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BL小説・風のゆくえには~将来3(慶視点)

2016年04月01日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 将来

 高校一年生の秋、おれは浩介のことを恋愛対象として見ている自分の気持ちに気がついた。
 でも、おれ達は同性。こんな気持ちは受け入れられるはずがない………と、気持ちをひた隠しにして一年以上が過ぎた、高校二年生のクリスマスイブ前日。奇跡が起こる。

『慶のことが、好き』

 浩介が、そう告白してくれた。
 それからおれ達は『親友兼恋人』になった。

**

 冬休み明け初日。
 いつもは先に教室に着いている浩介が、昇降口の入り口に突っ立っていた。今日は寒い。浩介の鼻の頭が赤くなっている。

「どうした? 寒いのにこんなとこで……」
 
 声をかけると、浩介は嬉しそうな、それでいて泣きそうな顔になってボソリと言った。

「待ってた。慶のこと」
「待ってた? 教室で待てばいいのに」
「だって……」

 冷たい手がおれの頬に触れる。

「教室行ったらみんないるから、慶に触れない」
「………。今まで散々人前でも触ってたじゃねえかよ?」
「そうなんだけど……」
「………」

 指が唇を辿ってきたので、ゾクゾクしてしまう。
 クリスマスイブ前日に告白されてつき合うことになって以来、何度もキスをした。唇が触れる度、体中に電流が走って、幸せいっぱいになってどうしようもなくなる。

 でも……。キスしているところを浩介の母親に見られてしまい、その翌日、母親がおれの両親にそのことを告げにきて、大騒ぎになってしまった。
 浩介の父親が「一過性のものだから放っておけ」と言ったそうで、とりあえず、今すぐにどうこうということはない。でも、元々浩介は両親と上手くいっていなかったから、余計にギクシャクしていることは容易に想像できる。今の「触れない」発言も、また母親から何か言われたとか、そこらへんから派生しているのだろう。

「気にしないで、今まで通りでいようぜ」

 ポンポンと腕を叩いてやると、浩介がふにゃりと笑った。
 うん。おれの大好きな笑顔だ。おれはこの笑顔を守るためだったら何でもする。

「あーさみー。早く入ろうぜー」
「くっついてあったまろー。慶、体温高いからあったかーい」
「おれは人間湯たんぽか」

 後ろから抱きつくみたいにくっついてきた浩介の腕をぎゅうっと掴む。おれはいつでもお前のことを温めてやりたい。
 冬はいいな。こうしてくっついていても「寒いから」って誤魔化せる。


「教科選択の紙、提出今日だよな?」
「うん。あ、おれ、結局、やっぱり世界史にしたよ」
「政経じゃなくて?」
「だって世界史のほうが面白いんだもん」
「面白いって言えるあたりが余裕だよなあ」

 そんなたわいもない話をしながら歩いていたのだけれども……

「……え?」
 教室に入るなり聞こえてきた声に、心臓が止まりそうになってしまった。

「まじで?!それいつの話?!」
「去年の、クリスマスイブの前日だって! なんかすごいロマンティックな場所で告白したらしいよ!」
「それでつき合い始めたってこと?!」
「そうだってー初詣とかも一緒にいったって」
「うわー羨ましー。今日きたら問い詰めないと!」

 思わず、浩介と顔を合わせる。浩介も固まってしまっている。

 ば……ばれた? いや……まさか……

「あ! 渋谷! 桜井!」
「え」

 話していた輪の中の一人の溝部が、わーっと言いながらこちらに突進してきた。

 まさか……あの時、誰かに見られてたとか!?

「溝部、いやその……っ」
「溝部っ」

 二人して、溝部にワタワタと手を振る。でも溝部はそのままの勢いで走ってくると、

「くっそー! クリスマスの奇跡、おれにはなかったぞー!」
「え?!」

 ドーンッといいながらおれ達二人に抱きついてきた。

 クリスマスの奇跡って、そ、それは……っ

 溝部はアワアワしているおれと浩介に気が付くこともなく、続けて叫んだ。

「東野のやつ、例のお嬢様に告白してオッケーもらったんだってー!」
「それは……、え」
「え?」

 東野? お嬢様?

「イルミネーション綺麗なところで告白したらしいぞ。あー羨ましい!」
「………あ、そう」

 どっと体の力が抜ける。
 なんだ、おれ達のことじゃないんだ……。

 浩介をみると、浩介も苦笑しながらこちらを見ていた。

 やっぱり、当たり前だけど、クラスメートに話すのは無理だな……

 何も言わず、2人で肩をすくめあうと、溝部が引き続きわあわあと、

「なんだよ二人して目と目で通じ合っちゃって!」
「あーもう、溝部うるさい」

 軽く蹴ってやると、溝部はますます大きな声で言った。

「うるさいじゃねー! 今度東野に彼女の友達紹介してもらうからお前らも来い!」
「行かねーよっ」
「なんで?!」

 詰め寄られたけれども、グーで押し返す。

「だから、そういうの興味ねえんだよ。めんどくせえ」
「はー、そうですか。渋谷君は余裕でいいですね」

 溝部は棒読みで言うと、今度は浩介に向き直った。

「桜井、お前は来るよな?」
「え、おれ?」

 浩介、きょとんとした顔をしてから……にっこりといった。

「遠慮しとくー。おれには慶がいるから」
「!」

 こ、こいつは何を……っ

 赤くなりそうなところを、なんとか耐えて仏頂面を作る。

「何いってんだ、お前」
「ホントだよ。何言ってんだよ、桜井」

 溝部と二人で言ったけれど、浩介は引き続きニコニコと笑ったまま自分の席に行ってしまった。

「桜井って変だよな」
「……そうだな」

 溝部のつぶやきに、こっくりと肯く。

 そういえば……告白してくれたときに言ってたな。

『付き合ってること『だけ』は内緒にするよ』

 と。 

 それって……

 うーん……と思いながら、自分の席につき、浩介の方をみると、浩介もちょうどこちらを見ていて、ニコニコで手を振っていた。そして、

『だ、い、す、き』

 口の形が言っている。

「………アホか」

 あいつアホだホントに。

『バーカ』

 おれも口の形だけで返すと、浩介がこの上もなく嬉しそうに笑った。

 同じクラスでいられるのもあと三ケ月。それまでたくさん一緒のクラスの思い出を作りたい。




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お読みくださりありがとうございました!
この話の約2週間後が、以前書きました読切『お礼はキスで』になります。
まだ触れるだけのキスしかしたことのない、初々しい二人でございます。

クリックしてくださった方、本当にありがとうございます!なんとお礼を申し上げてよいのやら……。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。ご新規の方もどうぞよろしくお願いいたします!

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