきました。
例によって、ミニなんちゃってトライアスロンしてきたんですけど、
一つだけわかったことは、
バイクをこいでいるとき、ランニングマシンで走っているときは
刑法の課題について考えることができますけど、泳いでいるときは
法律学について考えることは不可能だ、ということです_(^^;)ゞ


医師のコトバ

2006-11-11 14:31:49 | その他
最近、医療関係の問題がよく報道されていますよね。
移植問題とは直接関係しないんですけど、最近、ふとしたキッカケで
読んだ記事に思うところがあったので、紹介したいと思います。

ここはパリの病院の緊急集中治療室。フランス人医師が少年に話し掛ける。
「君はフランスの小学校に通っている立派な日本の男の子だ。フランス語は分かるね。これから話すことをよく聞きなさい。お母さんは今静かに眠っている。君のことを夢に見ているかも知れない。でももう目を覚まさない。深い永遠の眠りの中にいて君とはもう話せない。あと数時間でお母さんは冷たくなってしまう。お母さんに最後の挨拶をしなさい」。

そう言って少年の手を、昏睡状態の母の腕に触れさせる。延命装置で生きて眠っているようにしか見えない母の顔に、少年はこわばった顔を近づけ、頬にキスをして「ママさようなら」と声にならない声で涙も見せずに小さく囁いた。

横にいた私は、少年に優しく語り掛ける医師の、一つ一つの言葉に感銘し目頭が熱くなってくるのを感じていた。母の死の悲しみを、こんな思いやりのある言葉で話し伝えることが出来るのか、とその真摯な姿に胸が熱くなっていた。これだけの優しい言葉を口にしてくれる日本の医師は、果たしてどれだけいるだろうか、とその時ふと思った。

8歳の少年に、母の死はあまりに酷で、泣く事を忘れさせるほど辛い事に違いない。それだけに少年の悲しみをいたわる医師の言葉に、心を打たれ救われる思いを抱いた。

私の周囲に医療関係者は多いです。
思うのですが、日本の医療関係者は、もっと精神的に深く思いやりのある
人間となるべく、努力するべきだと思う。
あまりにも技術に走っているのではないか。人間の生と死を医療技術を通じて
司っている職業人として、より高いモラルと人間性を求めたい、と思うのでした。