暑い夏が終わると本格的な台風の季節が訪れます。傘も日傘から雨傘へと再び用
途を変える時期が近づいてきています。
そこで、日本人が特に日頃からお世話になっている「傘」の歴史を簡単に紹介し
てみよう。
傘の起源は、エジプトあたりだと言われています。傘は今から3千年以上も前か
ら存在していたといいます。インド・中国においても、紀元前からあったことは確
認されています。それぞれの地域で別々に発達したのか、エジプトから伝わったの
かは不明ではあるが、傘の用途は雨傘ではなく、日よけや権威の象徴、魔除けの意
味で使用され、特権階級の人のために従者が後ろで持つというスタイルであったと
いわれています。
では、実用雨傘が使用されたのはいつ頃であったのだろうか。中国では4世紀頃
の漢詩に雨傘が出てくるし、日本でも源氏物語に雨の場面で傘が登場します。一方、
ヨーロッパでの雨傘使用は、18世紀以降で19世紀になって普及したと言われて
います。ヨーロッパ人で、大航海時代にアジアを訪れ、傘の存在を知った人は多い。
16世紀の文献には、傘は貴族コレクション、アジアからの贈答品となっており、実
用として使った様子はありません。
産業革命により中産階級が誕生した19世紀になってから、男女とも雨傘を受け入
れるようになったといいます。しかし、第二次世界大戦前までのイギリス上流階級
では、傘をさすのは馬車や車を所有していないことを意味し、貴族が傘をさすのは
とんでもないという風潮がありました。現在でも欧米では多少の雨なら傘をささな
い人が多いのだという。降水量が少ないこともあるが、欧米におけるレインコート
(撥水コート)の発達を見れば、うなずける現象かもしれません。傘の歴史の違い
もありますが、帽子にコートの文化圏に傘はいらないという考えが根強いのかもし
れないですね。
【様々な傘~和傘】
【様々な傘~日傘】
【雨傘】
【古代アッシリア帝国のアッシュールパニパル王の権威行進レリーフに見える傘】
【インドの婚礼時の傘~19世紀~】
【中国清王朝の皇帝行幸図に見える傘~19世紀~】