原孝至の法学徒然草

司法試験予備校講師(弁護士)のブログです。

準備的口頭弁論,弁論準備手続,書面による準備手続

2011-04-07 | 民訴法的内容
民裁修習でこのあたりを見てますので,考え方,ポイントを。主に,短答向けです。ややこしいところなんですよね。苦手な人も多いと思います。

1.準備的口頭弁論(公開法廷型争点整理手続)

あくまでも「口頭弁論期日を」争点・証拠の整理に使う手続です。口頭弁論なので,口頭弁論の諸原則が適用されます。ですから,公開。公開して争点整理をする手続,要は,社会的に注目されている事件や関係者が多い事件なんかに使われます。口頭弁論なので,書証の取調べだけではなく,証人尋問・当事者尋問・鑑定を行うことも可能です。証人尋問などもできる点,他の争点整理手続きと比較すると特徴的なところです。ただ,あくまでも「証拠・争点整理のための限度において」という縛りがあり,これが実務であまり使われない理由です(だったら,普通に口頭弁論をやればいいわけです)。

2.弁論準備手続(法廷外関係者公開型争点整理手続)

これは,口頭弁論「期日外」の手続です。準備的口頭弁論期日に比してできる行為に限定があるし,当事者の意向を無視してやっても意味がないので,当事者の意見を聞くことが必要です(168)。訴えが提起されたら第1回口頭弁論期日を指定するのが原則ですが(139,規則60Ⅰ),いきなり弁論準備手続をやることもできます(規則60Ⅰ但書)。これは,実務でよくやられていることです。電話会議の方法でもOKですので,当事者不出頭でもできる点,使い勝手が良く,事実よく行われています。ただ,攻撃防御の機会を実質的の確保するため,当事者双方の立会権は保障されています(169Ⅰ)。傍聴は,基本的には裁判所の裁量とされていますが(169Ⅱ),特に支障のない場合は許さなければなりません(同項但書)。この点をもって,「関係者公開」と呼ばれるわけです。

口頭弁論の規定は準用があります(170Ⅴ)。何が準用されるか,ポイントは,自白の擬制(159)です。弁論準備手続でも,自白は成立します。また,書証の証拠調べはできます(170Ⅱ)が,人証調べはできません。人証調べはやっぱり公開の法廷でやらないといけない,という趣旨です(書証は特に公開の法廷でやる必要性は乏しい。裁判所は見るだけですから)。

3.書面による準備手続(期日外不出頭型争点整理手続)

書面のやりとりだけなので,当事者が遠隔地に居住している場合に向く手続です。書面だけでやらないといけないので,これは難しい手続でして,それゆえ,主宰者は裁判長に限定されます(176Ⅰ.ただし,高裁では受命裁判官でもよい。若い裁判官はまずは地裁の左陪席をやるんですね。高裁に行くのは結構な経験を積んでから。だから,高裁では受命裁判官でいいわけです)。

この書面による準備手続は,あくまでも期日外の予行的手続で,当事者はその場におらず,それゆえ確定的な訴訟資料が存在しない点に特徴があります(当事者がその場にいる準備的口頭弁論や弁論準備手続では訴訟資料の提出され,弁論準備手続では書証のみですが,証拠調べも可能がです)。この違いが何に影響するかといえば,要証事実確認に影響します。準備的口頭弁論・弁論準備手続では,要証事実の確認はその手続内で行うものとされています(165Ⅰと170Ⅴの「終了するにあたり」の文言に着目してください)が,書面による準備手続では,「終結後の口頭弁論期日において」とされています。単なる予行手続なので,口頭弁論において訴訟資料化しなきゃいけないわけです。

で,この点は,手続終了後の証拠提出制限にも絡みます。準備的口頭弁論・弁論準備手続では,新たな証拠を出す場合に,いつから説明義務が生ずるかといえば「手続終結」の時点(167,174)ですが,書面による準備手続の場合は,要約書面が陳述され,又は,口頭弁論期日において証明すべき事実を確認した後と規定され(177),時系列的に言うと,若干遅くなっています。

なお,さらに,こういった性質の違いから,自白が成立するのは口頭弁論期日に加え,準備的口頭弁論,弁論準備手続の期日であり,書面による準備手続では自白は成立しないとされます。まぁ,ここは,反対説もあるところで,自由闊達な争点整理を保障して争点整理の実効性を高めるためには,準備的口頭弁論・弁論準備手続では自白を成立させるべきではない,という考え方もあります。

このあたりを押えたうえで,条文を読んでいただければ,そして,ちょっと前に書いた進行協議期日の記事も併せて読んでいただけば,これらややっこしい手続についての問題で点を落とすことはなくなると思います。

<参考文献>

「民事訴訟法講義案(再訂補訂版)」(司法協会)160頁以下

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2 コメント

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はじめまして (T.T)
2011-04-07 23:13:06
この春、都内の私大法学部4年になった者です。
小田原高校出身で、秀英には通ってなかったのですが、高校の先生や友人から先生のことはよく聞いていました。すごい人気でしたよね。
僕も先生に教わっていれば慶應に受かったかも知れないのに…今、ちょっと後悔しています。
もう秀英では教えてないのですか?

ブログ、毎日楽しく読ませていただいています。
今日のは…ちょっと難しいです。
初心者向けというか、これからロースクールを目指すレベル向けの話も読みたいのでぜひお願いします。

先生は基本講座を担当しないのでしょうか?
勉強不足な質問かもしれませんが、先生が修習を終えて復帰するのはいつごろになるのでしょうか?

今後ともよろしくお願いします。
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Unknown (はら)
2011-04-10 02:32:54
小田原高校卒で学部4年生ということは,○○や△△と同じ学年なんですね(笑)

そうですね,法曹を目指す各ステージの方にとって有為なことを書いていきましょう。

質問の件ですが,最短で12月に「可能」になるんじゃないかな。ただ,こればっかりは,私が「やりたい」と言ったところでそれが通るわけではなく,あくまでも仕事をもらえたら,ということになります。基本講座(←いわゆる入門講座)についても,仕事がもらえたら,です。仮にもらえたとしても,通常,12月開講ってことはないはずで,ありえても,翌4月になるんじゃないかと。

仮の話ばっかりでスミマセン。なにぶん,まだ4月ですので,具体的な予定はないのです。

勉強法などの質問があれば,どうぞ~。
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