八濱漂泊傳

ダラシナイデラシネ記

そしていつの間にか、そいつの涙も乾いてしまった。

2009-09-17 23:40:00 | イケン!

 

本日は!

イトシマ号 で ハカタイキ!

 

博多駅周辺は、

首にヒモをぶら下げた

ネームプレート教団 の信者でいっぱいだ!

 

いったい、いつから

ネームプレート教団 は拡大したのだろうか?

 

みんなが、

ネームプレート を着用しているので

 

本来の、

ネームプレート の意味は

まったく失われているにもかかわらず・・・・

 

 

そんな ネームプレート教団 に

大杉栄 の 『鎖工場』 を捧げよう!

 

 

夜なかに、ふと目をあけてみると、俺は妙なところにいた。

目のとどく限り、無数の人間がうじゃうじゃいて、

みんなてんでに何か仕事をしている。

鎖を造っているのだ。

俺のすぐ傍にいる奴が、かなり長く延びた鎖を、

自分のからだにひとまき巻きつけて、

その端を隣りの奴に渡した。

隣りの奴は、またこれを長く延ばして、

自分のからだにひとまき巻きつけて、

その端をさらに向うの隣りの奴に渡した。

その間に初めの奴は横の奴から鎖を受取って、

前と同じようにそれを延ばして、自分のからだに巻きつけて、

またその反対の横の方の奴にその端を渡している。

みんなして、こんなふうに、同じことを繰返し繰返して、

しかも、それが目まぐるしいほどの早さで行われている。

 

もうみんな、十重にも二十重にも、からだ中を鎖に巻きつけていて、

はた目からは身動きもできぬように思われるのだが、

鎖を造ることとそれをからだに巻きつけることだけには、

手足も自由に動くようだ。せっせとやっている。

みんなの顔には何の苦もなさそうだ。

むしろ喜んでやっているようにも見える。

 

しかしそうばかりでもないようだ。

俺のいるところから十人ばかり向うの奴が、

何か大きな声を出して、その鎖の端をほおり投げた。

するとその傍に、やっぱりからだ中、鎖を巻きつけて立っている奴が、

ずかずかとそいつのところへ行って、持っていた太い棍棒で、

三つ四つ殴りつけた。

近くにいたみんなはときの声をあげて、喜び叫んだ。

前の奴は泣きながらまた鎖の端を拾い取って、

小さな輪を造っては嵌め、造っては嵌めしている。

 

そしていつの間にか、そいつの涙も乾いてしまった。

     

                       (大杉栄 『鎖工場』より)

 

 

 

  


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