原孝至の法学徒然草

司法試験予備校講師(弁護士)のブログです。

簡裁手続関連の過去問分析

2011-04-25 | 民訴法的内容
今日は,起案。起案時間は3時間20分。数ある起案の中では短い時間のものです。今日は,抵当権設定登記抹消登記手続請求事件の主張整理や要件事実の説明。修習中,月の1回くらい起案があります。試験というか,答練というか,合格後も答案用紙(起案用紙)に向かい,手書きでガリガリやらねばならないのは,避けられません。ま,司法試験の緊張感・重圧があるはずもなく,気は楽なのですが(笑)

さて,前3回の記事のまとめ的に,簡裁手続関連がどのように出題されているかを少し分析します。そして,主として来年以降に受験する方に向けて,短答対策のポイントも書いてみます。

まず,今回,辰巳の「平成22年版(最新版)短答過去問パーフェクト」を使って過去問の分析をしました。お持ちの方は,目次を見ていただきたいのですが,第11編(簡易裁判所の訴訟手続の特則),第12編(手形・小切手訴訟手続),第13編(少額訴訟に関する特則),第14編(督促手続)のところには,実は問題が掲載されていません。目次に項目だけあって,問題はないのです。

では,出題されていないのか??そうではありません。下に紹介するように結構出ています。なぜ問題が掲載されていないのか?それは,反訴なり,訴えの提起のところなりのテーマで出題される問題に,「肢として紛れ込む」からです。だから,単独の(大きな)テーマとして出題されていなくても,過去問には結構出ているのです。もちろん,今後,単独の大きなテーマとして出される可能性は大いにあります。

で,この「紛れ込む」簡裁訴訟手続の肢が点数を押し下げ,また,時間をかけさせるのです。受験生の方は経験がおありかと思うのですが,この紛れ込んだ簡裁関連の肢が切りきれず,それで間違える,考え込む,ということが結構あるはず。裏を返せば,そうした肢を短時間に正確に切れれば,得点アップ&時間短縮になるのです。だからこそ,試験直前のこの時期に3回かけて説明してみました。

では,過去問ではどう出されているか。ざっと拾って紹介します。来年以降受験される方は,「ここまでは聞かれている(だから勉強する必要がある)」という指針にしてください。

【プ-62-2】

簡裁から地裁への移送は,申立てがなくても職権で可能であること(18)が問われている。

【18-55-3】

簡裁では,その許可を得て,弁護士以外の者も訴訟代理人になれること(54Ⅰ)が聞かれている。ただし,聞き方はいやらしい(ストレートにこの知識を問うているのではない)。なお,刑訴では地裁でも弁護士以外の者が弁護人になりうることは比較してチェック。

【19-66-4】

簡裁においては,請求原因に代えて,紛争の要点を明らかにすれば足りる(272)ことが問われている。

【20-60-1】

18-55-3に引き続き,簡裁では,その許可を得て,弁護士以外の者も訴訟代理人になれること(54Ⅰ)が聞かれている。今度はストレートに聞かれているので答えやすい。

【20-73-3】

少額訴訟の判決に対しては控訴できず,異議が申し立てられるのみということ(377,378Ⅰ)が問われている。本問は異議をテーマにした嫌な問題であるが,この3の肢が誤りの肢として出題されており,間違った肢を解答させる問題なので,これで即1点となる。

【20-73-4】

上記と同じ問題の中で,今度は,手形訴訟でも控訴できず,異議であること(357)が問われている。これも誤りの肢として出題されているので,即1点となる。20-73は,「少額訴訟と手形訴訟では控訴できず,異議である」ということがわかっていれば満点となる。

【21-57-イ】

簡裁に継続する本訴に対して,被告が反訴で地裁の管轄に属する請求をした場合,相手方の申立てがある時は,簡裁は決定で本訴及び反訴を地裁に移送しなくてはならない(274Ⅰ)が問われている。

【21-61-オ】

少額訴訟の訴額(368Ⅰ。60万円以下であること),少額訴訟においては分割払の判決が出せること(375Ⅰ)が問われている。

【22-57-ア】

支払督促は,書記官権限であること(382)が問われている。なお,この問題は書記官権限について問う,やや細かい知識が要求される問題。アの肢は誤りの肢だが,それがわかれば選択肢の2つは瞬時にはずせるので,正解する確率は高まる。こういった問題の時に,武器になるんです。

【22-69-5】

少額訴訟においては反訴ができないこと(369)が問われている。

ざっと,チェックしただけで,これだけあります。で,出題を見てみると,他のテーマと組み合わせ可能で,まだ出されていないのは,少額訴訟や手形訴訟の証拠調べの特則あたりでしょうか。一期日審理原則,手形訴訟の証拠調べは原則として書証のみ,少額訴訟では即時取調べが可能なもののみ(だから人証もOKではある),といったあたりは今年かなり出題可能性は高いのではないかと思います。

これと似たような出題がされるのは,人訴です。これについては,書けたら書きます。「紛れ込んだ肢」にしっかり対処できると,民訴は5点くらいはアップしうるので,直前のチェック事項の参考にしてください(ただし,受験生の方はあまり深入りはしないでください)。来年以降受験される方は,地裁通常訴訟との比較の観点から勉強するという指針を持って,条文をしっかりと確認していってください。

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