すりガラス越しに
薄ら雪化粧
微かな寝息
仄かな灯
冬に悴むも
やがて春を纏う
芽吹く蕾を愛でて
濡縁の上で踊る雨滴
しなやかなに たおやかに
時に、したたかに
黄昏の金星 夏空に流星
箱空(ぷらねたりうむ)を跨ぐ銀河
途切れがちなラヂオ放送
思い出は忘れ物
紅葉に大地が燃え、
早春に若草が萌え、
大海原に続く、空色と水色の境界線
たなびく鰯雲
先ほどまでカラフルだった街並が
忽ち真白く染まる
無彩色(モノクローム)な総天然色
月明かりに浮かぶムーンホワイト
こうして
万物は流転し
そうして
ぼくらの
暮らしは続いてく
自分以上でもなく
自分以下でもなく
地球から振り落とされぬよう
地球と一緒に回ってる
それぞれの歩幅で
何かを想い
何かを語らい
滑り込むコンパートメント
真向かいに座る女の子の
屈託なき笑顔
その隣で躊躇いがちに俯く母親
車窓に流るる
赤い屋根の家々、オリーブの丘陵
アンダルシアの向日葵
旅路の果てに旅が始まる
浜辺に佇み
一握の砂、波に消えゆく
南風が優しく頬を
愛撫せし
篠突くスコールすら
BGMにして
微睡む午後(ひととき)
見えない「沈黙」
と
聞こえない「闇」
の中で
鋭利な刃物のように
研ぎ澄まされていく感性
夕餉の仕度
落陽が照らす
茜色の襖(スクリーン)に
のびる影絵
路地を駆け抜け
家路を急ぐ子供たちの声に
ふと目を覚ます
空のワインボトルに
無造作に放り込まれた
枯れかけの一輪草
誰もいなくなった公園には
主を失った滑り台
置いてけぼりの
錆びた三輪車
やがて
電線の向こうで
トワイライトに浮かび上がる
スカイツリー
陽炎に
路面電車が朧ぐ
軋む鉄路
五感で夏を受け止めて
月見草
ささくれた下弦の月が
1.2秒前に呟いた
僕は宇宙にいると
そこが、どれほど過酷な地で
あっても
そこに暮らす人々にとっては
いつもと変わらぬ
日常風景でしかない
それが生活というものだ