原孝至の法学徒然草

司法試験予備校講師(弁護士)のブログです。

簡裁通常訴訟について

2011-04-21 | 民訴法的内容
3日続けての簡裁をめぐる話の最終回です。手続きの「固さ」は,地裁通常訴訟>簡裁通常訴訟>手形訴訟・少額訴訟のイメージを再度確認して,昨日・一昨日と書いた「極端な方(手形訴訟・少額訴訟)」との比較の観点から読んでください。

訴え提起段階においては,口頭可(271),請求原因に代えて「紛争の要点」を明らかにすれば足りる(272)という点は有名ですね。これに関連して,ちょっと応用編を考えるなら,この「紛争の要点」が示されて訴えが提起された場合に欠席判決ができるかを考えてください。できないとされます。なぜか?擬制自白の対象がないからです。請求の原因がしっかりあれば,擬制自白の対象たる主要事実が出ていますが,「紛争の要点」では,主要事実がなく,それゆえ擬制自白が成立せず,結果,欠席判決ができません。

反訴はできます。これは,手形訴訟・少額訴訟との違いです。ですから,手形訴訟や少額訴訟で反訴した場合には,簡裁の通常訴訟に移行させて反訴すればよいのです。

審理ですが,書面の準備は不要です(276Ⅰ)。地裁では,書面で準備するのですね(161Ⅰ)。いわゆる準備書面です。ただ,相手方が準備なしには応答できない事項については,準備書面を提出するか,期日前に直接相手方に通知しなければ,相手方が欠席した期日で主張することができないです(276Ⅱ・Ⅲ)。擬制陳述の拡張があり,これも押さえておくべきです。続行期日の場合も陳述擬制されます(277)。地裁では,最初の口頭弁論に限られるのですね(158)。また,書面尋問もOKです(278。地裁での原則は205)。

一期日審理原則はありません。ですから,調書をとる必要がある(記録を読み返すことは予定されている)のですが,複雑な事件や多くの証人がいる事件は想定していないので,裁判官の許可がある場合は,証人の陳述の結果等の記載を省略することができます(規則170Ⅰ)。

判決書も簡素化されています。請求の趣旨及び原因の「要旨」,その原因の有無並びに請求を排斥する理由である抗弁の「要旨」でOKです(280)。

不服申立ては,もちろん,控訴です。異議ではありません。

このあたりはしっかりと押さえておくべきでしょうか。簡裁通常→手形訴訟・少額訴訟の順で勉強するより,手形訴訟・少額訴訟→簡裁通常の順で勉強した方が整理しやすいと思いますので,あえて,こういう順序で整理してみました。

<参考文献>

「民事訴訟法講義案<再訂補訂版>」(司法協会)354頁以下


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (受験生)
2011-04-22 20:14:02
短答知識シリーズとても勉強になります。

私は、民法の共同抵当とか多数当事者の一部弁済とか求償とかの計算問題的なものがとても苦手なのですが、何か攻略するコツはありますか?
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Unknown (はら)
2011-04-25 18:55:53
計算問題は,①法律(民法)ルールを押さえること,②それに的確にあてはめられること,が大事です。当たり前のことになってしまうのですが…。

で,練習にあたっては,やはり具体的に事例を使ってやってるのが一番です。抽象論だけではうまくなりません。

私が実際にやって,オススメできるのは,内田民法です。内田民法自体,ケースメソッド方式の本ですので,こういった部分には有効です。条文解説だけの本も多いんですが,それではできるようにならないのは上述の通りです。

該当部分だけで結構ですので,内田民本を読んで,「自分で手を動かして」計算してみるとうまくなると思います。
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