goo blog サービス終了のお知らせ 

sky is blue

言わなければよかったのに日記

A BEST 2 が描き出した物語

2007-03-08 23:31:48 | AYU
そして、『A BEST 2 -BLACK-』と『A BEST 2 -WHITE-』が発売された。発売日当日には『めざましテレビ』などの6番組に本人自ら生出演して“電波ジャック”するほどの気合の入りようだった。

今回のベストで、まず最初に驚いたのは、「形態」だった。第一に、「BLACK」と「WHITE」という2種類に分かれている点。第二に、「DVD付き」には、「収録曲のプロモクリップ集」と「『BEST of COUNTDOWN LIVE 2006-2007 A』の完成までの軌跡を追ったドキュメンタリー映像(BLACK)/同ライヴの模様(WHITE)」の2枚のDVDがそれぞれ付く点。

2種類に分けられているのは、単純に曲数が多いから1枚に入らないという理由もあるだろうが、そこで2枚組にするのではなく、1枚ずつにパッケージを分け、更に、時代順で分けるのではなく、「BLACK」と「WHITE」という「作品の色」による分け方が選ばれている。「CDのみ」と「DVD付き」を出すのはエイベックスお得意の方法ではあるが、そこに、カウントダウンライヴ関連の映像まで付けるとは……。

私は、この形態に不満を感じた。ベストというのは、ファンじゃない人も手に取りやすい形にすべきだと思うから、 1種類にまとめた方が良いと思うし、「BLACK」と「WHITE」という分け方も、時代順による分け方よりも混乱すると思ったから。DVDを2枚も付けるというやり方も、商品価値を下げてしまうような気がしてイヤだった。まぁ、こういうことに正解はないのだろうし、CDが売れなくなったり音楽配信が登場したりしたから、レコード会社も試行錯誤し、混乱しているのだろう。

しかし、DVDに収録されているライヴからして『BEST of ~』と銘打たれている点やその内容を考えてみるに、もっと積極的な方向で今回の形態にしたのではないかと思えてきた。そして、これらの作品を鑑賞しているうちに、分かってきた。

あゆは、楽曲、PV、ライヴ、ライヴ(作品)を作っていく過程に至るまで、すべてを含めて「浜崎あゆみ」なのだと、すべてが「浜崎あゆみの表現」なのだと、そう言いたかったのではないだろうか。

CDだけでは売れなくなったとか、ファンは全曲持ってるからライヴ映像も付けないと売れないとか、そんな消極的な理由ではないのだ。や、仮にそんな理由があったとしても、それだけの理由であんなライヴをするまでしないと思うし、何よりも作品がそれを凌駕している。そうでなければ、これらの作品が持っている「説得力」が説明つかない。(ま、それでも、同じPVを何回買わせるんだ!とは思いますけどね…苦笑)

分かりやすく時代順で分けるのではなく、「BLACK」と「WHITE」という「作品に新たな意味を与える」分け方をしたのも、「過去の寄せ集め」であるベストであっても、これも「現在進行形の表現」なんだという意思表示を感じる。実際、時代順に分けるよりもズッと手間のかかるやり方だろう。

そして、このやり方が、確かに新しい「物語」を紡いでいることに、私は驚いてしまった。

曲順は、発売順ではなく、時代としてはバラバラに並べられているのだけど、曲目を見ただけの時点では、私はそのことに不安を覚えたんだ。以前の記事で、「あゆの曲は、まだ『浜崎あゆみ』の手を離れられないでいる」などと書いたが、つまり、あゆの曲は、「浜崎あゆみの物語」なくしては成立しないところがあるのではないかと感じていたので、時代をバラバラにしてしまうと、その「物語性」が崩れてしまって、作品としての魅力に乏しくなってしまうのではないかと思ったからだ。要は、あゆのことを、作品だけで物語を描くところまではいっていないと思っていたわけだが、それが見事に覆されてしまった。

『WHITE』は、「evolution」で始まり、「A Song is born」で終わる。「evolution」は、「M」の次のシングルだし、始まりにピッタリの曲である。で、聴き進めていくうちに、時代がバラバラでありながら、ずっと繋がっている「流れ」を感じることに私は驚き、「Humming 7/4」から「UNITE!」への流れなどには、初めて聴くような印象を受け、興奮してしまった。そして、「A Song is born」になって、ハッと気付かされた。「evolution」で、まるで産声を上げるように、<この地球(ホシ)に生まれついた日>~<こんな時代(トキ)に生まれついたよ>と歌い始まったこの旅が終わる頃には、「A Song is born」で<僕らの地球(ホシ)のあるべき姿>や<泣きながらも生まれついた>ことを<もう一度だけ思い出して>と歌っているのだ。

『BLACK』は、「Dearest」で始まる。サビで<いつか永遠の眠りにつく日まで>と歌われ、『WHITE』の冒頭「evolution」とは対照的に、終わり(永遠の眠りにつく日)を感じさせるものではあるが、終わりがあることを踏まえた上での“始まり”と言った方がしっくりくるだろう。「HANABI」なんか、オリジナルアルバムのときとはまた違って聴こえてくるから不思議だ。そして、ラスト3曲(正確には4曲だが)。「NEVER EVER」で、<もしも君に差し出せるモノがあるとすれば>と繰り返し歌われた後に、「HEAVEN」がきたとき、私は、ヤラレタ~と思ってしまった。<最期に君が微笑んで 真っすぐに差し出したものは>と始まるこの曲は、今回この位置に入れるためにあったかのように響いてきた。彼女は、6年前からこのことを知っていたのか?? まるで、「NEVER EVER」の主人公を見守るかのように…。「HEAVEN」は、愛する人に先立たれた、言わば“死=永遠の眠り”を歌った曲でもあり、「Dearest」とも繋がっている。

『WHITE』『BLACK』ともに、時代がバラバラでありながら(つまり、浜崎あゆみの物語から切り離されていながら)、ちゃんと「物語」を描いているではないか! そして、この「物語」は、ここで終わらない。

そう。「HEAVEN」の後には、新曲「part of Me」が収録されている。“死”を歌った「HEAVEN」の後に配され、<生まれるずっと前>から<僕達は生まれ変わったら>と歌うこの曲のテーマは、“生まれ変わり”とも言えるだろう。あゆ自身、最新作『Secret』の裏タイトルを「Reborn」と言っていたし、今、彼女の中で何かが“生まれ変わり”つつあるに違いない。
(更にこの後、シークレットトラックがあるのだが)

と、最初から最後まで、見事な「繋がり」である。何度も書いてしまうが、あゆの楽曲が、時代をバラバラにしても、ここまでの「物語」を描けるとは、正直驚いてしまった。更に言えば、『A BEST』で「何かが生まれようとしている」ところで終わっていると書いたが、そこからもちゃんと繋がっている。ホント驚いてばっかだが、ここまで「つじつまが合っている」ことに、私は驚きを隠せません。それだけあゆの表現に、「一貫性(芯)」があるということなんだろうなぁ。その場しのぎのことをやっていたら、こんな物語は描けないはず。

更に、今回のベストは、「全曲リマスタリング」されています。マスタリング・エンジニアが、ブライアン・“ビッグ・ベース”・ガードナーとのことで、私は知らなかったのだが、エミネム、クリスティーナ・アギレラ、ナイン・インチ・ネイルズ、浜田省吾、HYDE等を手がける人らしい。そのリマスタリングの影響なのか、改めてサウンドの魅力に気付かされたりもした。やはり、あゆは、様々なサウンドのスタイルに挑戦しているよ。また、そのアプローチの仕方も、尖っているというか、先鋭的なものだったりする。「ジャンルなんて関係ない!」とか「ジャンルの壁を壊す!」とか言って、実際にどれだけの人がそれを実現できているのか。あゆは、色々なスタイルに挑戦しながらも、結局は、「J-POPとしか言い様のないサウンド」になっていると思うのだが、それは逆に、本当の意味で「ジャンルレスな音楽」をやっているからではないのか。日本人にとっては「J-POP」こそが、「ジャンルレス」な音楽ではないのか? ま、いーや。

そしてまた、どの曲も「古くさく」感じなかった。嬉しいよ。私はホントに嬉しいよ。

そんでまた、今回のベストは、心と体が一体となったって感じがするんだよね。自己表現と音楽が結び付いたっていうかね。そんなパワーやエネルギーが伝わってきたから。

って、こんなにも長くなってしまったよ!

『A BEST 2』については、もうちょっとだけ書きたいと思います。