ソムタムのリーガルマインド涵養の旅

中央大学法学部通信教育課程で学ぶソムタムの日記

認知請求権の放棄

2006-08-09 22:35:14 | 民法
民法5で2005年11月の科目試験に出題された課題だ。

婚姻関係に無い男女から生まれた子は非嫡出子となる。
非嫡出子は認知を受けるまでは法律上の父親はいない。

しかしながら、無責任なことに認知したがらない父親が多い。
だいたいが、不倫とか後ろめたいことがあるからだ。
よって、任意に認知されないとき、裁判で認知請求がなされる
こととなる。

ところがこのとき、父親が子(母)に手切れ金のような金を
渡し、「金をやるから、もう騒ぎ(認知請求)するなよ」と。
そこで、「もう認知請求いたしません」という約束を取り付けるのだ。
これが認知請求権の放棄だが、これが有効か否かが争われる。

認知請求を単なる扶養料の給付請求とみるならば、相当額のお金を
もらいながら、認知請求を繰り返すことは権利濫用とされるだろうけど、
それはやっぱり違うだろう。

この問題については、認知請求権は身分権だから放棄できないという点は
あまり争いは無いけれど、十分な経済的対価を得たうえでの認知請求は
権利濫用とするか、そうじゃない、やっぱり認知は別なんだとするかで
判断が分かれる点を説明すればいいんじゃないか。

親なし子として世間の冷たい視線にさらされてきた子にとって、自分の
実の親を確定したいという気持ちは真剣なものだ。裁判所も認知請求権は
身分上の権利であって放棄できないという立場に立っている。
認知請求権は放棄できないとの原則をしっかり立てた上で、金銭上の
問題については、負担すべき扶養料の算定において考慮するなどすれば
良いだろう。金銭的な問題だけで、認知請求という子の願いを絶つことは
不適当だし、非嫡出子という社会的にマイノリティな立場に立たされている
者への配慮を重視し、認知を拒否し金で逃げ切ろうとする無責任な父親の
利益よりも、子の請求をより斟酌するべきではないかと考える。


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