聖書には、イエス時代のイスラエルを示した地図がつけられていることがよくあります。それをみると、ガリラヤとユダヤという二つの地域の真ん中に、サマリアという地域があります。まるで国を二分しようするかのように割って入っています。こんなことになったのは、歴史的なわけがあります。
昔、アッシリアという国が強くて、大国になったことがあります。周辺の民族国家を併合して大国になりました。イスラエルも併合しました。その際、アッシリアは民族混合政策をとりました。併合した民族の民を移住させ、混合して住まわせ、民族間結婚をどんどんさせました。
民族が血でもって別れていると、争いが起きる。混血して、みんな同じになったら殺し合うこともすくなくなるのでは、との理想から出たのでしょうか。とにかく、そういう政策を実行しました。その結果、ユダヤ人も、混血したのです。
ところが、ユダヤ人のすべてがそうはなりませんでした。アッシリアは、ユダヤ国家の内、北のイスラエル王国だけを併合し、南の方ユダ地域のユダ王国については、国家として残しておきました。
ユダ王国の南には、大国エジプトがありました。これと直接接していると、この強い国と国境で紛争が起きやすくなります。それが戦争に発展して、大被害を受けるかも知れません。そこで、両大国の間にイスラエル民族を挟んでおいたと推測されます。これがユダ王国です。
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推定が正しければユダ王国は、緩衝地域として用いられたわけです。英語で言えばバッファーですね。現代史にも、この役割をした国家がありました。その代表がドイツです。世界の資本主義地域と共産主義地域との間のバッファー国家。
欧州に東西に分かれた国がありましたね。東西ドイツです。バッファーはソビエト連邦の共産主義体制が崩れたら、いらなくなります。で、統合しました。いわゆる「ベルリンの壁崩壊」がそれですね。
アジアでは、南北朝鮮国家やベトナム国家がそれでした。南ベトナムは北に併合されましたが、朝鮮国家は今も南北二つのままです。これらは、地政学的には緩衝地帯なのですね。
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がともあれ、かくしてイスラエルには純血ユダヤ人も残りました。そして、アッシリア帝国が衰退した後、混血ユダヤ人たちは、ユダ王国の南、故郷の地ですね、ここに帰還してきました。これがサマリヤです。
その後、サマリアのさらに北に、純血ユダヤ人の新開地が出来ていきました。これがイエスが育ったガリラヤ地域です。
ガリラヤは、大阪で言ったら、キタ(梅田地区)ですね。ミナミは難波地区です。キタは今でも「北の新地」と呼ばれています。街としては難波が先に出来た。そして梅田は後に開発されたわけです。東京で言ったら、銀座・築地に対する八重洲地区ですね。
ともあれこういう風に、イエス時代のイスラエルはユダ、ガリラヤという二つの地域で構成されていました。その間に、混血ユダヤ人のサマリア地域があったわけです。