原孝至の法学徒然草

司法試験予備校講師(弁護士)のブログです。

人事訴訟手続関連の過去問分析

2011-04-27 | 民訴法的内容
今日は,簡裁修習の一環として,特定調停を傍聴してきました。特定調停それ自体が司法試験で出題される可能性はゼロに近いと思うので,ここではあまり言及しませんが,何ていうのかな,こういう手続が創設されてしまう世の中の仕組みにも問題がないではないな,というのが感想。法的な観点からの感想ではないんですが。

さて,何か芸がないような気もしますが,例によっての流れです。

【プ-71-オ】

人事訴訟は,当事者が死亡すると,原則として当然に終了すること(27)が問われている。本問は,「人事訴訟」と問うのではなく,「離縁訴訟」と問われている。人事訴訟の対象もある程度把握しておくことが必要。

【18-71-3】

人事訴訟では,関連損害賠償事件の併合ができること(17)が問われている。なお,併合できるのは,関連「損害賠償事件」です。それ以外は,原則通りできません。

【19-56-オ】

人事訴訟における公開停止について問われている。なお,あくまでも原則は公開であって,一定の場合に公開を停止できることに注意。公開すべきものを公開せずにやってしまうと,それは重大な瑕疵であり,責問権の放棄等では治癒されません。

【19-60-1】

人事訴訟でも訴えの「取下げ」はできることが問われている。できないのは,「放棄」「認諾」「訴訟上の和解」である。

【19-69】

*本問は人訴がテーマ。

ア…民訴179が排除され,自白の拘束力がないこと,職権証拠調べができること(20)が問われている。

イ…人訴では,制限能力者も完全な訴訟能力を有すること(13)が問われている。

ウ…人訴は職権探知といっても,証明責任は働くことが問われている。

エ…人訴では請求の放棄・認諾・訴訟上の和解は原則としてできないが,離婚の訴えでは例外的に(原則に戻るというか…)できること(37)が問われている。

【20-70-4】

人事訴訟であっても,離縁訴訟については,処分権主義が妥当するから請求の放棄・認諾ができることが問われている。

【22-66-3】

人事訴訟においては,請求の放棄・認諾・訴訟上の和解ができないこと(19)が問われている。ただ,本問は「婚姻無効確認の訴え」と聞かれているので少し難しい。これは,原則通り,放棄・認諾・訴訟上の和解ができません。例外的にできるのは,協議でもできる離婚と離縁の訴えです。

だいたい,以上です。こう見てみると年度によってかなり出題数にバラつきがあります。19年なんかはえらいたくさん聞かれていて,人訴の理解があるかないかで結構差が付いたはずです。21年は出題がなかった(見当たらなかった)のですが,全くでないというのはかなり確率の低いことかな,と思います。まだ出ていない点としては,既判力の主観的範囲あたりでしょうか。出しやすいので,危ない点だと思います。見ていただければわかるように,(聞き方は違えど)同じことが何度も聞かれているのも事実です。過去問検討の重要性はここにありますので,来年以降受験する方は,時間をかけてじっくりと過去問検討をするようにしてください。

かつて記事にした争点整理手続の話なんかと併せて,民訴の細かい・嫌な,だけど短答では出るところはそれなりに書けたかな,と思います。今年受験する方で,このあたりの分野をほとんど勉強していない人でも,これら記事を読んでいただければそれなりに対応できるのではないかと思います。

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