鹿島春平太チャーチ

「唯一の真の神である創造主と御子イエスキリスト」この言葉を“知っていれば”「天国での永生」は保証です。

6.中東紛争の泥沼に引き込まれる

2013年08月07日 | 聖書と政治経済学





共産圏が加速度的に強大化する中で、戦後米国の世界運営にもう一つの難題が発生した。
中東のパレスチナ問題がそれである。

第二次大戦後に、ユダヤ人が彼らのいうカナンの地~パレスチナ地域~に、イスラエル国家を建国したのだ。
彼らは古く紀元後70年頃までは、国家を持っていた。ローマ帝国の属領ではあったが、それは王国であった。

だがこの民族には、ユダヤ国家独立を目指してテロを繰り返す、熱心党と呼ばれるグループがいた。
この運動が過激化したために、ローマ政府はこの属領国家を攻め滅ぼした。
エルサレムの神殿も破壊した。
以後ユダヤ人は、国家なき民として、パレスチナ地域を追われ、世界に散っていった。




<シオニズム運動>

だが中にはシオンとも呼ばれるこの地に残り、ユダヤ人国家の再建を目指して運動を続ける者もいた。
これをシオニズム運動という。彼らは代々パレスチナの地に紛れ住み、機会をうかがってきた。

そして第二次大戦後の混乱が好機となった。
シオニストたちはパレスチナ地域に住んでいたアラブ民族を武力で追い出し、
イスラエル国家を建設したのである。




この地には、ユダヤ国家の消滅以来1900年にわたってアラブ人が居住してきた。
彼らはパレスチナ人とも言われた。
これをユダヤ人革命家たちは、武力で追い出した。
土地を買い取る場合もあったようだが、それも恐怖による強制買収だったと言われている。

ともあれその結果、イスラエルに居住地から追い出されたパレスチナ難民が、多数発生した。
彼らは復讐心に燃えて土地の奪回を志した。イスラエルは得意の科学的武力で応酬した。
こうして両者の間に熾烈な戦いが始まった。




<強固な民族アイデンティティの故に>

この紛争は、和解をほとんど不可能にする深い根を持っている。
まず、パレスチナ難民側にとって、ほとんど許しがたい事情がある。
彼らはその地に、すでに2000年近く居住していたのである。
それをあるとき、「ここは2000年前に俺たちが住んでいたから」という理由で追い出されたのである。

この言い分は世界常識的にも、受け入れるのが困難である。
事態を日本に写し代えてみたらわかる。
いま、北海道のリザベーション(隔離居住地域)に追いやられているアイヌ人が、
あるときロシア国家の助けを受け、東北、関東地域に乱入したと想像しよう。
住民を武力と恐怖で西日本地方に追い出したとする。

その理由を「1500年前俺たちはここに住んでいたから」だと応えたら、大和民族はどうするだろうか。
とうてい受け入れられない、というだろう。

それでも後ろ盾のロシアの武力にはかなわず、西日本に難民として流浪せざるを得なかったらどうか。
東北・関東人の恨みは永く残るだろう。
彼らの子孫は「復讐せずにおくものか。彼の地は必ず取り返す」と誓うだろう。



だが、実際アイヌ人はそれをしない。彼らの民族アイデンティティはさほど強固でないからである。
ところが、ユダヤ人は、これが人類史に希なほどに濃厚でかたくなだった。
旧約聖書(彼らはそれを律法書という)にはユダヤ人の民族史が詳細かつ長大に記されている。
彼らは居住地にかならずシナゴーグ(ユダヤ教の教会)を点在させて、子孫にそれを学ばせた。

これは他国に移住したユダヤ人たちにも異例の団結力をもたらしていた。
彼らは自らの民族アイデンティティの強固さの故に、移住した国家社会に溶け込むことができなかった。
彼らは世界の国々の中に、~もちろんドイツでもロシアでも~いわゆるユダヤゲットーを形成して存続してきていた。
そしてそのアイデンティティが、パレスチナの地での国家再建を目指すシオニズム運動をも
根強く存続させてきたのであった。




<悪魔の仕組んだ地獄の紛争>

だけど、そんな理由が、追い出されたアラブ人には通用しするわけがない。
彼らとしては「それはお前たちの歴史観じゃないの。自分の民族思想を他人に押しつけるなよ」ということになる。

この問題の根深さを洞察し、かつて英国がユダヤ人シオニストたちにこういう提案をしたという話を
鹿嶋は聞いたことがある。
英国はアフリカに広大な土地を所有していた。
それを提供するから、「君たちそこに民族国家を作りなさいよ」と勧めたという。
もちろん彼らはそれを断った。

そして第二次大戦直後に世界秩序の混乱が起きた。
ユダヤ人はこの千載一遇の好機に、パレスチナ人を武力でもって追い出し、イスラエル国家を再建した。
追い出された側には、永遠の憎しみと復讐心が残った。

だから以後の泥沼の紛争は続くべくして続いていくのである。
紛争の間にも殺し合いがなされ、さらに新たな憎しみが生成し積み重なっていく。
もうこの葛藤は解けない。まるで、プロレスで十文字固めを互いにかけ合っていて、
レフリーが解こうとしても解くことの出来ないような、悪魔の泥沼戦争が形成された。
この地獄に生まれ落ちていく両国の子孫たちへの同情はつきない。




<米国を抱き込む>

この紛争は、当初はパレスチナ地域でのユダヤ人と追い出されたアラブ人の戦いであった。
だが、ユダヤ人はアメリカにも沢山移住していた。
この民族には科学的思考に優れた者、商業に卓越した者、富をなした者も多かった。
その彼らが米国の民主政治システムの寛大さにつけこんだ。
ロビー活動などを展開し、米国政治をイスラエル側に取り込んだ。

これによってパレスチナ難民の怒りは全アラブ民族に広がった。。
イスラム教民族でもあった彼らには、心情的にも共鳴するところが多かった。
こうして、紛争はイスラエルと米国に対するアラブ諸国との戦いへと拡大した。

アラブ、イスラム諸国は、科学技術面でイスラエルや米国に後れを取っていて、
科学的な軍事力においては劣勢に立った。
こういうとき、復讐の執念が根強いと、テロという闘争手段は自然に発生する。
夫婦げんかで、知力と腕力で劣る妻が夫の顔を爪でひっかくようなものである
アラブ側は、自爆テロという不気味な武器でもって、イスラエル、米国に立ち向かった。

ともあれかくして、アラブ民族の抱くイスラエルへの憎しみは、米国への憎しみに連動した。
こうして米国はもう一つの大戦要因をほとんど当事者として抱え込まされることになった。
悪女の深情けに取り込まれたと言うべきか。

この要素は当初、対共産圏問題より規模においては小さかったが、
時間が経つにつれて拡大傾向をたどっていった。


(続く)






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2 コメント

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イスラエル建国は預言の成就か? (SABIA)
2013-08-11 08:50:34
中東問題は、今やいろいろな要因が複雑に絡んでいますけど、根幹にあるのは、パレスチナ難民問題なのですね。

これに関して、私が気になっていることが一つあります。 日本人クリスチャンの多くの方々が、イスラエル建国を「聖書預言の成就である」と無邪気に考え、シオニストの主張を好意的に受け入れていることです。 
普通の日本人は、むしろ政治問題であると冷静にとらえているのに、信仰対立の問題にしてしまうのです。 シオニストの人たちの狙い通りになっていることに気づいていないように思えます。

ユダヤ人の中でもシオニズムに反対する人も多く、たとえば、
「正統派ユダヤ教徒 反シオニズム」 
等、入力してネット検索すると、参考になるサイトが見つかります。
返信する
反シオニズム! (鹿嶋春平太)
2013-08-14 13:46:01
>ユダヤ人の中でもシオニズムに反対する人も多く

~それはうかつにも存じていませんでした。
比率としてはどれくらいいるのでしょうか。

大勢はシオニズムで動いているように見えるのですが。

パレスチナ問題は、もう、悪魔が仕組んだ十文字固めとしか鹿嶋には見えません。
個々に生まれる子供たちが哀れでなりません。

かつてのプロレスのデストロイヤーのわざは、現代に向けた預言だったのか・・・。


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